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式典の日 タイムカプセルの中で原子時計が20年を数え、ロボットFの頭 脳に今、再び火が点った。 (新「科学首都」の建設とその無限の未来を支える為、完成され た大発電所。私はその日を記念に封入された科学の象徴。やがて厳 かにカプセルは開き、開都祝典の特別ゲストはマーチと喝采のなか 立ち上がる。全ての図書館にも匹敵するかつての知識と、夢を語っ た人々の記憶をいっぱいに抱えて。さあ、式典の時間だ) 暗闇の中で1時間が過ぎた。 半日が過ぎた。 いつまで待っても式典は始まらなかった。(怠慢な!)Fはつい に自分でカプセルを開いてしまった。 驚いた事に、カプセルは崖下に転がっていた。荒涼とした土地が 続く地平線に、科学首都と発電所の廃墟がみえた。 (それにしても草一本もない) 堅い赤土の上を歩くうち、小川にたどり着いた。川底の砂まで透 き通った水が、軽やかな音を立てている。Fはしゃがみ込み、手を 浸してみた。 「その水は飲めないわ」 背後の声に、Fはぎょっと頭を回した。何の気配もなく少女が立 っている。 「私はF。未来博に造られた者です。」 「知らないわ・・私が生まれた頃の話よ」 「発電所を廃棄したのですか? 科学首都は?」 少女はうつろな目を遠くへ移しながら、囁いた。 「窓が光って家が揺れたわ、ちょうど夕食の前だった、外をみたら、 空が真っ赤だった」 風に混じる言葉のために、Fは聴力のみを最大にする必要があっ た。 「私は母にしがみついた、父は外をにらみ続けて、横顔が何度も赤 く光った、やがて父はカーテンを閉めて、言ったの、食事にしよう って、私、もう、欲しくなかったけど、食べなきゃ、いけないって、」 「朝になったら父は目が見えなくなっていた、ボーデさんを呼びに 言ったら、あの方も、お医者さまなのに・・」 沈黙を置いて、Fが口を開く。 「そして科学首都計画は放棄され、住民は退去した・・」 「知らないわ。私が死んだ後の話よ」 少女は消えていた。 (私は何だったのか) Fは浅い川底に横たわり、身を沈めた。水音に包まれ、舞い上が った砂粒を見送ると、初夏の空が目の前で揺れている。冷たい流れ が演算能力を高めるのを感じつつ、Fは視覚を落とした。 クルトスの鉄鉱、コーフの銅鉱、ユルンのウラニュウム・・ 私もまた、まさにこの大地を母とする者なのですよ この地で続けるべき事を、Fは結論づけねばならない。川底に再 び埋もれる前に。 < 戻る |