記念すべき第1回6000字バトルチャンピオンは、
やす泰さん作『女菩薩浄土』に決定しました。
おめでとうございます!
投稿頂いた作者の皆様、並びに感想票をお寄せいただいた読者の皆様、
ありがとうございました。
やす泰さんへ:優勝賞品の図書券をお送りしますので、宛先をinfo@qshobou.orgまでメールにてお知らせ願います。
# | 題名 | 作者 | 点数 |
---|---|---|---|
19 | 女菩薩浄土 | やす泰 | 6 |
13 | 路地 | 林徳鎬 | 3 |
15 | 雨模様 | Ruima | 3 |
3 | 昼下がりのペンギン | 森岡拓也 | 2 |
5 | 心の川 | 有馬次郎 | 2 |
16 | ドーパー | 羽那沖権八 | 2 |
22 | butterfly sameplecase | 隠葉くぬぎ | 2 |
6 | replay(1989) | 谷本みゆき | 1 |
8 | 家族の朝 | Lapis | 1 |
11 | ガギグゲゴ症候群 | 上條 裕 | 1 |
21 | Red-Bell | さとう啓介 | 1 |
23 | 黒白の刻 | 各務守一 | 1 |
10 | 地底怪人の夜 | のぼりん | 1 |
まず伝えたいのは皆さんの御健闘に対する敬意の念です。参戦した方々の数だけ、物語もあり、またそれぞれに違ったジャンルや独特の文学構造を持ち合わせておいででしたので、選出にはとても頭を悩ませました。
今回、やす康さんの作品を推奨させていただいたのは、まず“本格的”な作品であった事です。
そもそも“死”とは多くの作家が求め続けてきた永遠のテーマであり、全ての生命が過去経験してきたのにもかかわらず、誰一人として経験することの出来ないとても哲学的なテーマなのでして、今回やす康さんは、“植物状態”という、近代ならではの特殊な“生と死の狭間”をテーマに用い、そしてそこから一歩踏みこんだ死を、かくも甘美で官能的な現象として象徴されており、この作品は真に優れた経験を以って書かれたものであると認識するに至ったわけです。
もう一つ推薦の理由を述べますと、ページ数が足りなかったのだと思いますが、最後の部分の情景が私にとっては少し掴みづらかったと言うところもございましたが、前半は良い意味で“改善の余地無し”と判断致しました事によります。
追伸。最後に、『雨模様』Ruminaさん、『地底怪人の夜』のぼりんさん。いいね!すきよ、こういうの!!(母談)だそうですので、これからも頑張って自分のテイストを育てていってください。
さすがにいずれも力作ぞろいで、とても迷いました。
私なりに、文章・構成・自分の好みを考え合わせた結果、
「女菩薩浄土」「ドーパー」「黒白の刻」
の3作品が抜きん出ていると思われました。
中でも「女菩薩浄土」は、生きている人間ならば
想像の中だけでしか体験できないであろう<死>が
説得力のある形で表現されていて、とても読み応えがありました。
惜しかったのが「おちこぼれ魔道士の憂うつ」。
言葉の並べ方にリズムがあって、無駄な修辞も無く、
読んでて大変きもちいい良い文章だったのですが、
肝心のお話のほうのバランスが悪いのが残念でした。
(メインの話が短すぎだと思います)
6000字バトルはかなり読みごたえのある内容で、良いものについては「もう終わってしまった」と思い、そうでもない作品は「長いな。」と単純に思ってしまいました。その良いと思った作品「心の川」「最後の都市」「雨模様」「ドーパー」「女菩薩浄土」「影」の6作品です。これはまず内容が”好きだ”と思ったものです。この中から選ぶとすると、なかなか難しいものがありましたが、悲壮的な内容なのに、なぜか安心して読み終えた感じが、やはりこの作品の良さだと思いました。
静かな「性」を感じました。過激な「性」が多いなか、男性攻撃型がほとんどのなか
男性が受身なのもめずらしく、さらさらと読んでしまいました。男性全体の願望で
しょうか?このような旅立ち方は。
細かい部分で気になるところはあるのですが、全体的な構成と引きつけられる文章表現が魅力でした。
映画「American Beauty」みたいな雰囲気が良いと思いました。
色んな意味で生々しいのも○
好きです。
私、すぐに黙っちゃうほうだけど、がんばって伝えようと
思いました。
ふたりの間が磨り減っていって終わるなんてゆうのは
もういや。
わたしがんばる。
