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1000字小説バトル 2nd Stage
チャンプ作品
『夜蝶失踪事件』トノモトショウ
この話は、私(トノモトショウ)が二十一歳の頃、つまり今から六年ほど前のことだが、実際にあった奇妙な事件に纏わる出来事について語るものである。
パピヨン、というのがその女の名前だった。女は当時63歳で、現役のストリッパーだった。胸と腹は歳相応に垂れ下がり、白い陰毛に覆われたヴァギナはその機能を失って、ただの空洞でしかなかった。しかし、何故か女性特有のエロチシズムだけは健在で、充分ショウを成立させることが出来た、というから不思議な話である。
私は高校時代の友人Sに会うために、新宿まで来ていた。Sは弁護士を目指して東京の大学に入ったが、一年もしないうちに挫折した。Sは私の顔を見るなり「良い所に連れてってやる」と不敵な笑みを浮かべ、歌舞伎町の路地を進んでいった。
ゴールデンホールという品性のかけらもない名前のストリップ劇場。そこで私達はパピヨンという名の女に出会ったわけだ。私は内心悪態をついていたが、Sはやけに熱心に萎んだ乳首を眺めていた。
「愛してるんだ」
Sの告白は衝撃的だったが、同時に悲しい予感を孕んでいた。パピヨンという名の女が帰るところを捕まえて、愛の言葉の詰まった手紙を渡すことになり、私は憮然としながらも付き合うことにした。
結果的にSの目論みは成功した。パピヨンという名の女は、皺くちゃの顔をさらに皺くちゃにして手紙を受け取ったのだ。子供のように喜ぶSの横顔を見ていると、野暮な言葉は飲み込まざるを得なかった。
それから一ヶ月が過ぎた頃、Sから電話があった。「返事が帰ってこない。催促に行くから一緒に来てくれないか」
報われるはずもない他人の恋のために、大阪―東京を往復する羽目になるとは思わなかったが、多少の好奇心に突き動かされ、再びゴールデンホールまで来ていた。
Sは近くの髭面のボーイを呼び止め「今日のパピヨンさんの出番は何時ですか?」と聞いた。ボーイは怒ったような、困ったような表情を浮かべて「消えたよ、あの人は」と言い放った。
ボーイの話によると、二週間ほど前に何の前触れもなく、彼女の行方が知れなくなった。支配人は慌ててアパートまで駆け付けたが、机の上に手紙が一通あるだけで、彼女の姿はなかった。
その手紙に何が書かれていたのか、私達には教えてもらえなかったが(ボーイも内容までは知らなかった)、Sへの返事だったのではないだろうか。根拠はないが、私はそう思っている。
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