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1000字小説バトル 3rd Stage
チャンプ作品
『ウインナーコーヒー』ごんぱち
「……あー、ボーイ?」
「ご注文、おきまりですか?」
「この……ウィンナーコーヒーというのは、その……」
「当店のお勧めメニューでございます。今のお時間なら、モーニングセットでトーストとゆで卵が付いてまいります。お時間を少々頂きますが宜しいでしょうか?」
「ああ……うん」

「お待たせしました、ウインナーコーヒーでございます」
 来た。
 ホイップクリームが乗ったコーヒーに、トースト、ゆで卵、そして……ウインナーが付いている。
 あ、は、ははは、いやぁ、そんなワケがない。モーニングセットの一つに決まっている。
 は……は……。
 けど……ボーイは何も言わなかった。モーニングセットの中身について、トーストとゆで卵とは言ったがッ! ウインナーの事には触れていなかった!
 い……。
 入れる、のか?
 まさか!
 これは引っかけだ、そうだ、ボーイが言い忘れただけなんだ!
 危ない危ない、危うく騙されるところだった。
 ……でも。
 落ち着いて考えてみると、だ。
 このままクリームの載ったコーヒーを飲んで、ウインナーを食べて帰って、それでどうなる?
 折角高い金を出して喫茶店に入ったんだ。
 日常と異なる事を期待していたんじゃないか?
 このままただ、ウインナーを食べたのでは、家でアルトバイエルンを食べるのと何が違う? コーヒーに五五〇円、ゴールドブレンドとの差額となるであろう数百円を余分に支払った、それだけが非日常だとでも言うのか。
 翻って、ウインナーをコーヒーに入れたらどうだ?
 まずは、初めての味に出会える。
 話の種になる。
 ひょっとしたら、この奇行がテレビジョッキーのスタッフの目に留まり、奇人変人大集合に出られるかも知れない。白いギターとベルボトムが貰えるかも知れない! これは何という非日常か!
 よし、やってやる、やってやるぜ!
 ウインナーコーヒー、バチコイ!
 ウインナーがウインナーが、今、まさにコーヒーに……。
 入ったあああああああ!
 そして、飲むッ! 飲むッ! 飲むッ!!

 それをじぃっと見ていた王女様は、手ずからウインナーを取り、コーヒーに入れて召し上がりました。
 エチケットとはただルールやマナーを守るだけではありません。同席した人々と心地よく過ごすためには、時としてマナーから外れた事の方が適切である場合もあるのです。そのような、生きているエチケットを身に着けていた王女様は、ほんとうの淑女と言えるでしょう。





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