第10回チャンピオンofチャンピオンバトル詩人部門 Entry5
中国とロシアが手を組み
アメリカへ原子爆弾ミサイルをどかどか撃ち込んだので
アメリカは野ばらの花咲く花園になりました。
ゴールデン街の青空を見上げると飛行機雲が十文字型に
言い換えれば十字架型に組み合わさっていて
(宗教の歴史なんてどれも同じだ)
それでもともかくコカコーラが飲みたくなったから二十四時間営業駐車場脇の自動販売機の前へ立つ
十円玉が一枚こぼれて汚水へと落ちる
十円玉は純度九十九%の銅(Cu)で出来ているので
汚水を流れ流れ誰かに届け十円玉
いや、拾った気がする。十円玉をどうもそれから拾った自分と拾っていない自分が二人いるような気がしてならない。いるのかもしれない。やあ、なんてね。どうしてる? なんてね。
青空 コカコーラ ゴールデン街 耳鳴り
「耳鳴りに何もメロディが無かったのは神の行った奇跡なんだよ。嘘みたいに奇跡なんだ!」
神に会いたい(セックスまで持ち込みたいか? 同居とかなんだとかも? ショッピングとか美術館めぐりとか? 百万ドルの夜景とか?)。
神に会いたい(セックスのあとのけだるさとか? 二人並んで鏡の前に立って歯を磨いたりだとか? 一緒にコンサートに行くとか?)。
ムリーリョ 無原罪の御宿り
新宿御苑に大きな大きなビルがまっさかさまに落ちていく
本当に本当に大きく真っ直ぐなビルがまっさかさまに落ちていく
定規を使うのがへたくそだから、あんなに真っ直ぐな線は引けたことが無い
「マリー・テレスト号には誰も乗っていなかったのさ。あれには誰もがひっかかったが、日本の、確か栗本薫だったかな、まあ誰でもあの事件にはひきつけられ、あの事件に魅せられていたが。マリー・テレスト号を題材にした小説を何本か書いたようだが。マリー・テレスト号には誰も乗ってなかった。マリー・テレスト号には誰も乗ってなかったんだよ。そのように作られた。マリー・テレスト号は、そのようにして、作られた。そして出航して行ったんだ。あても無く。何処にも何処にも何処にもあても無く。マリー・テレスト号事件? ああ、あれだよあの有名な。ほら、何も無い海を一隻の船が漂流してて、中に入ると今まさに晩餐会が始まろうかというホールだとか、まさに飲み干されそうとして注がれているシャンパンだとか、でも誰もいない。誰もいない。誰も誰も誰もいない。ほら、知っているだろう? 誰もいないんだ。誰も誰も誰もいない。なんで誰も乗ってないと作られたって知ってるって? なんで誰も乗せずに、あても、何処にもあても無く出航するようにつくられたか、って? それは僕がそれを作ったからさ。マリー・テレスト号は僕が作ったんだよ。結構器用だろう? 船なんて、結構簡単さ」
ぺっ!
パンツを見せながら路上に座り込んでいると
唾を吐きかけられたことは一度や二度じゃあない
手帳は無くしてしまった
何も大したものは書けてないけれど
ぺっ!
「美しさとは、そんなものさ。そんなもんだよ」
美術館に立つ
昔に描かれたこの絵画にぎりぎりまで
ぎりぎりまで ぎりぎり ぎりぎりまで近づいて立つ
この昔の、ずっと昔の古い絵画のあのいとおしい油絵の具のひび割れは、いったい誰のもの? いとおしい、美しい、アスファルト、あのひび割れは、誰のものなの? 作者のもの? 人のもの? 時間のもの? 絵画修復士のもの? 誰のもの?
崩れ落ちた
モナリザ
ばらばらに色とりどりのかけらになって崩れ落ちて
そのかけらを鳥がついばみ、鳥は美しい蝶の大群になって
ほら、裏庭にも一匹
ほら
「ハウリングにメロディが無いの奇跡なの?」
神に会いたい
紙に書く紙に書く絵になれ絵になれ絵になれ絵になれ絵になれ絵になれ絵になれ絵になれ線になれ形になれ顔になれ欲望になれ悲しみになれ怒りになれ優しさになれ何かになれ何かになれ何かになれ素晴らしくなくても良い、何かになれ。
良いことばなんて何も書けない
美しい詩なんてとても書けない
綺麗な絵なんてやはり描けない
腰にクるビートなんてとても作れない
皆を泣かせるピアノなんてとても弾けない
「そうか。自由か」
男が手に繋がれた鎖をじゃらじゃらと言わせて歩く
そうか 自由か