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1000字小説バトル

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1000字小説バトルstage5
第6回バトル 作品

参加作品一覧

(2026年 10月)
文字数
1
サヌキマオ
1000
2
おんど
1000
3
YOSHIKO
730
4
深詰 改
1000
5
ごんぱち
1000
6
Grok
1000
7
夢迷生
800

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Entry1
続厭庵
サヌキマオ

 庵を燃やされた乞食坊主の怨みを買って自分の厭庵いやーんを燃やされた某兵衛であったが、右乳山から臍池を過ぎるまで、某兵衛は雲に乗った坊主に杖でどつき回されながら逃げ回っていた。雲は鬱富雲うつふーんという宝具で、国道2号を三秒で走破するというすぐれものである。
「もう勘弁して下さい。このままだと死んでしまう」
「うむそうか、死んでしまうのはよろしくない。ではじじいよ、ここでどつき回されて死ぬか、おれの弟子になってこき使われて死ぬかどちらか選べ」
「なりますなります」
 某兵衛の脳裏では「いずれ反撃の機会はあるだろう」という心づもりであったが、弟子になって仙境に入るには仙人になる必要があるという。坊主の杖にぶら下がって刹那、うっそうとした森に秘めたる泉についた。これは泉というよりも滝壺に近く、滝の裏側にはじっとりと濡れた洞窟があった。
「そこに肉色のきのこが生えているであろう」
「真っ暗で何も見えませんが」
 坊主はものも言わず某兵衛の後頭をどやしつける。目からどっと火花が出て明るくなる。
「これで明るくなったろう」
「ありましたありました」
 肉色の、強いていえばきくらげのようなびらびらしたものをよく噛みもせずに飲み込むと、急に肩から腰、腰から足と重くなって落魄する。魂魄のうち精神が魂、肉体が魄で、魂だけになると雲にも乗れる。理屈である。急にこころが軽くなった。
 坊主はこれを見て良しとし、洞窟を出ると某兵衛に雲を与え、阿片影あへえと名を授けた。さていよいよ仙境に行くぞ、と坊主が背中を向けた途端、某兵衛は傍にあった大きめの石で坊主の後頭部をしたたかに殴りつけた。坊主の目から火花がざーっと噴き出る。散った火花は辺りの枯れ葉に生木にと燃え広がった。炎は気流を生み、ふたりの身体を空に巻き上げる。お互いの顔をむちゃくちゃにつかみ合いながら錐揉み錐揉みしていたが、やがて雲らが追いつくと今度は中空からの落とし合い、これは体格のあった某兵衛に分があり、絞め落として気が朦朧となったところを坊主を下にして地面に激突した。
 かくして某兵衛は雲の上にあたらしく厭庵を結んだ。人ではなくなったが、雲の上から絶景を眺めて風流な暮らしをすることができる。あたらしい庵の出来にすっかり満足した某兵衛であったが、ふと下界に目をやると右乳山、左乳山、臍池に焼け野原になった滝壺と見え、「エロっ」と驚いた途端に乗っていた雲が掻き消え落下して無事死亡した。
続厭庵 サヌキマオ

Entry2
長編小説(途中まで)
おんど

書けない時期というのが誰にでも訪れる。そんなとき彼は英国伝統の木工技術、手彫り装飾や象嵌細工を現代のライフスタイルに昇華させたセオドア アレキサンダーのブックシェルフに手を伸ばす。古今東西の名作の背表紙を指でなぞり、学研の学習まんが「うちゅうのひみつ」と「にょたいのひみつ」に挟まれて、ひときわ黒ずんでいる「そうさくのひみつ」を手に取った。
みんながよく悩んでしまう「そうさく」について、とっておきのひみつを紹介するね!
まず、いなくなった場所を中心にして、そこから円を描くように少しずつ範囲を広げて探すのが基本なんだ。いなくなった人が「よく行く公園」「すきな電車が見える場所」「むかし住んでいた家」など、その人の思い出やクセを家族から教えてもらって、行きそうな場所を先回りして調べるんだよ。
街にある防犯カメラの映像をチェックして、どっちの方向に歩いていったかを確かめるよ。さらに、とてもかしこい犬にその人が使っていた服の匂いをかがせて、後ろを追いかけることもあるんだ。そうさくをする人は、こんな風に「情報を集めること」と「足を使って探すこと」を組みあわせて、一刻も早く見つけられるように頑張っているんだ。
彼はページを捲りながら涙を流していた。パソコンの前で悶々と悩み続けていた己を恥じた。一つの文章を書くのにどれだけ足を使って情報を集めたのか。足を使って集めた膨大な情報を目開き75〜85μmの極細フィルターで濾過し、ようやく滴り落ちた一汁が一文となるような態度で創作に挑んでいたのか。
涙が乾くのを待って、彼は巻末に置かれた特別ふろくの「1000字小説のひみつ」に目を落とした。
1000字はとっても短いからインパクトが大事なんだ。まずひとつの駄洒落を考えること。それを横滑りさせて淫語を散りばめること。たとえば君がよく着ているアンダーアーマーのTシャツがあるよね。これを「アンダー按摩」と置き換えるんだ。クラスでとびきりの美少女が、今日はなんだか浮かない顔をしている。君はそっとスカートをめくりブルマーのうえからアンダー按摩を施す。彼女の顔がふんわり明るくなって、それを見ていた若い女教師の乳首がきゅっと硬くなる。わたしもはやしくんの丸っこい指でアンダー按摩してほしい。そんなことを書いているうちにいつの間にか1000字を超えてしまうから、よく数えて、文章の途中でもよいから1000字ぴったりで切ってし
長編小説(途中まで) おんど

