第11回3000字小説バトル
Entry11

古い家

 にゃお、とトラは暫し長い欠伸をひとつ。

 縁側の日向で心地よく、尻尾を振りながら寝ている。



「あれは珍動物に違いない」

「ややとも尻尾を引き摺っておるからなぁ」

 ヒソヒソ、何事かの相談がどうやらクヌギの木から聞こえます。

 どんぐり眼(マナコ)のどんぐりオバケ。

 クヌギの木の葉の合間から、点々とぎょろり目玉が辺りの散策を

し

 て、きょろきょろ、クスリ、にらめっこ、幾つかの実がクヌギか

ら

 落ちました。

 と、そのままころころ転がり落葉から飛び出て、どうやらどんぐ

り

 オバケ達は祭りの支度を始めたようです。

 トラはそれに気づかず、仰向けに腹をだして気持ちよさそうに寝

て

 いるのですが、襖からブリキの王様が歩いていらっしゃって、

「パリはどこぞの道から行けばよいかのぉ」

 えっへんえっへんのブリキの王様は戦争に勝ちまして、えっへん

の

 イスタンブールへの凱旋路をえばった貫禄で縁側のトラにお尋ね

 なさったのですが、トラはちっとも気づかないようです。

 すると突然、お部屋の方からドシンと物音がします。心地よく秋

刀

 魚の夢を見ていたトラは億劫に薄めを開けて一応、様子を見やっ

た

 のですが、すぐに又、無関心に眠りについてしまいました。

 いたりあの小さな詩人が畳の上にうつ伏せに倒れているようです。

 どうやら天井の梁の隙間から、抜け落ちたようで

「馬鹿じゃィ、つきおとす奴があるか」

 と、梁に向かって大声でお怒りになさっています。

 その横を一匹、二匹三匹のネジまき猿がきぃきぃ、

 ああ、なんて事でしょう、いたりあの詩人を跳ね飛ばし、走り回

っ

 て、その後をお犬の保安官が笛を鳴らしながら懸命に追いかける

の

 ですが、とうとう障子を破いて、お庭に遁走をし、転落してしま

っ

 たようです。

「やい、やい おりて来い、祭りだ祭りだ」

 いたりあの小さい詩人はすぐに立ち上がり天井の方へ喚めきます、

 すると梁の隙間から声が出て

「やい、飯はあるんか」 「やい、日がよう照るなら出てもよいぞ」



 ひくい声 わらい声



 ころころどんぐり、祭りだ せっせっこ

 そんな、いたりあの詩人を横目にお庭では、どんぐりオバケ達は

 ころころ踊りながら祭りの準備を一生懸命にやっていました。

 やがて、クヌギの枝からねじりハチマキ姿の雀等が神輿を担いで

 わっしゃい、わっしょい、と陽々駆けつけて来ます。

 祭りの支度はそろそろ終わるようです。

 一方、癇癪をうって跳ね回る、いたりあの小さい詩人に

 ブリキの王様が不幸にもぶち当たったようでした。

「猫が邪魔じゃあぁ」

 と、ひそひそ梁の隙間の声

「猫は寝とるぞぉー」

 と、いたりあの小さい詩人が言うと

 やれやれぞろぞろ、奇妙なものらが梁の隙間からやっと降りてく

る

「ブリキは重いぞー・・」

 いたりあの小さい詩人はか細く声を出します。



 ちゅんちゅん わっしょい ちゅんちゅん わっしゃい

 祭りが始まったようです。

 酔いどれみどれ酔いつぶれ酔い酔いみどれ酔いしれつ

 お庭に輪になって奇妙なものらが踊り出すと、その真ん中で

 いたりあの小さな詩人が大好きなげぇての詩を歌います。

 そのリズムにあわせ瓦ががたがた笑いこけ、草等をトラポリンか

わ

 りにして、どんぐりオバケとネジまき猿や犬の保安官が交互に飛

び

 跳ね、飲みすぎたのでしょうか、クヌギがくねくね座り伏し、

 しまいには、普段、トラに苛められて外に出てこない鼠の家族ら

が

 一団で出て来て阿波踊り、やがて雀と一緒にわっしゃい、ワルツ

を

 踊り、愉快で堪らなくなった、お家様が高らかに笑い出しました。



 ちゅんちゅん お祈りなされ今日の日に

 わっしょい ちゅんちゅん 酔う酔うみだら酔いみどれ



「おーい、小僧が帰ってきおった」



 仰天、わっしゃい驚いた祭りの者達は出鱈目に慌てふためき

 畳や本の項に隠れ込んで、雀はバタバタと神輿を担いで飛んでゆ

き

 あまりにもビックリしたのか鼠は猿と一緒に猫に乗り、猿がきぃ

と

 鳴くと、鼠は飛ぶように逃げてゆきます。

 転んでころころとどんぐりオバケ達は動かなくなり、

 ブリキの王様もコテと横たわりました





「やや、なんだ 母ちゃんに怒られる」



 小僧っこは、ややのんびりな悲鳴をあげると

 猫の首を掴み上げました。



 ぎゅむ、と トラ うねる。












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