Entry1
バトカメ連動『ヅラやヅラざるや』
ごんぱち
「お待たせしましたー」
若い女の店員がトレイに載せて注文品を持って来る。
「ああ、エビフライこっちね」
四谷京作は片手を挙げる。
「ビーフシチューは俺」
蒲田雅弘が皿を受けとる。
「えっと、どこまで話したっけ?」
四谷が蒲田に向き直る。
「課長の話だろ」
蒲田はスプーンを取り、ビーフシチューを食べる。
「ああ、そうだそうだ、課長。着任したと思ったらもう異動とか、信じられんよなー」
「何かやったんじゃねーか?」
「ははっ、そうかも」
四谷は笑ってエビフライプレートに載っているパンをかじる。
「んで、送別会だけど、場所どうするよ?」
もぐもごやりつつ、蒲田は顔を上げる。
「送別会ってのは……なんかこう、違う気がするんだよな。正直左遷だろ、これ」
四谷は少し考えてから、閃いた、という顔で指を一本立てる。
「そうだ、『課長を励ます会』とかにしたらどうだ?」
「い!?」
蒲田は自分の頭に触れる。
「いや、それは……止めた方が良いんじゃないかな」
「ん、何か?」
「え? あ、ああ、まあ……よく考えるとそんな悪くは――えっと、なあ、結構うまいぞ、このビーフシチュー」
「へー。オレ、ビーフシチューってあんまりイメージ湧かねえんだよな」
四谷はエビフライの尻尾から口に入れ、噛み砕く。尻尾のパリパリとした音と、衣のサクサクした音が響く。
「ほら、シチューってさ、色んな野菜とか入れて、クタクタ煮込むイメージじゃん?」
「うむ」
「でも、店で出るビーフシチューって、こう、別々に煮たヤツにソースかかってるいたいで」
「あー、まあ分からなくはない」
「オレの考えるシチューと、絵づらが違うんだよ。絵づらがさぁ」
「ま、あ、違う、絵ヅ……い、いや、そのヴィジュアルだな。分かるよ、うん、分かる、分かった」
暫く会話が途切れ、二人は黙々と食事を続ける。
あらかた料理がなくなった後。
「で、何の話だっけ?」
「いや、だから、課長だろ」
「そうそう、励ます会な」
「それは、止めとけ、っつの」
皿に残ったソースを、蒲田はパンで拭って食べる。
「しかしさ、課長も大変だけどさ、こっちの方が大変だよな。課長の抜けた穴埋めないと」
「そうだな、抜け――いなくなった穴、埋めないとな」
「あー、考えるとうんざりするな」
四谷は溜息をつく。
「ただでさえ梅雨場は鬱陶しいのに、こんな事があってな」
「……だな」
「そんでさ」
「のさ、四谷」
「あ?」
「ええとな」
「なんだよ?」
「ずれてる」