第11回チャンピオンofチャンピオンバトル小説部門 Entry3
「……ああ、もしもし、俺? ああ、俺。俺だよ、俺。オレオレ……」
ガチャン、ツー、ツー、ツー。
「聞いたか、助手よ、この輝かしい成果を」
「……」
「わからんのか」
「博士、お言葉ですが、これはただの『オレオレ詐欺』ではないのしょうか」
「ばっ、馬鹿者。お前は何年わしに仕えておるのじゃ。今聞かせた通話音声こそ、わしが巨万の富と三十数年の年月を注ぎ込んだ研究『時間超越携帯電話【愛称:タイムマシンフォン】の人体実験第一号に相違ないのじゃ」
「タイムマシンフォンですか、年月の割にはマンマなネーミングですねえ。大体どういうものかは想像がつきますが、それって、以前にテレビ放映されたタモさんの映画のネタのパクリではないですか」
「何を言うか。これはわしのオリジナルじゃ。あんな歴史探訪のために携帯電話を使う夢物語とは、わけが違うぞ」
「って、知ってるってことは、映画見たんじゃん。あーあ、パクリだ、パクリ。まあ、ネットの片隅に掲載されるだけですから、盗作で訴えられることは無いでしょうが、読者は引きますよ。良いんですか、得票出来なくても……」
「ああ、良いんだよもう、締め切り過ぎてるし、ネタも尽きたし、単身赴任だし。常夏の島だし……」
「あのねえ、みんなもう、読むの止めちゃうよ。楽屋オチは犬も喰わないってんだから、早いとこ本題に戻りましょう」
「おう、ホンダイ、ホンダイ(シンハラ語)。古来より『過ぎてしまえばみな美しい』と歌われる通り、人の幸福はひとえに『過去』にあるのじゃ。『現代』は苦悩に満ちており『未来』は不安で一杯じゃ。そこで、この時間超越携帯電話【愛称:ケータイム(第二案)】を使って、過去の自分と会話をすれば、真の幸福を満喫できるというわけじゃ。どうじゃ」
「……」
「わからんのか。何年わしに……」
「解らないんじゃなくて、下らないんで絶句してたんだよ。アホらしい」
「何じゃ、その言い草は、助手の分際で、いつの間にかタメグチだし、無礼は許さんぞ」
「じゃあ、申し上げますが、過去の自分の過去は現代なんですから、過去の自分は苦悩に満ちているわけでしょう、そんな相手と話しても『幸福感』に浸れるわけ無いじゃないですか。仮に過去の自分があり余る幸福を満喫していたとしても、そんな奴と会話したら、余計に現在の自分が惨めになるだけじゃないですか。基本コンセプトに誤りがありますよ」
「……」
「わからないんですか、何年私と……」
※作者付記:
【参考文献】
『世にも奇妙な物語 映画の特別編』【携帯忠臣蔵】(2000年)
『過ぎてしまえば』森田公一とトップ・ギャラン