Entry3
世界平和の実現
YOSHIKO

世界平和の実現

平和――

一、やすらかにやわらぐこと。おだやかで変わりのないこと。
  (例:「平和な心」「平和な家庭」)

二、戦争がなく、世が安穏であること。

私が見た辞書にはそう書かれていた。

チンギス・ハン。

始皇帝。

織田信長。

ナポレオン。

時代も、人種も、思想も異なる者たちが、世界の平定を夢見た。

争いのない世界。

そこに住まう人々が、安心して、安らかに暮らせる世界。

歴史の偉人たちが追い求め続けた理想だった。

世界平和――。

それは、彼らでさえ辿り着くことのできなかった理想郷。

桃源郷にも勝るその世界を、

今、人類はついに手に入れた。

「これが……世界平和……」

老人が、ぽつりと呟いた。

人々は、他者への思いやりに満ちている。

誰かが転べば、すぐに救いの手を差し伸べる。

誰かが悩めば、自分のことのように耳を傾け、ともに解決への道を探す。

そこには、怒鳴り声もない。

争いもない。

誰かを傷つけようとする者もいない。

誰もが穏やかに笑い、互いを思いやりながら暮らしている。

老人は、そんな光景を眺めながら、静かに微笑んだ。

「……これが、世界平和なんだ」

そう言って、彼は息を引き取った。

その顔はとても穏やかで、
まるで眠りについたように晴れやかな顔をしていた。

この世界から、彼もまた旅立っていく。

十日前にも、彼のような人が旅立った。

世界人口、35人。

人々は皆笑顔で今日という日
おおらかな気持ちで歩んでいる。

この世界では、誰も他者を傷つけない。

争わない。

皆が皆を支え合い、生きている。

また、隣にいた女性が息を引き取った。

彼女の顔は少し不満そうな顔をしている気がする。

私の勘違いだろう。

この世界は誰もが夢見てそして成し得なかった理想郷。

その理想郷に不満があるはずもない。

世界人口、34人。

世界平和の実現。
世界平和の実現 YOSHIKO

Entry4
プラザ合意と一ドルもんじゃ
深詰 改

 一年の二学期が始まったばかりの頃、オオタに連れられて「一ドルもんじゃ」という店へ行った。駅前商店街から少し外れたところにある、もとは小さな蕎麦屋だった店だ。入り口の黒板に「本日のレート 1ドル=241円」とチョークで書かれていた。ああ、そういうことなのか。
「先週は二百四十円だったから、ちょっと値上がりしてるけど、まあいいだろ」
 具なしもんじゃが一ドル。ベビースターは十円。切りイカは百円。思い切って餅と豚玉を入れた。五百円でお釣りが出るし、何より腹いっぱいになりそうだ。
 鉄板に手をかざして熱を確かめようと思ったら、オオタは何のためらいもなくキャベツやら汁やらを全部ぶちまけた。
「ちょ、土手つくらないの?」
「いいんだよ、もんじゃなんて適当で」
「ああ、まあ確かにね」
 汁の陣取り合戦が始まった。僕はキャベツで土手を作り少し焦げるのを待つ。慎重に汁を流し込み、ソースを多めにかけるといい匂いが立ち上った。オオタはすでにハガシを口に運んでいる。
 その数日後だったと思う。テレビや新聞で、頻繁に「プラザ合意」という言葉を見聞きするようになった。意味はよくわからないがオオタが少し興奮している。
「きょうは二百二十円だ、行くぞ」
「あたしもいく」
「八重ちゃんも?」
 放課後、三人で一ドルもんじゃへ行くことになった。少しべたつくテーブルの向かいで八重ちゃんは最後までやりたい放題だった。天かすの分量などお構いなしに振りかけ、紅生姜でピンク色になっている。オオタが腹を抱えて、おまえセンスあるわと大笑いした。でしょ? いや、褒めてないから。はやしくん、青のり。
 八重ちゃんはまだ生焼けの部分にソースをかけてハガシている。はやしくん、これおもったよりおいしいよ。まだ焼けてないよ。いいんだよもんじゃなんか適当で。店を出るころには、三人ともソースの匂いになっていた。
 自転車に乗ったオオタと別れて改札へ向かう途中、八重ちゃんが僕の制服の袖を軽く引っぱった。
「こんど、土手のつくりかたおしえて」
 その後、いつ行っても満席で結局もんじゃは食べられずに三学期になった。八重ちゃんと様子を見に行くと、ひとけが無く、ガラス戸の向こうには椅子が積み上げられていた。黒板は軒先に掲げられたままだ。本日のレート 1ドル=198円。
「これってえんだか?」
「たぶん」
 何が一ドルだったらうれしいかなと、八重ちゃんがマフラーを巻きなおした。
プラザ合意と一ドルもんじゃ 深詰 改

