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3000字小説バトル

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3000字小説バトルstage4
第41回バトル結果

ざんねん

一位作品の数が、その得票数以上となりましたので、規定によりチャンピオン作品はありません。次回にご期待下さい。

投票結果
得票数 
1
サヌキマオ
1
2
井原西鶴/ 蛮人S
1
3
その日
田村俊子

感想票をお送りいただいた皆様、ありがとうございました。

「私の投票がない!」「内容が違うような?」……掲載もれ、ミスなどがございましたら、QBOOKSインフォデスクのページよりご連絡ください。

推薦作品と感想

あるいは猿でいっぱいの浜
サヌキマオさん


感想:
Entry1 あるいは猿でいっぱいの浜
良いですね、とても良いです。旅に出ますと多かれ少なかれの異世界体験を得るわけで、つまりその土地特有の習慣、文化、猿を頂点とする社会階級、そうしたものを垣間見ることができます。本作も、恐らくはご自身の旅の実体験をそのまま綴ったものかと思いますが、冬の砂浜の底での冷え込みと放尿の温もり、よく浮かぶ温泉、猿のもてなし、身をもった活写によって、日本には実に様々な風土があるのだということを、そして読者自身はこの魔境に実際足を踏み入れる心配もなくヌクヌクと体験できる喜びを、ありあり感じさせる作品と思います。ぜひまた行ってきてください。

Entry2 神様だってお目違い
最初(以前に1000字でやったように)高柳淳之介の訳をゲスト枠に載せようと思ってたんですが、どうもこの御方の書きようは納得できなかった、貧乏や吝嗇を笑っているようにしか読めないのです。西鶴はこの商人の精神的貧しさを蔑んでいるのであり、例えば「自身ではフナも買わない」ような商人のことも、持たざる者とは云いますが、貧者とは呼んでないのです。織田作之助は丁寧に訳しているようですが、これはこれで古典の教科書のようにクソ真面目で面白くない。で、みんな混ぜこぜにして書き直した次第です。本当だよ。トラスト・ミー、苦し紛れのコピペじゃないんだ……

Entry3 その日
執拗なまでにねっとりとした描写。『身体じゅうの神経がむず痒く、うずついて、脈管を破られるほど力いっぱいにぐるぐると身体を縛められたいような、手にさわるものは悉く触覚のつよい掌の底の真ん中へきゅっと掴み入れたいような、いらいらした気分』まるで作品そのものの描写のようです。こういう文章は私には書けません。想像もできないという人もいるでしょう。人の感覚にはそういう属性の差はある。そこを男女という性差で括るのは誤りですが、一般には「女性的」と称されるものでしょう。その「女性的」なるもので女性の心理を描くことが、自然描写であるのか陳腐な虚構であるのかは分かりません。
投票者: このバトルへの参加作者

神様だってお目違い
蛮人Sさん


感想:
「あるいは猿でいっぱいの浜」
 どうにかこうにかひねり出した結果、いままでにないタイプの作品が生まれた気がします。
 面白いかどうかは度外視するものとする。

「神様だってお目違い」
 <不運な神様>というあたりに西鶴の人と神の距離感みたいなのが出ています。
「うちではもう十年この方、ずっと二日に祝うてますんで。折敷も古いですけど堪忍ください」というのも、人が客に言うのも神様にいうのもおんなじ位の距離感。今の感じと比べるとどうだろう「神様が身近だった」のか、「他人をもっと敬っていた」のか……

 なお、浅学にてどこまでが西鶴でどこまでが織田作でどこまでが蛮人さんかというのはわかんないくらいに継ぎ目がわからなかったので、そこは地味ながら技術だなぁと思います。

「その日」
 この情報量がすごいっすね。これを映像でやると一発なんですが、テキストで圧縮ファイルを作って脳内で解凍する感じ。
 これが大正初期の作品。この時代だからこそ、という表現であると思います。
投票者: このバトルへの参加作者