或る異星人のリポート

                              
 よく知られている様に、この星の住民の特色は元来未発達なその
能力の技術的補完に長けている点にある。その成果として、生物学
的には典型的な物理層2種であるにもかかわらず、亜精神層ともい
える疑似世界の形成に至っている姿は非常に艶っぽい。我々は彼ら
の本来の基盤たる世界を第一世界、新たな亜精神層を第二世界と呼
んでいる。後者は彼らの言葉では、インターネット等の呼称が与え
られている。
 それぞれの世界は、現時点では論理的にほぼ独立した存在である。
第二世界は、本来第一世界における物理的制限を補完すべく生まれ
たものであるが、その設計者の意図に反し、寧ろ彼らの精神的制限
を補完する目的として発展を見せている。しかし彼らの技術史をみ
れば、それ以前の他技術の発展においても少なからずこの現象が見
られるのだ。私は、これこそ彼らの究極の目的ではないかとさえ考
えているが、奇妙な事に彼ら自身はこの事実に否定的なのである。
実に、実に扇情的である。
 彼らは概ね、自己発現と事象の記録に対する強い欲望を潜在的に
有している。第二世界において彼らの必ずしも全てがその衝動を律
していない事は、我々星間文化研究者にとってこの上なく蠱惑的と
言えよう。なぜなら第二世界における彼らの存在は、第一世界での
体現を拒んだ素性、または禁じられた素性に基づく場合が多く、今
まで行われてきた第一世界のウォッチングでは得られ難かった資料
を制約無く入手出来るからである。無論その格差自体も、実に胸の
高鳴りを抑え切れぬ艶っぽさである。
 彼らは第二世界の精神的補完を、第一世界からの逃亡と見なし批
判的になりがちである。しかし彼らの二重性が今後とも失われる事
の無い彼らの本質だという分析は、この星の精神的媒体を調査し続
けている好事な研究者の間では定説となっている。
 彼らの中には第二世界への完全な移行を目標としている者も少な
からず見受けられるが、未だ全てを移行できるには至っていない。
彼らの現在のアーキテクチュアレベルではこの辺りが限界であろう。
しかしその今後の変容を予測する事は、極めて魅惑的な作業といえ
よう。もはや正直、私も劣情を禁じ得ないのだ。
 このように「第二世界」はこの星の研究者のみならず、星間文化
にアピールを感じる多くの人にとって定期的に観測する価値を有す
るだろう。直ちにこの星をあなたのブックマークに加えること、強
くお勧めする(ヌケる度★★★★)。






<  戻る