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ここでは、私が見聞きした奇妙な話を記します。
内容は概ね実話に基づいていますが、生来の性で多少の脚色が加えられていることをご了承下さい。



朝じゃない


 十年前、私はあるビデオゲーム開発会社の新人でした。

 これは当時の、Tという私の先輩が体験した話です。


 今も昔もそうですが、
納期間際になりますと、開発スタッフ、特にプログラマーは泊まり込みが多くなります。
その夜もT先輩はひとり会社に残り、夜中まで作業をしていましたが
一段落ついたところで眠る事にしました。

 部屋の明かりを落として床に敷いた寝袋と毛布にもぐり込むと

泊まり続きで疲れているT先輩はアッという間に眠りに落ちました。

 それからどれくらいたったでしょうか。

T先輩は誰かに身体を揺すられて目を覚ましました。


その時、確かに
周囲は明るくなっていたように
思えたそうです。


T先輩は、ああ、朝になったので誰か起こしてくれたんだなと思い

目をこすりながら起きあがろうとしました。


 ところが、上半身を起こしてみると部屋はまだ真っ暗でした。


 えっ? と思った途端、今度はどん、と肩を突かれ床に戻されたのです。

 うわあ、これはまずい。T先輩は毛布をひっ被り、
決して外に頭を出さないようにして無理矢理眠りに就こうと努力しました。


 その間、誰かが周りを歩いているような
気配があったとのことです。


T先輩は恐怖におののきながら必死に羊なぞを数えます(嘘つけ)。

 幸い、どんな事態にあってもいくらでも寝られるのがプログラマーの特性です。

こうしてT先輩はふたたび寝てしまう事に成功しましたが

翌朝は大勢出社してくるまで、起こされてもなかなか毛布から頭を出せませんでした。



 後日談

 もう一人別の先輩にMという人がいまして
この話を「んなわけねーだろ」と笑いとばしていたのですが
別の夜に殆ど同じ体験をしてしまいました。
違っていたのは最初に揺すられた時点で「こりゃ罠だ」と思い
無視して眠りつづけた事です。
無論彼もプログラマーです(爆)。
 これらの話が広まって以来、
仮眠中のスタッフを起こすのが難しくなったのは言うまでもありません。
 なお、この出来事があった建物は改築のため、今はまったく残っていないようです。


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 著作者   蛮人S   mail:banjin-s@gorakken.net