なんとなく主人公と自分が似ているような気がしました。そういうわけで、印象が強かったです。それに、単純に好き嫌いでこの作品が一番好きだな、と思いました。
面白かったのは、以下の三作品です。
*林徳鎬さん「路地」は、身近な風景から七不思議を作るところに面白みがあった。始めから終わりまで、小説としてきれいに収束していたことも評価したいです。ただし、どこかで読んだような文体は気になりました。もともと独自のいい感性を持った方だと思います。今後に期待します。
*森岡拓也さん「昼下がりのペンギン」も、「路地」とよく似た作風でしたが、ペンギンの仕草など、いろいろ想像して読み進めるのが楽しかったです。しかし、情感という点では「路地」よりも浅かった。
*上條 裕さん「ガギグゲゴ症候群」は、導入部分が特に好きです。共感しました。のっけから話の流れに読者を乗せて、どんどん進めていくのも上手い。最後の部分が分かりにくかったのが惜しまれます。
いいなーと思うのがたくさんあって、困ってしまいましたが、
読んでいてとても心地良かった「雨模様」に決めました。
あと良かったなと思った作品と感想
岡部健吉さんの「階段」・・・流れや話は好きだったのですが、終わり方が
なんとなく、もうひとこえ、欲しかったです。
個人的に。
谷本みゆきさんの「replay(1989)」・・読みやすい文章でした。展開がすこし
魅力に欠けました。
芥川かげろうさんの「最後の都市」・・投票作品と最後まで迷った作品でした。
内容的にも文章もとても好きです。
最終的に今回は読後感が明るくなった
作品を選んだだけで、優劣つけがたい
作品でした。
Lapisさんの「家族の朝」・・・ひとつの切り取られた現実でした。
現実を感じながらなにかそこに作者の
魅力?み魅力?みたいなものが欲しかったです。
羽那沖権八さんの「ドーパー」・・・スピード感、文章ともすごい作品でした。
ただ、内容についていきにくかったので…。
「雪姫」、「黒白の刻」、「Red−Bell」も割と好印象でした。
雰囲気が好きです。
現実かファンタジーかって聞かれたら、現実だけど、
でも現実にはないような不思議な雰囲気が漂ってる。
笑いもテンポよく入っていて、読んでてあきなかった。
雨が降ると世界がきらきら光るのか、そうか、知らなかった。
でも冬の雨は寒いから、嫌い。(笑い)
他にもうまくて良い作品もあったけど、好みで選びました。
非常にきれいで優しげな小説だと思います。
読みやすい!軽快なテンポで話が進んで行くのでアッと言う間に読んでしまい
ました。それこそ真夏に氷水を一気に飲み干したようなすっきりとした後味で
すね。
実は『……ここだけの話ですが……』以前から、私もマンボウには『何かある』 と睨んでいました。
年に一度働くペンギンさんがかわいかったので、投票します。
ペンギンの進化論ならぬ退化論。とてもおもしろい発想だと思いました。ペンギンの一挙一動も思い描くことができました。
ただ、年に一回でいいなら、別に暑い思いまでして夏に来ることもないと思ったのですが。でも冬に来てもおもしろくないですよね。
有馬さんの表現、文章は いつも 生き生きと光っている印象を受けます。今回も
ぴか一だと思い、1票入れさせて頂きます。かねがね思っておりましたが、有馬さんのペンネームは アルマジロとは 関係あるのでしょうか。
他には 7「最後の都市」芥川さん、10「地底怪人の夜」のぼりんさん、16「ドーパー」羽那沖さんは、独自の世界を確立されつつあり、イチ押し。3「昼下がりのペンギン」(森岡さん)も好きです。この場合はフンボルトペンギンより 皇帝ペンギンでしょうね。小生の11「ガギグゲゴ」も目の付け所は悪くないと思います。
あと 気になった事は、9「愚」(東さん)の中に出てきた「駄菓子菓子」(だが、しかし)は 面白かった。22 「BUTTERFLY SAMEPLECASE」(隠葉さん)スペルが
違うのでは。
以上
読みやすかった
「ドーパー」は、読んだ後、最も印象に残っていた作品です。熱くてちょっとせつなくて、でも読後感がとても爽やかだった。好きです。
他にいい意味で印象的だった作品は
「心の川」(雰囲気が綺麗でよかったです。)
「最後の都市」(ラストが印象的でした。)
「butterfly sameplecase」(物語の中の優しい空気が好きです。)
の三作品です。
6000字のように長いと、読みやすさがかなり重要かな、と思わされました。
6000字という、いささか長すぎる感のある作品群の中で、短い!と思えるほど完成されていたと思う。最高でした!