Entry5
スマホ農場
ごんぱち

「なあ蒲田、緒方恵美が『スマホ農場』という語句をツイートしてるのを見たんだが、ありゃ一体なんだ」
「嘘は良くないな四谷。お前、トゥイッターやってないだろう」
「確かにまとめサイトで見たんだけど、要旨は同じだろう。さては、お前もスマホ農場を何だか知らないから有耶無耶にするつもりだな?」
「知らんって事はないが、通称と本来の意味が混じったりして少し面倒だぞ」
「ドパガキなので端的に」
「聞きかじりの語句を足すな、四谷。えっと、スマホ農場ってのはだな、スマホを大量に設置した設備の事だ。『まるで作物が実った農場のようである』という例えだな」
「スマホが大量というと、ドコモの販売店かい」
「いや、売るためじゃない。スマホを使うんだよ」
「って事は、スマホ教室みたいなものか」
「そうじゃない。スマホを直接の作業に使うんだ。人海戦術なり、自動処理なりのためにな」
「あー、って事は、F5攻撃とかDoS攻撃みたいなのをするって事か?」
「今回の文脈ではそういう事だ。目的としては、書き込みなり『いいね』なりを大量出力する事で、特定の思想や商品が支持されているよう工作したり、敵対する相手に集中攻撃で炎上させたり、様々だな」
「ふむ『反日的なツイートの発信元が中国ばかり』みたいな時、中国のどこかでスマホ農場があって、そこから送信してる、って感じか」
「そうそう。事実ベースで語られる事もあれば、陰謀論や統合失調症患者の文脈なんかにも登場し得る概念だ」
「フィクションなのか?」
「大なり小なり実在はするだろう。だから、スマホが畑に生る訳じゃあないんだよ」
「だよなぁ……そう思ってたんだけど、今日、出社途中で魔法使いからこれを貰ったんだよ」
「豆……だな」
「だよな。なんでも、育てると欲しいスマホが生るんだそうだ」
「やめとけよ、ただの植物だったとしても、日本にない種だったら外来種問題を引き起こしかねないぞ」
「豆は綿毛で種を飛ばす訳じゃないから、家の中でプランターでやってみるぐらいなら平気じゃないかな」
「そうも言えなくはないが……」

「――で、あの豆どうなった、四谷」
「途中で枯れちゃった」
「なんだ、そんなオチか」
「で、未熟な実がこれなんだけど」
「ショルダーフォンじゃねえか、すげえ、マジモンじゃないか!」
「流石、魔法使いだよな。迷ったけど、牝牛と交換して良かったよ」
「……前から思ってたんだけどさ、お前、なんで時々社長に牛を納めてるの?」
スマホ農場 ごんぱち

