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3000字小説バトル

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3000字小説バトルstage4
第27回バトル結果

ざんねん

今回は咲本ららさん作『Knife』、蛮人S作『庭の憂鬱とか断絶』の二作品が一位となりましたが、一位作品の数が、その得票数以上となりましたので、規定によりチャンピオン作品はありません。次回にご期待下さい。

投票結果
得票数 
1
咲本らら
2
2
文烏
サヌキマオ
3
蛮人S
2
4
サビタ沢教育所
河合裸石

感想票をお送りいただいた皆様、ありがとうございました。

「私の投票がない!」「内容が違うような?」……掲載もれ、ミスなどがございましたら、QBOOKSインフォデスクのページよりご連絡ください。

推薦作品と感想

Knife
咲本ららさん

感想:
切れ味の鋭い表現にいくつか接して、若い感性が羨ましくなりました。
投票者: その他のQBOOKS参加作者

感想:
Entry1 Knife
 私の感覚で言えば、それでもやっぱり希ちゃんは「私」の親友なんだな、と思われるのだ。
「私」は希ちゃんを失うことを怖れている。何もしないうちから心に強い言葉を並べてみせるのは、そんな気持ちを懸命に否定する弁明のようだ。
 実際「好きな人」の姿が存在すら曖昧な小道具である一方、具体的に描かれる希ちゃんとの関係の描写は、非常に濃密なのだ。誰か知らない女子に「好きな人」を持ち去られて二人で泣く方がマシなのだと言わんばかりに。
 というのが作者の意図かどうかは分からない。本当は、ナイフを隠した「女子高生」の本質を知らない者の、浮ついたロマンなのかもしれないけど、それならそれで読んだ甲斐はあったかも。

Entry2 文烏
 なんか漱石さんちと違って、こっちの文鳥は死にそうもないなあ。いや、文烏か。次から次へと謎めいたネタが叩き込まれるのは、もう圧巻で、これは凄いと言うほか無い。と言っておいて言うのも何だけど、ちょっと圧巻すぎて疲れる感じもある。
 飽くなき八十吉のネタ振り、謎すぎる文烏、しかし一番異常なのは、あまりに平常運転な夏目先生だ。この平坦っぷりが、周囲の異常を巻き込んで平坦化している。歪んだ世界が、まるで日常のようにすんなり進行してしまうのは、そのためだろう。
 ひとつヤバいのは、自分はそれほど文学してる人間じゃないので、漱石に限定してもどこまでが何のネタだか分ってないかもしれないことだけど、まあそこは私の問題だから仕方ない。

Entry3 庭の憂鬱とか断絶
 結構投げやりに書いたら、自然になってしまった。そういうのも困る。

Entry4 サビタ沢教育所
 先生、かなりのクズである。それは先生になった経緯からしてすでにそんな感じだったのだけど、これでこんだけ持ち上げられて、しかもこの寒村では、逃げ出して当然な気もする。
 なお、底本は基本的に随筆集なので、ある程度は実話だったのかもしれない。先生も21世紀になってまで叩かれるとは思わなかったろう。
投票者: このバトルへの参加作者

庭の憂鬱とか断絶
蛮人Sさん

感想:
「Knife」
 技術的なことはさておき、親友二人の心理戦を書きたいというのがよくわかります。
「そうね、その時は教えてあげるわ」という最後のセリフが、なんでもない一言のようでいて実は選び抜かれていて、非常によく利いていると思いました。

 さておいておいた技術的なことに戻ると、この小説は一人称で書かれているので、主に「私」の主観で描写されると思うのです。
 がしかし、<女子高生は特に、そういう方法を幾万通りも知っている。/ 彼女たちはいつだって殺気立っている。小さいけれど、殺傷能力に長けたナイフを、プリーツスカートの裾に、胸ポケットの中に、襟元の内側に隠し持っているの。>って、急に語りが三人称に切り替わっているように読めるところがある。「私」が<女子高生は>という大きさの主語で喋るキャラクターであればともかく、どうも作者自身が我慢できずに語り手として転がり出てきちゃったっぽい。このへん「おや」と思う。

「文烏」
 書いていて面白かった。これでパロディでなければよりいいのですが、元ネタ「文鳥」の「飼ってもいいと答えた」がどうしても使いたかった。
 さほど反省はしていない。

「庭の憂鬱とか断絶」
 面白いな!
 やっぱりこう、登場する人々がちょっとずつおかしいあたりのさじ加減がよろしいと思います。猫臭対策にトイレの消臭剤を置いてみたり、昼に食ったアジやほうれん草が夜にも出てきたり。ただの日常というのはつまらないものですが、行動様式やちょっとした変化をスッと書いて面白いところが非常に上品な笑いだと思います。

「サビタ沢教育所」
 面白いな。「先生がいなくなった」というだけでこれだけ書ける。
 先生つながりで。昔、NHKのみんなのうたで「せんせ ほんまにほんま」という曲がありましたが、アレに近いもんを感じました。
 この、読後感で「先生とお松のあいだでなにかあったのか」でしばらく楽しめる作りはこんどやってみよう(といってやらないパターン)。
投票者: このバトルへの参加作者

感想:
とわこさんは、柔軟な考え方ができて、すごいですね。
主人公は、なんだか真面目で、堅物そう。
だけど、いいかんじな相性ですね。会話から伝わってきました。
投票者: このバトルへの参加作者