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第2回6000字小説バトル Entry1

Freedom School

秋穂は、バスに揺られていた。
ガタゴト ガタゴト
「次はー、浜口小学校前〜、浜口小学校前でございます」
アナウンスが流れる。
ピーンポーン。
バスの車内に音が響き渡った。
キキィーッ ガタン
ドアが開いた。
秋穂は、座席からひょいと飛び降りると、ドアから外へ飛び出した。
プーッ!
ドアが閉まる。

僕の名前は佐川 秋穂。
浜口小学校の6年生だ。
結構内気な性格で、周りからはガリ勉と呼ばれているが、
スポーツも結構できるので、嫌われてはいなかった。

気分を晴らすため、空を見上げると、真っ青できれいだった。
雲ひとつなく、乾いた空気で、最高の日・・と、秋穂が感じた時!
「カーカーカーカー・・」
からすが秋穂の頭上を通り越した。
しかも、13羽。
「何でこんなにたくさんいるんだよ・・」
つい、秋穂は口に出していってしまった。
13羽・・ 黒いからす・・
考えただけで秋穂はブルッと身をふるわせた。
どっちも不吉じゃないか。
しかし、秋穂はそんな憂鬱な気分を晴らすため、笑顔を浮かべ、
校門から学校の中へと入っていった。
しかし、その不吉な気持ちは、間違っていなかった事になる。

校舎には行った秋穂は愕然とした。
室内履きの靴を履くと、いきなり生卵をぶつけられたのだ。
「佐川!てめえは、いつもいい子ぶってムカつくんだよ!」
「ガリ勉佐川!」
生卵が髪の毛の上で割れて、卵パックになってしまった。
仕方がないので、頭を洗って保健室へ行き、タオルをもらって頭を拭いた。
「へっくし!」
秋穂は派手なくしゃみをした。
「大丈夫? 佐川君。いじめかしらねえ」
保健の女の先生が言った。
「へっくし! 大丈夫・・へっくし! です。へっくし!」
秋穂は眉をひそめた。
今大丈夫です。って言ったのに、もうくしゃみしてるじゃないか…。
「さあ、頭をふいたら教室へ戻りなさい」
保健の先生に促され、秋穂は6−B…秋穂のクラスへ戻った。

クラスへ戻って、教室のドアをあけた秋穂は、再度驚いた。
今度は、黒板中に「佐川のバカ!」「死ね」「ガリ勉野郎」などと、所狭しと書いてある。
秋穂は、首を横に振ってため息をついた。
こんな事に頭を使っている暇はない。
いきなり、なんなんだよ…
「静かに!…あらっ」
秋穂のクラスの担任、三重日彩先生がカツカツと、足音を立てながら入ってきて、黒板を見て目を丸くした。
「誰です! こんな事をしたのは!」
先生は目を三角にして怒った。
ドン!と、プリント、教材類を教卓に置くと教卓に手をついた。
「佐川君、なにかおかしな事…いつもと変わった事とかいじめとかした覚えありますか?」
先生が秋穂の目をまっすぐ見つめていった。
「心当たりはまったくありません」
「そうですか。何の気持ちがあって、佐川さんにこういう事をやったかは先生にはわかりません。しかし、こういう事はあってはならない事です。今日やった人、今度からはやめなさい。見苦しいですよ」
クラス中をグルっと見回して、先生は言った。

先生の言葉は、無駄だった。
最初のいじめ事件から、1週間たった今、いじめはエスカレートしている。
服を隠されたり、暴力をされたりということだった

いじめを受け始めて2週間と5日たった、月曜日の学校帰り、秋穂の人生が変わるような出来事が起ころうとしていた。
秋穂は、また暴力を受け、体をあざだらけにして帰っていた。
「はぁ…疲れるなぁ」
秋穂は、今じゃ校舎の壁や、家の塀に寄りかかりながら歩いていかないと歩けないほどまで衰弱していた。
そして、学校から300メートルほど歩いた所で、秋穂は気づいた。
自分と反対側の人の家の塀に、1人の女の子が腰掛けて足をぶらぶらさせ、こちらを見つめているのを。
「君…」
秋穂は女の子に声をかけた。
しかし、女の子は塀を乗り越えると、足音を立てて、逃げ去ってしまった。
秋穂は首をひねったが、あまり深く考えなかった。
今は、いじめの方がひどいんだから…

