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1000字小説バトル 3rd Stage
チャンプ作品
『最後の夏』石本レオ
 2アウトランナー2、3塁。
(打順、回ってくるな!)
 バッターボックスに立つ前、ネクストで待機していた僕は、そう何度も思っていた。前のバッターがアウトになれば、次は先頭からだから気が楽になる。
「ボール!」
 審判のボールコールが僕を震えさせた。
「ボールツー!」
 おいおい、相手のピッチャー大丈夫か? 全然入ってないぞ。って、まさか、満塁策か? それだけは、やめてくれよ。
「ボールスリー!」
 ちょっと、本当に勘弁してくれよ。
「ボールファー!」
 あ、やっちゃったよ。味方の援団が凄く盛り上がってる。

 高校最後の夏。誰もが1勝を目標にしていた。うちはいわゆる弱小校。万年1回戦負けの高校だから、今年も勝てないだろうなって思っていた。
 中学から野球をやり始めて、1年のときにいきなりベンチに入った。嬉しかったけど、自信が無かった。ベンチに入れない先輩たちがたくさん居た。その中で僕がベンチに入って良いのかと苦悩していた。
「お前は、人一倍汗を流して、練習着を汚していた。お前の努力は本物だ」
 監督はベンチ入りの理由をそう語った。でも、僕はやっぱり、野球は実力で努力は二の次だと思っていた。
 その年の夏の予選で代打で出場して、空振り三振。ベンチに下がるとき、チームメイトが遠ざかっていくような感覚だった。
 中学3年間、試合に出れたことはもちろん嬉しいけど、チームメイトは、無の反応を続け、僕は孤立していった。
 両親の都合で県外のこの高校に行くことになった。野球部からの勧誘に僕は迷った。
 でも、やっぱり、僕は野球が好きだ。

「達也、肩の力抜いていけよ」
 今のチームメートは、昔のように無視したりしない。僕が三振しても「ドンマイ」と言ってくれる。
 バッターボックスに立つ前、監督からのサインを確認すると、『打て』だった。

 7対7。俺がランナーを帰せば勝ち越し。そして、次の回、抑えれば勝利。創部以来公式戦初勝利となる。いや、待て、落ち着くんだ。俺は、まだランナーを帰していない。今日は4の0で4三振。これがラストチャンスだ。

『4番レフト杉原君』

「よっしゃー! ピッチ来い!」
 相手の柏木は、僕に対して全打席『外、外、内』で攻めてきている。一球様子を見るか。
「ストライク!」
 外側いっぱい。次も外か。
「ストライク!」
 え、内? し、しまった。追い込まれた。

(みんな、頼りない4番でゴメン!)

 金属バットの音が球場いっぱいに響き渡った。




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