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1000字小説バトル 3rd Stage
チャンプ作品
『五十歩百歩によろしく』ごんぱち
気怠い午後の昼下がり。
四谷京作と蒲田雅弘はオフィスで二人、机を並べ業務を進める。
「すぅ……すぅ……」
四谷の手が止まり、寝息が聞こえ始めた。
「……四谷、おい、四谷!」
蒲田が四谷をつつく。
「は、はいっ、答えは七です!」
いきなり立ち上がって四谷が叫ぶ。
社員達の視線が四谷に集まる。
「あ……ええと、廊下立ってます?」
「仕事して下さい」
「ええ、はい、部長」
四谷は椅子に座る。
「居眠りしてんなよ、昨日は嫁とフィーバーか?」
小声で蒲田がからかう。
「ふざけんな、嫁ではフィーバーしないのがオレのジャスティスだ。エロパロとか冒涜以外の何者でもないね」
「でも画像とか見かけたら保存するんだろう?」
「見えてしまったもんは、仕方がない」
「五十歩百歩だと思うがなぁ」
「ああ、それそれ」
四谷が蒲田を指さす。
「人を指さすな」
「五十歩百歩っておかしくね?」
「んぁ?」
蒲田が四谷の方に向き直る。
「別におかしかぁねえだろ? 戦場で命令を無視して五十歩逃げた兵士が、百歩逃げた兵士を臆病だと笑う。恐らくは汚職などの責任を誰か一人に押し付けようとする政治家や役人への皮肉に使われたと思しき、有名な故事成語だろう」
「でも例えばだな」
四谷はメモ紙を取って線を引き、棒人間を描く。
「チキンレースの時に、ガケまでが残り五十メートルと百メートルのとこでブレーキかけたヤツがいたとしたら、やっぱり百メートルの方が臆病なんじゃないか?」
「こう考えるんだ、四谷。この二人はちょっとしたグループ同士の争い事の解決にチキンレースで決着つけるか、みたいな流れになった訳だよ。けれど、ヤツらだって死ぬ事が人並みに怖いんだから、こんな危ない勝負なんかぜんっぜんやりたくはない。でももしもやらなかったら、自分のグループ内で舐められて虐められる。グループから足抜けなんてしたら、今まで自グループの威を借りて色々やっていた相手グループやカモにした相手に復讐されるかも知れず、外も怖くて歩けないし、そもそもその後学生に戻って勉強をしても付いて行けずに怒られる事は目に見えている。そんな訳で、始める直前までママとかお巡りさんとかが見つけて止めてくれますように、とか祈ったけど結局何もなくて、ガタガタ震えながら運転席に乗り込む訳だよ」
「なるほど、チキンが二羽!」
「……仕事をしなさい」
「あ、はい」
「ですよねー、ほら蒲田、喋りすぎだ」
「……君もです、四谷君」
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