しかし、次の日も、その次の日もまた女の子は現れて、秋穂が声をかけると逃げ帰る。ということを繰り返していた。
そして、次の金曜日になると、秋穂はしっかりと給食を食べて、力を少しでもつけた。
今日は、あの不思議な女の子を追いかけようと思ったのだ。
ちょっと、ワクワクしながら、しかし、変な所に迷い込まなきゃいいなあ…そんな不思議な思いをして、例の場所についた。
例の場所に、女の子はいつものようにいた。
秋穂は今日はなにも言わず、塀に近づいて行った。
そして、秋穂は塀に上り、腰掛けた。…瞬間!
女の子はひらりと塀の後ろ側に飛び降り、いつものように駆け足で行ってしまった。
「あっ!」
秋穂は叫ぶと、どてっと草原の上に降り立った。
ザザッ
中側は草原だった。
結構いい感触じゃないか。秋穂はそう思ったが、そんなこと思ってる暇はなかった。
女の子の足は意外に速くて、もう50mくらい先まで行ってしまっていた。
ダダダダダッ
秋穂も駆け出した。
秋穂は、実は足も50m走7秒というから、結構速いもんだった。
ザザザザッ
ぼうぼうにのびた草が、秋穂が走るのをさえぎってなかなか上手く走れない。
しかし、秋穂は考えた。
「僕が走りにくいなら、女の子だって走りにくいはず」
そう思い直して、秋穂は足を少し速めた。

だんだん、道が開けてきた。
草ぼうぼうの荒地から、赤茶げた土の上を走るようになった。と思うと、土の道は意外に短く、あっという間に木にかこまれ、森の中へ入ってしまった。
秋穂と女の子は走り続ける事約15分。
森が終わって、緑色が秋穂の目に飛び込んできた。
(また、森・・?)
そう思った秋穂は、周りをよく眺めた。
すると、目の前には木造りの学校の建物のような場所があった。
「足、速いじゃん。結構ひ弱そうに見えたけど。」
女の子がはあはあと息を弾ませて、草地の上にへたり込んで座っている僕を見下ろしていった。
「どうして、いつ…も逃げて…たんだい?」
僕は質問をぶつけた。
「そんなこといいじゃない。私、香魚。よろしくね。アンタは?」
秋穂はにっこり笑い、はなした。
「僕、佐川秋穂。よろしく。ねぇ、一体ここはどこなんだい?」
秋穂は、周りを見回して言った。
「ここはいじめを受けて、行き場を無くした子供達が通ってる、寮制学校よ」
香魚がいう。
「じゃあ、香魚ちゃんもいじめを受けてたのかい?」
「私は違うわっ 違うけど、通ってるのよ。ここの学校に」
「何でだよ? 香魚ちゃん」
不思議そうな顔をして秋穂が聞いた。
「あのね、秋穂…」
香魚が話し始めたのはこんな内容だった。

香魚も前は普通の学校に通っていたそうだ。
香魚は一切受けなかったものの、その学校はいじめの嵐が吹き荒れていた。
両親は「いじめなんてとんでもない!」といって、他の学校へ香魚を転校させたが、その学校もいじめの嵐。その次に転校した学校も、その次もいじめばかり起こっていた。
両親は我慢がならなくなった。
「もう、私達が学校を作ってあげましょう。いじめを受けた子が、行き場を無くし、自殺や引きこもりに発展しないように、いじめを受け、行き場をなくしたこの学校を作りましょう! 香魚もそこに入れるのよ!」
…と、両親はいろいろな人と話し合い、結局、この森の奥に学校を作り上げてしまったそうだ。
そして、森の奥まで町から通うのは大変なので、寮制にしたそうだ。
そして、香魚もそこに入れた。っという事らしい・・

