夢の星間ドライブ

                              
「うう、ここは・・」

「目覚めたか地球人」

「君は宇宙人? ここは・・宇宙船?」

「君は地球を遠く離れ、馬の首暗黒星雲を望んでいる」

「まさか!」

「事実だ。我々の宇宙船パラレルドライブが可能にした」

「パラレルドライブ?」

「並行世界を走査して、距離を縮める航法だ。悪いが並行世界の説
明は略する。A星からB星へ行く場合、

1 2つの星の距離が、あまり遠くないような並行世界を捜して移

2 そこでB星に移動
3 元の世界を捜し、移行

どうかね、地球人」

「あの、それではA星からあまり遠くない場所に戻るだけでは?」

「否。物理系に囚われた発想だ。パラレルドライブは人知系の駆動
だ。つまり行動主体の認識を中心とおく。よって操縦者がB星に着
いたと思えば、元の世界でのB星に戻れる」

「よくわからない」

「結果おーらい。これが基本」

「距離以外は全く同じなんて、そんな都合良い世界があるか」

「並行世界の数は無限大ゆえ、理論的には必ずある」

「実際は」

「並行世界は無限だが、我々は無限に検索できるわけではない」

「駄目じゃん」

「そこで我々は単位を大きく取る事で補っている」

「単位?」

「恒星レベルでさえ整合していれば、目的の星系までは到着できる。
極端な話、惑星だとかそれ以下の、些少な違いは無視できる」

「んな無茶な」

「極端な話だ。不整合率は0.1%未満を保証される。宇宙旅行の
リスクとしては、ささやかな数字だと思うぞ」

「そんなので本当に元の世界に戻れるのか」

「まあ実のところ、系外宇宙まで繰り出す船乗りは、我々の内でも
ごく一握りだな。失う事を怖れず、蛮勇溢れ、己だけを信じる強者
達・・」

「はあ?」

「大抵の船乗りは、宇宙から戻ってくるたび『ダーリンまた少し変
わったわ』って言われるな。不整合が出てるんだなあ」

「あ、あのお・・」

「待つ身にすれば、確かに帰ってこない船乗りもいるな。不整合が
でかすぎたんだろ。でもまたそのうち、ひょっこり帰ってくる事も
多いよ。ただそれが、出て行った奴と同じのって保証は無いがね」

「え?」

「他の並行世界から、俺達と同じ航法で来た奴かも知れねえって事
だよ。でも問題ねえだろ? 新しい奴の方が、前より整合高いんだ
しな。出てった奴だって、どっかでよろしくやってるよ」

「うう」

「てなわけだ、地球人よお。うっかり俺っちの船に吸い込んだのは
謝るからさ、これからは俺と星の海に生きようぜ。絶対、悪くねえ
って」

「帰る」

「帰れるかなあ」





<  戻る