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1000字小説バトル 2nd Stage
チャンプ作品
『猫の神様』ヤマモト
ふと気付くと人影、いや、猫影が立っていた。夕暮れの神社である。その猫は二本足で立っていて、人間の大人位の大きさがある。
驚いて煙草を咥えたまま固まっていると、猫は短い前足を口に当て
「えー、にゃっほん」
と咳払い?をした。僕が何も言えないでいると
「お隣、宜しいですかにゃ?」
と聞いてきた。
「あ……どうぞどうぞ」
しゃ、喋った! 僕は感動しながら横にずれベンチを空けた。
隣に座った猫は日向の匂いがした。そっと横目で観察する。
立派な毛並み。薄茶色で縞模様がある。腹と手足の先が白い。靴下猫だ。可愛い……。
猛烈に撫でたい欲求を堪えていると、猫がこちらを向き、金色の瞳で僕を見つめて言った。
「差し支えにゃければそれを消して貰えますかにゃ。どうも匂いが苦手でして」
「あ! これは失礼」
そうだ、猫は煙草の匂いが嫌いだった。火を消して携帯灰皿に入れると、猫は二三度頷いた。
「にゃほん……実は私、猫の神様でして。いやまあ、ただ長生きしたというだけにゃんですが」
「ははあ」
神様! 叫びそうになるのを堪える。折角来てくれたのに、びっくりさせては事だ。
猫の神様は小さな可愛らしい口をパクパクして続ける。
「貴方が猫好きの参拝客だったので嬉しくなりましてね。つい出てきてしまったのです」
「あ、なるほど……」
猫好きがバレていて思わず照れる。猫の神様も照れているみたいだった。前足で顎を掻いている。そしてまた金色の瞳で僕を見つめ
「残念な事に私は長生きしたというだけで、神通力等は持っていにゃいのです。だから貴方の願いは叶えられにゃいのですが……」
「あっいやそんな、お会い出来ただけで光栄です、ほんと」
「そう言っていただけると……」
「えぇ、えぇ」
「良かった……。にゃんだか冷えてきました。そろそろお暇致しましょう」
スクと立ち上がった猫の神様は、
「お話出来て楽しかったです。では、お元気で」
と言って微笑むと、くるりと背を向けてあっという間に縮んでしまった。普通の猫になってトトトトと走り、境内の向こうへ消えた。
その姿はまるきり普通の猫で、たった今の事がまるで夢の様に思えた。
それから。
何度かその神社に行ってみたが、猫の神様はもう現れなかった。きっと気まぐれだったんだな、と思う。
でも、最近道を歩いていてふと振り返ると、猫が四五匹後ろに付いて来ている事がある。猫の神様に会ったせいだろうか。
猫好きの僕はそれがとても嬉しい。
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