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1000字小説バトル 3rd Stage
チャンプ作品
『只、玉の緒を繋ぐ為』ごんぱち
 5.5ミリ小銃を抱えたまま四谷京作はタコツボの中で毛布にくるまりうずくまる。
 月は満月に近く、空は星で一杯に埋まっている。
「静かだな」
 隣りで毛布をかぶっている蒲田雅弘が呟く。
「起きてたのか」
 四谷はちらりと蒲田を見る。
「あんまり眠れてねえんだ」
 蒲田は苦笑いを浮かべる。
「……オレもだ」
 四谷は襟元からペンダントを出し、握り締める。
「半年前は……ただのサラリーマンだったんだぜ」
「――四谷」
「あ?」
 蒲田はじっと四谷のペンダントを見つめる。
「それって、ロケットか?」
「あ、ああ、まあな」
 照れたように四谷は笑い、ペンダントを開く。中には、若い女の写真が入っていた。
「オレ、この戦争が終わったら、結婚するんだ」
「ちょっ、バカ、何やってんだよ!」
「え?」
「それ死亡フラグだろ! 死ぬぞ、お前! つかもう死んだも同然、死体だ、ゾンビみたいなもんだ!」
「そ、そうかな」
「かあああっ、もう信じらんね! テンプレにも程がある! さっさと潰せ、フラグを潰してしまえ! 死にたくなければな!」
「そうは言っても、結婚はOK貰ったし」
「んなもんいくらでもひっくり返せるだろ! そうだ、慰安所で撮った写真あったろ、あれの中でいちばん露骨なの送っとけ、あれ! そーすりゃ、絶対あっちの方から振って来る。それで嫉妬しないような女は、そもそもお前に惚れてなんかいねえ!」

 引き揚げ船の船室で、荷物を枕に蒲田は独り寝転がる。
 手には認識票が握られていた。
 周りの兵士たちは皆疲れ切った表情をしている。戦場での心身の疲労、命が助かった安堵感、そして、これから先の生活への期待と不安。全てが積み重なっていた。
 汽笛が船内にまで響いて来た。重い音は、床板をビリビリと振動させた。
「陸だ!」
 丸窓を覗いていた兵士が叫ぶ。
「日本に戻って来た!」
「やったぞ、帰って来たんだ!」
 兵士たちは我先にと甲板へ上がって行く。
 途端にがらんとなった船室で、蒲田はゆっくりと起き上がった。
「――なんだ、みんなどうした?」
 丁度その時、トイレから四谷が出て来た。
「陸が見えて来たらしい」
 蒲田は自分の認識票をポケットに突っ込む。
「限りなく憂鬱なんだけど」
 四谷の背嚢からは、手紙の束がはみ出していた。
「……それ、全部彼女のパパからか」
「娘を泣かせやがってぶち殺すって」
「大丈夫、ショットガンパパに射殺なんてフラグねーから」
「現実には割とありそうだよ!」





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