なにも考えずにだらだらと作品を消化するためだけに読んでいるところへ、ババーン、ときました。お、と思ったら「羽那沖権八」
流石だなー、と思わされましたね。
大きく広げた風呂敷を、上手く畳めていない作品がちらほらと見受けられた。
当バトルが2回、3回と続くうちに、長さに慣れ、こなれてくるとは思うが。
その中で本作は、無難と言えば無難な線だが、微笑ましい恋愛ものとしてきっちりと仕上がっている。ラストの情景がよく目に浮かぶ。
微妙な二人のやりとりが巧く描けていたように思う。好印象。ムリに物語を作ろうとしない、自然さがよかった。
初めて全部隅々読んで、感想を書く。私が良いなと思ったのは以下の作品でした。
3、昼下がりのペンギン−森岡拓也さん
ペンギンのキャラが良かった。でも、私だったらあのペンギンの話を最後まで聞いてはいられないだろうと思いました。
4、階段−岡部健吉さん
文章全体に一種の奇妙さが感じました。そこに惹かれた部分もあったし、ラストが私的には良かったです。
6、replay(1989)−谷本みゆきさん
蓮根に関わる全ての人間関係を上手く描写されていて、良かったです。蓮根と水嶋のやりとりが面白かったし、蓮根の男としての気持ちが大変凄く表現されている所が好きでした。
7、最後の都市−芥川かげろうさん
鬼塚が最後まで悪党を貫き通した所が好きだった。
9、愚ー東みやさん
二ヒルとかペシミストという言葉が使われていて読むのに苦労しましたが、フミ子と彼のやり取りが面白かった。
ラストが、どうかな?って思ってしまったけど最後まで面白かったです。
11、ガギグゲゴ症候群−上條裕さん
現実的、そしてリアリティーがあって読みやすかった。
16、ドーパー−羽那沖権八さん
音速を超えようとする情熱に惹かれました。
17、おちこぼれ魔道士の憂うつ−黍盛器さん
この作品だけに使われる独特の単語に説明をつけている所に好意を持ちました。それにきれいに段落分けされていて読みやすかったし、猫である使い魔と主人のやり取りが面白かったです。
19、女菩薩浄土−やす泰さん
「私」の死期が近づいている痛みや苦しみが上手く表現されていて、こちらまで痛みが伝わってくるような臨場感がありました。
ラストの「私(父)」と娘のやりとりが好きでした。
20、影−摩宮理久さん
登場人物に名前がふってある所に好感が持てました。五つで構成されていて読みやすかったです。最初は主人公の由真に腹立たしい気分になったけど、それを山倉さんのキャラが打ち消してくれました。
全部読み終わって、やっぱり他の人々の作品って凄いなあと感じてしまいました。この中で、推薦したい!と言う事ですごく迷った作品は、6−replay(1989) と17−おちこぼれ魔道士の憂うつでした。
最後まで迷った結果、私はreplay(1989)を推薦致します。
Lapisさんの「家族の朝」を推します。
暴力をふるう父が出てきたので、これはてっきり DV(ドメスティック・バイオレンス)を扱うのかと思って、ドキッとしたのですが、そうでもなかったようです。でも、たぶんLapisさんはその辺のテーマを追えるだけの下地を持っているのではないでしょうか。ですから、今回で終わらず、この作品をもっと掘り下げて欲しいんですね。そんな勝手な期待を込めての推薦です。とにかく、とても気になった作品でした。
今回は特に突出した作品はなかったと思う。唯一面白いと感じたのが、「ガギグゲゴ症候群」です。推薦作品は迷うことなく消去法でこれに決めました。ストーリーがよく練られていて、完成度が高かったのでこれを選びました。嘘の話だとわかっているのにリアリティがありました。最後まで飽きずに読めたのはこの作品だけだったと思います。
僕は、「Q BOOKS」の中でもミドルクラスの6000字を今回初めて読みました。
僕の推薦作品は迷わずに「Red-Bell」です。
若き日の純情がせつに蘇ります。話の展開にふくらみがあり、セピアカラーの映像を楽しみました。この作者の一貫した作風の中で、「Red-Bell」という作品は秀逸だと思います。
すごく、不思議な話で良かったです。
初め読んだときは少し分からなくて「え?」と思ってしまいましたが、なんだか切なくなるようなお話で感動しました。
面白いです。
こんくらいの長さでこういうコメディーみたいなの書く人好き。
物語の進行が短い時間内に行われるのもいいと思う。余分なの書かなくていいし。
リラックスしたかんじが今回のバトルの作品群に少ないってのもあるけど、
楽しめて読めたので推薦です。