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第12回チャンピオンofチャンピオンバトル詩人部門 Entry4
「発光」
真っ暗闇から
突然
湧き水のように光が溢れ出し
部屋そのものが発光しているかのように
眩い光を放つ真っ白な部屋が
湧き上がってくる
頭蓋のドームの中には
爆発する星たちが
隙間なく散りばめられていて
閃光を放ちながら
渦を巻く銀河を形作ってゆく
歌声
鳴り響く
星と星のあいだの
エーテルで満たされた空間
内側と
外側が
溶けて
真っ白に輝く部屋の中
鳴り響く
歌声
歌声
遠い
歌声
「念写」
念写して
視えたのは
月の裏側
ストロベリーシェイクの色をした
なにやら
やたら速そうな機械が
音よりも速く
駆け巡る
最新型の戦闘機の意匠を施された
人殺しの機械
ストロベリーシェイク色の凶器
操縦席に座る銀色のうさぎは
ダークサイドなフォースを駆使して
片っ端から反乱軍のテロリストどもを
木っ端微塵に撃ち落していく
そんな
月の裏側で繰り広げられている
殺戮と混沌が
滲むように
ポラロイドに浮かび上がってくる
きれいだなぁ
ホント きれいね
誰だよおまえ
誰かしらわたし
気持ち悪いなぁ
ホント 気持ち悪いわね
「祈祷」
吐き気がして
しゃがみこんでいると
あなたの
幸せのために
祈らせてください
間の抜けた声で語りかけてくる
ピントのずれた布教者たち
それが合図だったかのように
吐瀉物は
パッ
と散って
花が咲くみたいに
路上に開いた
晴天の午後
祈りを
いま
この絶望に
祈りを
誰のためでもない
祈りを
「誘惑」
夏の空気は
意味もなく淫らで
夕暮れになると
その気配はいっそう色濃くなる
コンビニの前の薄明かりの中
人待ち顔で佇む女は
みな娼婦のように見える
きっとこの女たちは
前世でも
そのまた前世でも
こうやって娼婦のように
誰かを待ち続けていたのだろう
そして
きっと
来世でも
急ぎ足で歩く恋人たちは
はやくも発情して
身体のあちこちを湿らせていて
雨が降りはじめる直前のような
雰囲気を演出している
そんな
噎せ返るほど
濃密な空気の中で
道端の托鉢僧が
勃起していることなど
誰一人知るはずもなかった
「亡霊」
かつて
人であったもの
宙に
灼きつけられた
人のかたち
悲しいのは
もはや
何が悲しいのかさえ
分からなくなってしまったこと
欲しいのは
救いではなく
赦しでもなく
ただ
解き放って欲しいのです
「呪文」
文字を
音に戻す
元の
あるべきかたちに戻す
そうやって
音になった文字を
ある特殊な方法で増幅し
無色透明の爆音にして
それを丁寧に並べてゆく
神経を磨り減らす作業だが
黙々と並べてゆく
ドミノのように
ストーンヘンジのように
整然と
美しく
無色透明の爆音の列に
ある瞬間
突如立ち上がるもの
それは
意味を超えた
何か
それこそが
呪文だ
とても簡単で
誰にでもできることなのだが
言葉が
すべて呪文であるということを
知っている者は少ない
「降霊」
きのう真夜中に
屋上で吹いた口笛
聴こえたでしょう
風がないのに
煙草の煙がゆらりとなびいたのは
口笛聴こえた合図でしょう
生暖かいお湯のような空気の中
わたしの隣に
あなたの気配が濃密に在って
わたしは
うれしいのか
悲しいのかさえ
よく分からなくなって
ほんの少しだけ
涙をこぼしたりしてみました
「儀式」
教会の前で輪になって踊る
小さなこどもたち
水色のキャンディを頬張って
楽しげに手を叩き足を鳴らす
教会の重い扉が開く
暗い顔つきの神父が現れ
玩具のピストルを
子どもたちの足元にばら撒いた
子どもたちは踊りをやめて
夢中で玩具のピストルを奪いあった
身体が大きく力の強い子どもは
ひとつでは飽き足らず
他人のピストルまで奪おうとし
のろまな子どもは
ひとつも手に入れることができずに
泣きわめいていた
神父はそれを
悲しい目で眺めながら
懐から取り出した本物のピストルで
子どもたちを
ひとりずつ順番に
撃ち殺していった
悲鳴さえなく
真っ青な空には
ただ
銃声だけがこだましていた
「幻覚」
蝶になる
夢を
観た
おんなの
肩口にとまって
軒先の
夕立を眺めていた
土砂降りの中で
遠くの高層ビルが
マッチのように
燃えていた
雨の匂いと
煙の匂いと
おんなの化粧の匂いが
混じりあって
酒に似た香りが
漂っていた
「霊魂」
ぼくたちは
しょせん
霊魂だ
拠り所のない
あやふやな
生臭さだ
フワフワして
クセになる
やさしい手触りだ
喉元を
滑り落ちてゆく
気持ちよさだ
何もかも忘れ去って
手を繋ぐ
あやうさだ
言葉だけで破裂する
脆すぎる
霊魂だ
「暗転」
部屋そのものが発光しているかのように
眩い光を放つ真っ白な部屋が
ゆっくりと
その輝きを弱めてゆく
頭蓋のドームの中の銀河は
いまもなお渦を巻き続けていて
それは加速する一方だ
歌声
鳴り響く
星と星のあいだの
エーテルで満たされた空間
内側と
外側が
溶けて
ゆっくりと暗くなってゆく部屋の中
鳴り響く
歌声
歌声
遠い
歌声
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