第11回3000字小説バトル
Entry4

無比較優位

 窓からは町の交差点が見える、どちらかというと田

舎の交差点だ。多くの人がせわしく動き、車は排気ガスを垂れ流

す。彼は誰よりもこの交差点を眺めていた。時間の許す限り、煙草

を吸い、きもち隠れながら見守っていた。彼のささやかな唯一のプ

ライベートタイム。今は夏だった。

 このように彼がプライベートタイムにこのような事をするのには

理由があった。気になるものがあったのだ。それはほぼ定刻に起き

る出会いだった。午後の7時からの7分間、気になる女性はタバコ

を吸ってベンチで一日の疲れを癒していた。とても美しい人だった。

 美しいとは外見のことで、しかし話したことのない彼にとってあ

の心情はわからないのだが夢中の産物である妄想をもって現すこと

ができた。

 出会いは今年の4月だった。タバコを買いに行ったときにたまた

まつかれた女をみた。それがきっかけ、なんともむなしい、悲しい。

いや、悲しくはなかったのだ、本物の彼女を見なければ。

 じつは彼は彼女と話したり、遊んだり、一緒にご飯を食べたこと

もあった。彼と彼女はいわば恋人であった。あったこともないのに

なんで話せるのだ!けしてクローン人間ではない。法律にも違反し

ていない、彼と彼女の出会い。そこには、しかし、両者のことを考

えるエコ的発想はなく、彼のエゴで動いていた。要するに、天主関

白であった。その世界はバーチャルリアルティーだった。彼が人を

作り出したのではなく、世界を創造した。かれはそこでは神である。

 時代は21世紀も終わりをつげようとしている2096年。この

時代の比較優位は存在しなかった。すべての人が欲求を満たせた、

仮想と現実の区別はそこにはなかった。だから皆が神であり、宗教

がかっていた。かれもそのひとりであった。

 ある日、彼は満足できなくなった。知らない、現実の彼女にあい

たくなった。かれは頭がよかった。かれは刺激がほしかった。新た

な世界を創出するために・・。だから現実を確かめたかった。“か

れはこうふんした“人間として、まだ先祖の人間の血液は彼を遺伝

子からくる欲求を見逃さなかった、見逃せなかった。

 かれは勇気を絞り、話し掛けることにした。どちらかというと田

舎の交差点だ、多くの人がせわしく動き、車は排気ガスを垂れ流

すその場所へ、急いだ。やはりいつものように彼女は午後の7時か

らの7分間、気になる女性はタバコを吸ってベンチで一日の疲れを

癒していた。とても美しい人だった。なんて規則正しいのだろう。

 「ぼくは君のことが気になっていた。実は、ぼくは君に恋してい

る。けして何も求めてはいないのだが、どうかこの事実だけ、この

瞬間だけでいいので、君のフラッシュメモリーに僕の像をいれてく

れないか?いきなりでもうしわけないが、わたしは現実の人と話し

たことは、うまれて2回目なんで、話すのはにがてなんだ。」

 「私もうまれて2回しか喋ったことはないです。でもなんだかホ

ッとしました。私はいつも孤独を感じていました、現実のなかで腰

をおろしたいと思っていました。もしよかったら今までの私たちの

人生時間を一緒に取り戻しにいきませんか?」

 かれは驚いた。自分と同じ考えをしている人がいたことに…。戸

惑った。

 「ちょっと五時間ぐらいまってくれない?ゴメンね。そういうシ

ナリオは思いつかなかったよ。君のアドバイスはすごい。ちょっと

待ってて、どこにもいかないでね…」

 かれはパソコンの前に座っていた。今書いた仮想も、現実も、カ

レノバーチャルリアリティーデアッタ………。

 ドコニゲンジツハアルノダロウ。ジブンデミチヲキリヒライテイ

クノハ、20セイキマデノキボウテキテッソクダ。イマハゲンジツ

ニシタガウホウガ勇者デアル…・・











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