「それでさ、この学校の名前はFreedom Schoolっというのよ。」
香魚が、ふふんと鼻をならし、秋穂を見た。
「ねえ。香魚ちゃん、フリーダムって、どういう意味?」
「ああ、Freedomの意味がわからないのね。Freedomっていうのは、自由って意味よ。自由学校、って意味…」
「じゃあ、なんでも自由にやっていいの?」
「そういうことじゃないわ。自由にのびのびとみんな暮らしているわ。」
Freedom Schoolの話を香魚と秋穂は少しした。

そして、秋穂はさっきから聞きたかったことを聞いた。
「ねえ。何で僕をこのFreedom Schoolに連れて来たの?」
香魚は、ちょっと考えてから言った。
「秋穂、いじめ受けてるでしょ?全身あざだらけよ。」
「いじめを受けて、行き場を無くしたと思ったの?」
「そういうんじゃなく、秋穂がFreedom Schoolに来たら、楽しいだろうなって思ったのよ」
「えっ?」
秋穂は、香魚のいった意味がよくわからなかった。
「ねえ、秋穂。いいじゃない、ここで生活しましょ」
「でも、親に転校するって言わないと…」
秋穂は目を泳がせた。
「いいのよ、親なんて。お母さん…私のお母さんはなにも言わないわ。授業料はいらないし、服や教材だってお母さんが作ってくれるもの。」
「…でもぉ…」
秋穂は、また悩んでいる。
そりゃあ、誰だっていきなり「私の学校で生活しましょ」なんて言われて、決められるもんじゃないと思う。
「なんなら、私のお母さんに会ってみてよ」
香魚は、秋穂の手を引くと校舎の中へずんずんと入っていった。

会話もなく、ついた所は「先生の部屋」と看板がかかった所。
コツコツ。
香魚は、その扉をノックした。
「香魚です」
「はーい、どうぞ」
甲高い声が中から聞こえた。
「香魚、どうしたの? あら、新しい生徒さん?」
香魚のお母さんらしき人が、秋穂を見て言った。
「お母さん、この子さっき、会ったの。」
香魚が前に秋穂を押し出した。
「あっ 僕、佐川秋穂です。どうも…」
ペコッとおじきをする秋穂。
「ねぇ、お母さん!秋穂さあ、Freedom Schoolにぴったりじゃない!?」
香魚が興奮していった。
「香魚。そんなにあわてるものじゃありません。だいたい、秋穂君はいじめ受けてるの?」
「受けてるよねっ」
香魚がニコニコしていった。
「香魚は黙って。私は秋穂君に聞いてるの」
そういって、香魚の母親は秋穂に視線を向けた。
「はい、いじめを受けてます」
秋穂は信じられなかった。
香魚の母親に見つめられると、隠し事が出来ないように、言葉がするりとのどを通って出てくる。
「そう。じゃあ、私の学校に入りましょ。これが、名簿よ。って言っても、全校で24人しかいないんだけどね… これが、寮の部屋割り。秋穂君は…」
「ちょっ。ちょっと待ってください!」
秋穂は、止めないと暴走しそうな香魚の母親を止めていった。
「本当に、いいんですか?授業料とか…」
真剣な顔で香魚の母親を見つめて秋穂は言った。
しかし、香魚の母親は、
「いいのよ、そんなもの。私たちはボランティアでやってるようなものだから、お金は一切取らないの。私やお父さんを親みたいに思ってくれていいわけ。秋穂君、変な心配しなくていいわ」
秋穂は、「変な」心配ってよく分からなかったが、もう、秋穂の心の中で答えは固まっていた。
「わかりました。この学校に入ります」
秋穂は、香魚と香魚の母親をしっかりと見ていった。
「じゃあ、香魚。案内してあげなさい」
「はーい、お母さん」
「お母さんじゃなく、先生!」
ぴしゃっと、香魚の母親…先生が言った。

