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1000字小説バトル 3rd Stage
チャンプ作品
『願い星』アレシア・モード
 宵闇の空が高かった。
 私――アレシアは公園のベンチで、深く蒼ざめた天の星をぼんやり仰いでいた。人生には時々こんな場面がある。私は一人、数日前の記憶を辿っていた。はい、回想シーン。


『皆さん、今日は大切なお知らせがあります』
『当店は本日を以て閉店です。で、パートの人、』
『今月の給料は支払います。日割だけど』
『じゃ、解散』


 まとめれば僅か三行半の空しさよ。私は煙草に火を点けた。煙の昇る先にも星がある。見上げてごらん、夜の星を。
 心が弱れば、ささやかな幸せも大仰に感じ取れるようになっちまう。天は誰もに平等だ。貧者にも差別なく太陽は背を暖め、月は足下を照らし、星座はフリーで物語を綴る。そんな僅かな幸せが心の糧だとかなっちまう。財布の糧にはならん……

「……お嬢さん」
 背後から知らない男の声がして、私は振り返る。よぼよぼした爺ちゃんだった。皺の中に笑顔がある。割合まともなスーツを緩く着ていた。
「隣に座っていいかな」
 と言いつつ既によっこらしょと腰掛けている。私は特に異を唱えなかった。
「宇宙は、いい」
 爺ちゃんは私の気持ちを引き継ぐように言った。
「自由広大、無限の可能性。ああ行ってみたいと思わんか」
「そうね」
 気付くと、爺ちゃんは真っ直ぐ私の目を見つめていた。何だこの人。いい年して私を口説くつもりか。実はお金持ちで私を愛人にとか考えてるのか。死んだら財産相続とか浅ましい妄想をしてるのか。
「……儂と契約せんか」
 えっ?
「儂と契約して宇宙船になろう」
 いや、言葉、変だし。
「あのぉ、宇宙飛行士のスカウトですかねぇ」
「そんな感じ」
 いや、あの。
「冗談では、ない」
 爺ちゃんは私の手をいきなり握った。


(刹那、未知のイメージが私の全身に満ちる。テレパシー。宇宙、百万光年の空間、惑星ティモヵの都市を離陸した宇宙船は生体構造。様々な星から集合した様々な生命自身を部品として構成する巨大生体宇宙船が、緩慢なる航行の果てに発見した地球、冥王星基地を設営し遂にこの惑星へ上陸、っていきなり船が故障。基地に帰還し補修する為、互換部品を調達すべく地球生命調査を……って、私をエンジンにするっての?」
「むウ、無茶な話の飛躍への順応性、さすが調査通り。二年、いや一年間でいいかラさ! 宇宙船手伝ってヨ! さっき宇宙OKしたヨね、ね!」
 突然オレンジ色の光が私を包んだ。いざとなったら強引な手口かい。

 ま、それでもいいか。





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