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Q書房・第6回1000文字小説応募分
「挿し話で楽しむ遊ぶQ書房」 >
 
 
  僕の拡張的人生

                   
★入社早々派閥争いに巻き込まれ、僕はいきなり遊星ξに左遷され
た。ξは毒粉塵と毒光線渦巻く人外な星で、気力喪失目的の前時代
的労働が用意されていた。ここに僕の拡張は始まる!

★肺の触媒と網膜フィルターが赴任当初の標準仕様だった。三日目
には事故で失った両腕を機械に換え、腹背筋も強化してやった。胃
と肝臓は、事故ではないが半月で潰れた。やがて荷重に耐えぬ足腰
をキャタピラに換装、念のため心臓も換えた。この時点で僕の活動
源は電力の占める割合が上回り、代謝系が簡略できた。自重1トン
のお陰かゼロ近い体脂肪率を自慢するも周囲の反応は冷淡だった!
「お前バカ?」

★常に僕は前進を好む。他の連中は概ね働かない事で劣悪な境遇の
慰めとしていて当然停滞していた。だが僕は拡張の道を選んだ。こ
こまでの改造費は殆ど自腹を切ったが、自己投資というものだ。こ
れを会社が評価したのか否か、僕は昇進を許された。風向きの変化
を感じた僕は、次いで頭脳容量の増強に着手した。正確で忠実な拡
張記憶の使い心地は、仕事を一変させ僕を驚かせた。内部増設も限
界に達すると僕は全社通信網へと進出した!

★そこで僕は便利なエージェントの存在を知った。それは知覚情報
を僕に送る小型感覚器で、無人ロケット便で飛ばせば遠方の星でも
居ながらに迅速に出張でき、そのまま駐在もできる。さらに、機構
装置を全く伴わない仮想エージェントがあり、これは回線内を自在
に移動し、仕事もある程度自身で処理してくれる電子の部下とも言
えるプログラムだが、肝心の僕の処理能力が見合ってなければ持ち
腐れだ。新たな限界を感じた僕は迷わず脳神経網を光結晶化し、意
識を回線内に移行展開させた。これで機械の体は意味を失い、殆ど
が廃棄された!

★業務拡大に伴い僕はエージェントを追加していった。それが数百
に達する頃には、僕は個人名よりは「第28調達部」と集合的に呼
ばれていた。「第41事業部」という女性を知ったのもその頃だ。
彼女も広範に部下を展開していて、氷の星やら砂漠の星、宇宙船操
作卓、カードの中なぞで1ピコ秒に2メガ回ほど互いに接触した末
に、僕らはすっかり恋に落ちている事に気付いたのだった!

 という事で。
 今、花束に囲まれた50センチ四方の新居では、僕の唯一残った肉
体が、――勃起してます(^^;)
 そこへ億万の電子喝采の中、彼女自身は入場するのです。白いベ
ールのウェディングパッケージに包まれて。



※99/10/4 改変 8行目「この時点で私の」→「この時点で僕の」


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 著作者   蛮人S   mail:banjin-s@gorakken.net