秋穂が香魚に連れられて案内された所は、寮だった。
「秋穂の寮は…なんだ、2回の1号室か。あのね、同室の子、すっごい、いい子だよ」
香魚は、寮の部屋の前まで秋穂を連れて行くと、走り去っていった。
「私は、4階の3号室だから」
香魚は階段を駆け上がっていった。
「失礼しまーす」
秋穂はがたっと木造りの扉を開けて、部屋に入った。
部屋は整理整頓されていた。
ベットの上もきれい、机の上もきれい、窓も少し明けて空気の入れ替えをしている。
「君、誰?見かけない顔だけど。ノックしてよ、入る時は」
部屋の中には茶色い髪の毛の男の子がいた。
「こんちはっ。僕、佐川秋穂っていいます。Freedom Schoolの新入生です。ここの部屋なんだ、よろしく」
秋穂がペコッとお辞儀をした。
「なんだ、新入生か。僕は、瑞樹洋平。よろしく」
洋平は腰掛けていたベットから立ち上がって秋穂と握手をした。
コツコツ。
「はーい」
洋平が返事をする。
「秋穂君っ 君の服よ。着終わったのは、先生の部屋にもって来てね。じゃあ、時間割は洋平君に聞いてちょうだい」
先生は、いきなり入ってきて言うだけ言うと、あわてて出て行った。
「先生は、いっつもいそがしいんだよ。着替えたら?」
洋平がうながした。
秋穂が着替えようとすると洋平がじっとこっちを見つめている。
「なっ なに? 僕がどうかした?」
秋穂があわてて言うと、洋平も慌てて返した。
「あっ ずいぶん、秋穂君は華奢だなあと思って・・」
「まっ いろいろ事情があってね。・・」
秋穂と洋平は、いろいろな事をしゃべっていたらあっという間に1時間もすぎてしまった。
「あ、そろそろ、ミーティングが始まるよ。5時からはミーティングなんだ」
洋平と秋穂は立ち上がって、1回へと降りていった。
ミーティングルームと札のかかった部屋に入って行くと、他に25人ほどいた。
「はい、全員そろいましたね。新入生を紹介します。秋穂君!」
「はい!」
先生が甲高い声で言ったので、つられて秋穂も大きな声で返事をしてしまった。
「佐川秋穂です!よろしくっ」
「わ〜い!」
秋穂が自己紹介すると周りから歓声が上がった。
秋穂は、ここで上手くやれるような気がしてきた。
秋穂と洋平はFreedom Schoolの中で、1番の仲良しとなった。
そして、授業の内容は、普通の学校と同じだった。
しかし、話し合いの時間は他の学校より多いし、
休み時間だって多い。
授業が延びれば、休み時間に入ってものびている。
とにかく、「Freedom」な学校だ。
そして、楽しい時は過ぎ、秋穂が入学してから1ヶ月と半月が過ぎた。
「秋穂! お前、僕の日記読んだだろ!」
「ええっ 洋平。君の日記なんて読んでないよ!」
「言い逃れするなよ、僕が席をはずしたあと、閉じてあった日記が開いてたんだからな」
「風がやっただけでしょ? この部屋の窓はいつもあいてるんだから」
「秋穂!」
「もう、やめて!」
バターン!
秋穂と洋平が派手な喧嘩をしていた。
そこに、香魚が飛び込んできた。
「もう…やめて」
ふらっ
「あっ 香魚ちゃん!」
「香魚!」
香魚がずるずると倒れた。
そして、香魚は意識を失っていた。



ピッピッピッピッ…
「んん・・」
点滴を香魚はされていた。
「洋平君、秋穂君、香魚はひどい病気だったのよ。一時は治ったと見られていたんだけど、少し病院に行かない間にこんなに病態が悪化するなんて…」
「お母さん、秋穂、洋平…」
「秋穂。秋穂、私が良くなったら、未来、一緒にFreedom schoolの学園長しよう。後継ぎの男、探してたん・・ん?」
香魚がいきなりむせ始めた。
「看護婦さんっ」
香魚の母親はさっと青ざめて看護婦を、探しに行った。

そして。
1時間後、香魚は命を引き取ったそうだ。
死因は呼吸困難。
香魚は肺の病気だったそうだ。
香魚は、気づいてなかったようですが、秋穂をすきだったようです。
秋穂も香魚が好きでした。
香魚が「学園長しよう」と言ったのは、結婚しよう。という意味もあったのかもしれません。



秋穂はしばらくして夢を見た。
香魚と一緒に生活している夢を。

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