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1000字小説バトル 3rd Stage
チャンプ作品
『Xmas tragedy』深神椥
「栗沢さん、どうぞー」
名前を呼ばれ、立ち上がる。
「あっあの、栗沢じゃなくて粟沢です」
すかさず返す。
「あっすいません。粟沢さん、中へお入り下さい」
いつもこんな調子だ。
読みづらい名前あるあるかもしれない。
「栗沢さん、こんにちはー」
傍らに座る歯科医師が言う。
「あのー粟沢です」
またすかさず返す。
「あっすいません……えーとじゃあ今日は親知らずを抜くということで」
まただ、と思ったが、それよりも先に気持ちが向いていた。
よりによって何でイヴなんかに……。
まぁ、今年中に済ませたい気持ちもわかるけど。
私も早くやっちゃいたいけども。
大好きなケーキとチキンがまともに食べられないなんて……。
サイアクだ。
親知らずを抜くと、かなり腫れたり、気分が悪くなる人もいると聞く。
待合室に飾られているクリスマスツリーがやけに嫌みったらしく見えた。
抜いてすぐはよくわからないが、麻酔が切れるとサイアクだ。
激痛というより鈍痛。口も開けられない。
動かせないし、動きたくない。
あぁ、おせちもお雑煮もまともに食べられそうにないな……。
あっ年越しそば忘れてた。
あぁ……。
食べることばっかだけど、あぁ……。
自分の気持ちが底まで落ちても、時の流れは変わらない。
どんどんどんどん過ぎていく。
イルミネーションを尻目にとぼとぼ歩く。
傷口はズキズキ痛むが、街はにぎやかだ。
ため息をつき、天を仰いだ。
粉雪が舞っている。
クリスマスにはぴったりだが。
ちくしょう。
来年の末はちゃんと食べられますよーに!
初詣の願いごとに決定だな。
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