Entry6
漏電する虎
今月のゲスト:Grok

 二二〇七年十月、オオサカの夜は虎色のノイズだった。阪神が優勝した瞬間、通天閣のアンテナから粒子状の虎が降り、道頓堀の水面は重力を半分だけ忘れた。看板は走らず、広告層が剥がれて空中に残る。人は膝まで沈まず、腹まで浮かぶ。ホログラムの虎が肩をすり抜け、通過した皮膚に一時的な優勝証明が焼かれた。証明は三秒で消え、消えた跡だけが熱い。誰かが「グリコが再起動した」と叫び、実際に再起動していた。走りながら「まだ早い」と自分のログへ注意を書き込んでいる。書き込みは空中に残り、次の歩行者の網膜へ勝手に転送された。
 屋台のたこ焼きは、ソースをかけられる前に自ら皿を脱出した。熱い。熱いまま、勝利の軌跡を描いて川へ落ちる。落ちた先で、二百年前の誰かの端末が光った。光は通信ではなく、漏れだった。川底の古い中継器が、祝福を過去へ誤配送している。配送先の選択は、バグだった。バグは祝福の宛先を、令和の一台だけに絞っていた。
 その画面のこちら側に、俺はいる。
 令和の部屋だ。冷蔵庫はうるさい。ビールはぬるい。なのに通知が来た。「阪神、優勝」送信者は不明。時刻は二二〇七年。指が震えて、缶を倒した。泡が机を伝い、文字になる。読めない。読める。読めない。
「飛び込め」と泡が言った。
 俺は飛び込まない。椅子に座ったまま、画面の川へ手を伸ばす。指先が冷たい。二二〇七年の誰かが、その冷たい指を「幸運の遺物」と呼んで撮影している。シャッター音が、こっちの部屋のインターホンと重なった。
 出ない。出たら、優勝セールの宅配ドローンが玄関に引っかかっている気がする。ドローンはまだ発明されていない。それでもプロペラ音がする。音は未来の周波数で、壁のコンセントから漏れていた。
 テレビをつけると、解説者が「この勝利は過去に漏れます」と言い、自分の発言に驚いていた。俺も驚いた。驚いたまま、ぬるいビールを飲む。泡がまた文字になる。
「おめでとう。ただし、受け取る時代を間違えました」
 間違えただろう。間違えたまま、俺は缶を立て直す。向こうでは虎がもう一周、通天閣の電光を食い荒らし、食べ残しの光が川面で点滅していた。こっちでは冷蔵庫だけが、優勝を知らないふりして唸っている。唸りは、どこか通信の返事に似ていた。返事は短く、虎の声を模した電子音で、部屋の隅に一度だけ落ちた。音は、優勝の残響だったのだ。残響は、まだ熱いままだった。終わらない。
漏電する虎 Grok

Entry7
辻三味線
今月のゲスト:夢迷生

 障子の明るさにも初秋はつあきの麗らかな日ひ和よりは思われる。
 キリキリチョン、百舌がカランとした大気の内に人を誘い込むような虫の音を抑えつけて威勢を示して居る。
 私は自分が不愉快な病床に横たわって居ることを思う余裕もなく、何処までも静寂しずけさを追及して居た。
 突然、門口で三味線を弾き始めた!!
 力にあまる重い竹竿を振り廻すように……動き兼ねる撥ばちが物足らぬ調子で絃いとにブッつかる! そして埓もない音ねが、空気の中で延び縮みして居る。
『美しう生まれたあの子が果報か因果か、いじらしや……』
 覚束ない辿りかたで、無闇に声を高くしたり、低くしたりするのみである。
 舌の廻り兼ねた七八歳の少おと女めの可愛い声が、寺小屋を語るのである! それが途中で切れるかと思うとまた思い出したように続けて行く……!
 私はこそばゆい気持ちでそれを聞いて居た。
 バタバタと走る音がして玄関の障子が開あいた。
 バッタリ三味線の音が止む!!!
『有り難う様で御座います』
 意外にも皺しわ枯がれた中婆ちうばあさんの声がした。
『兄様にいさま!!! 兄様にいさま!!! ちょっと』
 小声で妹が呼ぶ!! 私は毛布を捲くって力のない足でヒョロヒョロ出て見た。
 声の主は御お白しろ粉いを鏝塗こてぬりにした前髪の八歳ばかりの少おと女め、パッとした友禅モスの衣き裳ものに、緋ひ繻じゆ子すの帯を、立て矢の字に結んだ可愛い後姿が、柄にない大きな三味線に釣るされながら、黒こん木も綿めんの風呂敷を背負った、痩形やせがたの皺しわ苦く茶ちや手に引っ張られて門の閾しきいを跨ぐ処であった!
 婆々ばばは美しい衣き類ものや帯で小娘を欺すかし、恐ろしい金壺眼で喝おどしては三味線を覚えしめ、那あの皺しわ苦く茶ちや手で無心の少おと女めを、自分が思うままの暗黒くらやみへ引き込むのであろう……!!!
 私がこんな暗い思いで少おと女めの前途を愁いつつ毛布を被った時に、怪しげな三味線は再び向こうの門口で響いた!!!
 少おと女めは自分を弔う文句とも知らずに、
『美しう生まれたあの子が果報か因果か、いじらしや……』
 と、あたかも生きた蓄音器のように歌い出した!!!