Entry1
若干2名
荒井
一日の始まり。クルクルと、頭の上でハエが回転した。何か、独特の腐敗というか、黒いというか、汚れている、沈んでいる、そんな感じの臭気を自分に感じて彼は近寄ってきたのだろうか?そう思うと腹が立ち、近くにあるテレビ雑誌を丸め、ムキになってヤツと戦っている自分がいる。ヤツめ!なかなか頭がいい。というより、俺が悪いのか?などとぶつぶつ独り言を言いながら、しつこく、ヤツ全体を狙っていると、観念したのか、窓の隙間からブーンッだって・・。上手く逃げ果せたハエに敗北をきっするのが悔しい俺は、そのまま意味もなく雑誌を振り続け、
「オメーを叩こうと思ったわけじゃないのよ、ああ、手首の運動、運動、」とか何とかまた、独り言。っと気を抜いた瞬間に手のひらから雑誌、スッポ抜け、天井めがけてまっしぐら。見事、切れかかった蛍光灯にぶち当たりガッシャーンだって。ゴール、祝福の鋭利な蛍光灯の破片が一斉に真下の俺に浴びせかかる。最後に大きいのが垂直にグサット。という事で、今病院。混んでいて嫌になる。待ってる患者を見ていると、なんだか、見た感じ健康そうじゃねーか? お前等、緊急って感じじゃ無いじゃない?? っていうかココ整骨院だし、そりゃそうか。いつも、間違っているの俺。病院って感じのところだから平気だろって来たのが間違いだった。だけど、俺の頭に蛍光灯一本丸ごと刺さってるの見れば、どうぞ、どうぞと順番抜かしでVIP。すぐ看てもらえると思ったのに、なに、この人たち、無視?無視なのですか?まさか、ファションだと思ってるんじゃ・・・、違う、かなりの緊急事態なの俺。これ刺さってるのよ、皆さん。緊急事態を知らせるために、看護婦らしき白衣の女性の前で、垂直に頭に刺さってる蛍光灯を少しずらす。その瞬間、頭上から血シブキが、小さな噴水のごとくたった。OKだ。やっとだ。事の重大性を気づいてもらえる。そう、俺、緊急事態なの。と話そうと思ったら、その女、「プッ、面白いですね、それ。そういうシュールなの結構好きですよ。」っておっしゃいました。いやいや、奥さんって奥さんか奥さんじゃないのかは問題じゃなくて、今はこの頭の蛍光灯が光ってる・・・・、はっヤバイ。がんばっちゃったせいで一瞬、頭が変になった。気づいたら看護婦さんは、廊下のはるか遠く。おれ、これ以上時間がたったら、本気でヤバイと思い後を追いかけた。彼女は手にお茶を持ち、廊下の一番端の部屋に入っていった。「何だね、君は!」その部屋は院長室らしく、院長と思われる、太った男がいた。彼の肉でムチムチ、パンパンになっている白衣の名札には(ゴードン)と書いてあった。だけど、見た目、日本人。少しむかつく。「あっ、さっきの面白い人、院長、この人面白いんですよ!」ってバカ看護婦がゴードンに紹介しやがった。ばか、人間第一印象が大事でしょ?違う、面白い人って紹介されて、蛍光灯、頭に刺していたら、本当に面白い人じゃないですか?違います?「君、それより、その頭の蛍光灯、大怪我じゃなぁか。」さっさすが、ゴードン。このバカ看護婦とはやっぱ違う。あんたはやっぱり院長です。すいませんでした。よく見ればその肉体も筋肉質なデブですね。さあ、直して。あんたに任せる。終わったらチャンコ鍋食おう。もちろん俺のおごりだ。来場所もがんばれよ! ゴードン「きみ、そこに寝なさい、どれどれ、アラー、深く刺さってるね。脳みそまでいっちゃってるよ。この状態で生きてるのが不思議な位ですよ。これは、抜いたら死んじゃうね。うーん、この上からギブスで固定して刺さったままで暮らしましょう。日常生活には差し支えないですから」なんてな事を当然の口調でいいやがる。俺、男泣き。これから一生、蛍光灯を頭に刺しながら生活しなければならないのか。死んだら、火葬場で骨と蛍光灯が残るのか。それを、親戚のまだちっちゃな、俺のことなんて知らないガキが箸でつまんで、お父さんに言うんだ。「人間の骨ってガラスみたいだね。」って。それで、お父さんは、悲しい顔をして、いやいや、それは本当にガラスなんだよ。この人はね・・・ってガキに説明するのが目に浮かぶ。そう思うと悲しくなった。だけどみんな、蛍光灯も骨ツボに入れておくれ。それはもう僕の一部だから。整骨院の帰り道、おれはギブスで、頭に完全に固定された蛍光灯を摩りながら電車に乗った。ははは、もう夕方。「夕方の電車っていつも思うけどなんか雰囲気ラーメン屋じゃない?」なんて隣のサラリーマンに話かけたくなったが、そこは俺、大人だから我慢して、静かにしていた。頭に蛍光灯刺さってるし、静かにしていた。こんな自分がちょと好き。だけど、このまま家に帰ったら絶対に息子にイタズラされるな。それでうっかり抜かれたら自分、死んじゃうわけだし、ここは一つ、昔から家族の間で隠し事はナシとしてきた僕ですが、今回だけは隠しておこうと心に決め、近所の帽子屋に寄り道した。丁度イイ塩梅のストローハットが出てきて、コレくれって店員に行ったら1万5千円とぬかしやがる。どういうことだといったら、「「コレはマルコムマクラレンの・・・」等、わけのわからぬ事を、どうたらこうたらぬかしやがって、結局俺、わけのわからないまま購入。ショウガナイデショ、近所に帽子屋ココしかないし・・。家に帰り「何、あなた、いつまで帽子かぶっているの?」なんて食事中に妻に聞かれたから、おれ動揺してナスの重焼きを床に諭とす。ビッタンって音たててナスが床にへばりつく。俺、とりあえず床にへばり付いたナスを剥がす振りをしながら、時間稼ぎ。この帽子の必要性を妻に伝える言い訳をかんがえた挙句、「オシャレでしょコレ?」なんてなことを適当に言うと、妻、テレビを見ていた。会話振っといて、無視ですか、はいはいはい。わかりましたよ。テレビより面白い事が、この帽子の中で行われているのに、ああ、そうですか。わかりました。帽子の中はもうあなたには見せません。そう。絶対に。ああ、何てことだ、既に、この蛍光灯によって俺の心は荒みっぱなしだ。俺が無職なのも蛍光灯のせいだ。そう思った。すべてコイツのせいにして、俺、白紙。俺は悪くない、悪いの蛍光灯だ。と思い込むことにした。そう考えた方が、楽だから。それにしても予想外だったのが、息子の反応のなさだった。俺の帽子にも何にも触れやしない。もう父親になんか興味ねーッス!ッテ感じだった。考えてみれば、ココしばらく息子と話してなかったなぁ。そんなことを思いつつ、息子の背中を見ていた。さっきから息子がテレビゲームをやっている。そのジョイスティックさばきに俺の蛍光灯が重なり、ゾクッ。息子に見せたら脳みそコネラレルなこりゃこりゃ。蛍光灯頭に刺さり、しばらくたったある日、久しぶりに息子が会話を俺に振ってきた。こういう時間を大切にしないとね。レッツコミュニケーション。「「蛍光灯を頭に刺したまま生きている男」て言う都市伝説知ってる?」と子供に言われ、自分は動揺した。よく聞くと、学校の怪談みたいな感じになってるらしい。口裂け女・・・と俺、蛍光灯男。結婚しろ! お前等。