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第6回3000字小説バトル
Entry4

ひねくれ者のプレゼント

作者 : 子如烏一月 [しじょう むつき]
Website : http://mystery.cha.to
文字数 : 2853
 都会とは程遠い、小さな小さな田舎の町。この町にはこの町で生
まれ育った、同い年の仲のいい5人の子供たちがいた。5人はとて
も仲が良かったが、みんなのアイドルであったサリーが両親の都合
で町から出て行ってしまうことになった。そこでみんなは相談して、
サリーが町から出て行ってしまう前に記念のプレゼントをあげるこ
とにした。4人はプレゼントを買うために休日にケンの家に集まっ
た。
「よし、みんな集まったみたいだから、お店に買い物にいくよ」

まず1件目のお店。エルはサリーに洋服をプレゼントしたいと洋
服屋さんに行くことにした。洋服屋さんには、色とりどりの様々な
洋服が売っていた。サリーとエルは、よく一緒にこの洋服屋さんに
買い物に来ていた。
「サリーってとってもお洒落だから、きっとこのきれいな洋服をプ
レゼントしたら喜ぶわ」
エルはそういうと胸元に花の模様の入った白いワンピースを選んだ。
ケンとビルは、「これならサリーにぴったりだ」と喜んでいたが、
ジョニーは「サリーには似合わないよ」とそっけなく答えた。
 2件目のお店。ビルはサリーにアッと驚くものをプレゼントした
いと玩具屋さんに行くことにした。ビルは新しい玩具が大好きで、
新しい玩具を買ってはサリーによく見せていた。
「サリーは、びっくりするものが好きだから、この玩具をプレゼン
トしよう」
ビルはそういうとピエロが飛び出してくるビックリ箱を選んだ。ト
ムとエルは「これならサリーは驚くよ」と喜んでいたが、ジョニー
は「サリーはそれじゃあ驚かないよ」とそっけなく答えた。
 3件目のお店。ケンはサリーが欲しがっていたものをプレゼント
したいと時計屋さんに行くことにした。ケンがお父さんからもらっ
た腕時計を、サリーはよく羨ましそうに見ていた。
「サリーは時間にうるさいからな。前から欲しがっていたこの腕時
計をプレゼントしよう」
ケンはそういうときれいなピンク色の腕時計を選んだ。ビルとエル
は「これならサリーはきっと嬉しがるよ」と喜んでいたが、ジョニー
は「サリーは嬉しいと思わないよ」とそっけなく答えた。
 4件目のお店。ジョニーは3人に理由を言わず写真屋に行くと言
った。ケンは「カメラをプレゼントするのか?」と聞いたがジョニー
は何も答えなかった。ビルは「サリーはカメラなんか欲しがってな
かったぞ」と言ったがジョニーは何も答えなかった。エルは「カメ
ラより絶対洋服の方がサリーにピッタリよ」と言ったがジョニーは
何も答えなかった。ジョニーは店主に何かを話していたが、話し終
わったところで、
「もう、僕の用事は済んだから帰ろうよ」
と言った。3人は「何も買わなくていいの?」と聞いたがジョニー
はもう買っておいたよと言うだけだった。
 
