ロボット刑事

                              
 いつものように捜査課のドアを開けると、奇妙な違和感が俺を捉
えた。理由はすぐ判った。部屋に音楽が流れているのだ。軽快で、
爽やかで、心を和ますような音楽。刑事部屋ってのは本来かなり殺
伐としていたんだな、と逆に感心する。
 見ると俺の席の近くに人だかりがある。何かを囲んでいるようだ。
課長の姿も見えた。
「お早うございます」
「ああ、お早う」課長は挨拶を返すや視線を戻した。そこには身の
丈ほどある、見慣れぬ大きな機械が置かれていた。音楽はこの機械
から流れているようだ。
「これ、何ですか?」「うむ、今日から試験配属されたロボット刑
事Fだ」
「・・はあ?」
「今日から君と組むロボット刑事Fだ」
 突然機械が動きだし、二個のランプが明滅する顔のようなパネル
が、ギイと鳴って俺の方を向いた。思わず身を引く。
「ヨロシクオ願イシマスヨ。先輩」
「喋った」
「当然だ。彼は警察官をサポートするため開発された最新ロボなの
だ」
 課長は機械の肩を叩きながら、誇らしげに説明する。俺はこんな
やつ指も触れたくない。
「・・課長は以前からこれの事をご存じだったのですか?」
「いや、今朝はじめて知ったよ」
 見回すと、みんな微笑みながら頷いている。いつも仏頂面のタニ
さんまでが、作りもののような笑みを浮かべている。不気味だった。
「ああ、その、この音楽・・気持ちいいですねえ」
「それだよ」課長は意味ありげに指を立て、片目を閉じて見せた。
珍しい仕草だ。
「これは『朝のテーマ』だ。彼は状況に応じて適切な音楽ディスク
を入れてやることで、最大の能力を発揮する。音楽が人の心に作用
するようにね」
「人間が入れてやるのですか?」
「イエス。私ハ判断力ヲ持チマスガ、ヤハリ最後ノ決定ハ人間ニヨ
ッテ行ワレナケレバ。私ハ、ロボットデスカラネエ」
「いやあ、こいつは一本とられた」俺は大袈裟に肩をすくめていた。
こいつ結構いい奴かも知れない。
 ぱんぱん、と課長が手を叩いた。「さて、そろそろ仕事だ。今日
も締めて行こうぜ」
「はい!」
 気合いの入った課長の言葉に、俺もやる気が湧いてくる。みなぎ
る気力は、まるで昨日までとは別人のようだ。
「よーしついて来な、ロボット。俺が刑事の魂ってのを、みっちり
叩き込んでやるぜ! 覚悟しろよ!」
 俺はFの頭に拳骨を押しつけ笑う。
「ソノ前ニ」
 Fはランプを複雑に明滅させた。
「No.3ノディスクヲ、挿入シテクダサイヨ、先輩」
「OK! これかい、F」







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