(呪いのビデオって知ってる?) (見ると、一週間後に死ぬんだって) 一時期、学校で広まった噂。 最初にこの噂を聞いたのは、いつ頃だろう。少年ははっきりと覚 えていない。 (死にたくなければ、一週間以内に「ある事」をしないと駄目なん だって) (何をするの?) (ビデオの内容は?) (わからない。きっと、ビデオを見た本人じゃないと、わからない んだよ) と、いった感じの噂話。いつの時期でも、学校ではこういった妙 な噂が流れるものだ。 ベッドの上に腰を降ろすと、少年は深くため息をついた。 ギシギシ。と、きしむ木製のベッド。 その上で、少年は考えていた。 (呪いのビデオ) 今じゃ、誰もそんな噂話してはいない。一昔前のブームと言って もよかった。 (はあ) 再び。ため息をついた。 一昔前の噂話を、少年は思い返している。 (はあ。・・・・) 三度目のため息は、ひときわ大きい。 夜間。時計は二時を回っていた。 いつもなら、明日の学校に備え眠っているはずの時間だが・・・。 眠れないのだ。それどころではなかった。 少年の視線の先は、二間ほど先のテレビの上・・・・。そこには ビデオがひとつ、置かれていた。 先程、少年はこのビデオを見た。 そして、その終わりの映像が、少年の脳裏に焼き付いて離れない のだ。 このビデオを見た者は・・・・ 一週間後に、死ぬ運命にある。 死にたくなければ、一週間以内に・・・・ 他の誰かに、このビデオを見せる事・・・・。 それが、終わりの映像に映された文字である。 (これは。・・・・) まぎれもない、呪いのビデオだ。 (何で、このビデオが!) 少年は、頭を抱えた。 事前に知っていれば、呪いのビデオなんて絶対に見るはずがない。 見てしまったのには、理由があった。 今朝。学校の教室で。・・・・ いつも通り登校し、席に着いた少年は、ふと、机の中に何かある のに気がついた。 何だろう。 取り出すと、それは、ビデオであった。 (・・・・?) 見覚えのないビデオだ。当然、こんな物を机の中に入れた覚えも ない。 誰かが、間違えたのかな? なにげに、側面の題名に目をやった。 (・・・・!) 驚いた。 ピンク色の題名。卑猥な題名。 間違いない。 ビデオ(アダルト)だ。 (これは。・・・・!) 思わず胸が躍った。 少年は十八歳。それを見る権利は十分にある。 少年は高鳴る胸を抑え、そして・・・。 ビデオを、己のカバンに押し込んだ。 このビデオを見た者は・・・・ 一週間後に、死ぬ運命にある。 (はめられた) 両手で、髪を掻きむしる少年。 そう、はめられたのだ。 少年の他にあのビデオを見た者が存在して、その者が、少年の机 の中にビデオを忍ばせた。 他の誰かがビデオを見れば、その者の命は助かる。だから・・・ ・。 (だから、僕の机にビデオが) 納得がいく。 そして、自分が助かるためには、他の誰かにこのビデオを見せね ばならぬことも、理解できた。 誰に、見せるべきか。 正直、嫌いな奴はクラスに何人かいる。 (しかし) だからと言って、この呪われたビデオを他人に見せるには、少年 は純粋すぎた。 他人を犠牲にしてまで、助かりたくない。 そういう美意識が、少年の中には存在した。 (僕は・・・・!) 突然、弾かれたように立ち上がると、 (何が、呪いだ) ビデオを、手に取った。 噂は噂に過ぎない。このビデオも、誰かのイタズラかもしれない。 (きっと、そうだ) 少年は机の引出しにビデオを放り込むと、すべてを忘れる事にし た。 死にたくなければ、一週間以内に・・・・ 他の誰かに、このビデオを見せる事・・・・。 一週間が、過ぎた。 変化はない。 (ほら、しょせんは噂だ) 思わず、笑顔がこぼれた。 いたって健康だ。少年の身体に異常などなかった。 (この科学の時代に、呪いなんて。・・・・) 勝ち誇った気分の少年。しかし、それは少年の勘違いである。 呪いはまだ、生きているのだ。・・・・ 次の日の夜。 兄貴が死んだ。