 サリーが町を出て行ってしまう前の日。4人はお別れ会をするた
めにサリーの家にきた。サリーは、みんなと別れることがとてもさ
びしいと泣きながら話した。4人とも胸がいっぱいで涙があふれだ
した。今日がサリーと遊べる最後の日になるので、みんなは外で元
気いっぱいに、いつも以上に楽しく遊ぶことにした。陽が暮れてみ
んなが家に帰らなくてはいけない時間が近づいてきてから、ケンと
ビルとエルの3人はサリーのために買ったプレゼントを渡すことに
した。
 まず最初にエルがサリーにプレゼントの白いワンピースを渡した。
「この前一緒に洋服屋さんに行ったよね。そのときサリーがこのお
洋服とっても気にいってたじゃない。だから、この洋服をサリーに
着て欲しいんだ」
エルがそういうとサリーは、
「ありがとうエル、これからこのお洋服は私のお気に入りのお洋服
になるわね」
と優しく笑った。
 次にビルがサリーにプレゼントのピエロが飛び出すビックリ箱を
渡した。
「サリー、この箱の中にプレゼントが入ってるんだ。空けてみて
よ?」
ビルの言葉にサリーが四角い箱を開けると中から、ピエロの人形が
飛び出した。サリーは「キャッ」と驚いた後、少しすると「フフフ」
と笑い出した。
「ありがとうビル。このプレゼントはビルらしいわね。新しい町で
お友達ができたら、今度は私がそのお友達を驚かすわ」
とビルににっこり微笑んだ。
 3番目にケンがサリーにプレゼントの腕時計を渡した。
「サリー、僕の腕時計を羨ましがってたよね。僕のじゃないけど、
このピンクの腕時計を君にあげるよ。きっとサリーなら似合うよ」
ケンは喋りながらサリーの腕に時計をはめさせてあげた。
「ありがとうケン。ケンがお父さんからもらった腕時計を大切にし
てるように、私もこれからこの腕時計を大切にするわ。それに私、
ピンクって大好きだもん」
腕時計を眺めながら、サリーは嬉しそうにいった。
3人からプレゼントを受け取ったサリーは、とても嬉しそうに喜
んだ。ジョニーだけプレゼントを渡さなかったのだが、サリーは『今
日めいいっぱい遊べたのが私の一番のプレゼントなのよ』といった
ような表情でジョニーに優しく微笑んだ。

 翌日、サリー一家の荷物がまとめられ、いよいよサリーとお別れ
をする時間が近づいた。サリーとお別れするために4人は集まる予
定だったのだが、ジョニーの姿だけなかった。
 今日のサリーは、前日に3人からもらったプレゼントを身につけ
ていた。エルは白いワンピースを着たサリーを見てとても嬉しそう
に、
「うん! とってもお似合いよサリー!」
と言った。
しばらくするとサリーが町を出て行く時間になった。ジョニー以
外の3人は、みんな瞳に涙をいっぱい浮かべて、サリーとお別れの
最後の握手をした。サリーはお別れの挨拶を3人と交わすと車に乗
り込んだ。すると大急ぎで走ってくるジョニーの姿がサリーの目に
入ってきた。
「サリー!! ごめん、昨日プレゼントを渡せなくて。はい、これ
がプレゼント!!」
ジョニーは車に乗っているサリーに近づくとサリーの腕を取り、手
のひらに数枚の写真を置いた。その写真には楽しそうに遊ぶサリー
やみんなの姿が写っていた。
「写真屋さんの人に、昨日、内緒で撮っておいてもらったんだ」
ジョニーはそういうと優しくサリーに笑いかけた。ケン、ビル、ア
ンの3人はそのときになってやっと写真屋に行った意味に気がつい
た。3人は、ジョニーが自分たちのプレゼントをそっけなく否定し
てた意味が分かったような気がして、何となく恥ずかしくなった。
「もういい、サリー?」サリーのお母さんがサリーに話しかけると
サリーは小さく頷いた。サリーのお母さんは4人に「今までありが
とうね。さようなら」というと車の運転手さんに「出してください」
といった。少しずつスピードをあげて遠ざかる車の窓からサリーは、
4人に向かって大きな声で叫んだ。
「みんなとの思い出が私にとって一番のプレゼントよ!!」
4人は車が見えなくなるまで、大きく手を振りつづけた。手を振る
4人の顔からは涙がボロボロと流れていた。
車が見えなくなってから、ビルとエルは涙を拭きながら「ジョニー
にやられたね」とそっと、ケンに話した。するとケンはこう言った。
「あれは本当のひねくれ者しかできないプレゼントだよ」