■Entry3
彼岸アレシア・モードさん
感想:「六花」
<初めての男と肌を合わせるときの緊張感は、雪が降り出す前の張り詰めた空気に似ている>がゆえに語り手の幼少期の回想シーンが出てくるのか。これ、恐ろしい話で、幼児期に雪が降ってくるのを待ちわびているのとおんなじ了見でいろんな男と寝てるんだとすると相当動機が幼い。が、そういう幼さを別に書きたいわけでもなさそう。
しかもアレよ、そうすると、この語り手はいくつなんだろう。<年齢を重ねるごとに少しずつ臆病になって>というのがヒントになると思うが、十代後半からあれこれあって20代半ば、とも読めるし、二十代は男をとっかえひっかえ性を謳歌しまくりからの三十半ばにも見えるし、子供も手がかからなくなってから不倫にうつつを抜かすもっと上の世代にも読める。
あと、<四歳のころ、雪のほとんど降らない土地に引っ越した>という地の文があって、また次の一文で<やがて雪が強くなってくるとワクワクした気持ちは最高潮に達し、歌いながら仔犬のようにはしゃぎ回った>って、雪のほとんど降らない土地に引っ越したのはいつの時勢なのかしら。あまりにもグチャグチャすぎて雰囲気で押し切るにしても無理がありすぎる。その場の勢いで肉弾戦に押し切るには、ちょっとぶくぶくのだるだるであまりにも不摂生じゃあありませんか、みたいな。そういう話。共感以前に理解に苦労する。
「青猫(後略)」
もう飽きてきたけど風呂好きで男友達のいないバイオリン男とかが出るまで頑張りたいと思います。
「彼岸」
自分にとってやや特別な存在だった男の子がある日、他の客と同様に橋をわたってマリンパークに行き二度と戻ってこなかった。この「他の客と同様に」および「二度と戻ってこなかった」が文学的余韻である。で、なんとなく心に空いた穴を描写するのが小説の仕事のひとつ。この感慨を「文学してる」と動詞で顕す文芸批評家もおったとか。この辺のささやかな喪失感を描けた時点で小説としては成功しており、「面白いねえ」というよりも「お、仕事をしましたな」という塩梅の評価となる。タイトル含め死の隠喩にしてもいいけどしなくともよい。
投票、どっちってったって選択肢は2つしかないので「彼岸」にする。
「棄てる金」
心情のむつかしいところをむつかしいまんま描けるてなぁ勇気がいるねぇ。
投票者: このバトルへの参加作者
感想:自分はアレシア姐さんのファンなので、作品を読めるのは
とても嬉しい。
3000文字を読み終えて、あらためてタイトルを見ると
何故か胸にじーんと(じゅんっ、ではなく)染み入る感じ
があった。
そこが良かった。
「青猫ロボットの増殖」
栗まんじゅうのくだりで、ちょっと読むのがしんどくなった。
それはもしかしたら、読解力のない自分が悪いのかも
しれません。
投票者: このバトルへの参加作者
感想:1.六花
場面切り替えや、心情の変化、それから、最後にしっかり話を回収するところは素晴らしいです。
正統派という言葉が、この作家さんには、相応しいです。
2.青猫ロボットの増殖
原作にはまった世代としては、こういったパロディーをしてもらえるのは、嬉しい。
ところどころ吹き出したところもあり、力あるなぁと思わされました。
3.彼岸
のっけから、主人公を客観視しているところから、上手いなぁ、と思いました。
なんにも起こらない退屈な時間に、アレよアレよ、と吸い込まれていった感じがします。
今回は、アレシア・モードさんですね。これだけのものを頭の中だけで、作り上げる才能はすごいと思います。
投票者: その他のQBOOKS参加作者