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1000字小説バトル 3rd Stage
チャンプ作品
『何たら急行ナントカ事件』ごんぱち
食堂車の中央に、男が倒れていた。
既に他の乗客や乗務員で人垣が出来ている。
「ちょっと失敬」
四谷と蒲田は人の間をすり抜け、男に近寄る。
「離れてて下さい!」
遮ろうとする乗員の手を、蒲田が押し留める。
「この方は、かの『黒い雲』事件を解決した、四谷探偵です」
蒲田が警察手帳を見せる。
「それと、非番ですが、私は警官です」
「ああ……警察」
やや不安そうな顔をしながらも、乗員は四谷と蒲田を通す。
四谷は倒れている男の傍らにしゃがみ、観察を始める。
「ふうむ、鋭利な刃物でひと突き」
「鈍器です」
蒲田が答える。
「一撃で倒すとは手練れの」
「滅多打ちです」
「そこまでやるとは、怨恨による殺人」
「生きてます」
「って、じゃあ、どこが事件なんだよ!」
「わ……私、の」
男が僅かに目を開ける。
「……大事な、青いダイヤが、奪われ、た」
「なんだって!?」
「しかも、金、銀、パールも一緒に」
「途端に安っぽくなりましたが」
四谷は周囲を見渡す。
「君」
そして、傍らの乗務員に尋ねた。
「乗客、乗員を皆、ここに呼んで下さい」
食堂車には乗客、乗員がぎっしりと詰め込まれる。
「単刀直入に言おう」
四谷はにやりと笑う。
「犯人はこの中にいる!」
皆、ざわつく。
「誰なんです!?」
蒲田の問いに、四谷は首を横に振った。
「それはその人の名誉の為に言わない」
「え?」
「一つだけチャンスを与えよう。今なら間に合う、警察にも言わない、言わないから、自分から言いなさい、後でこっそり返して、謝りに来なさい」
「……分からないんですね?」
「な、なな、何を言っているのかね! 分かっている、分かっているけれど、自分から罪を告白した方が裁判の心象とかもアレで、ナニだよ!」
「やっぱり分からないんですね」
「そんな事はない! ないにも関わらず、いや、なければこそ! いや、まあ仮に、仮にだよ? あったとしてもだ、この先追い詰めてもアレだよ、火曜サスペンスで崖で飛び降りたり何たりだよ」
「分かんないなら別の探偵に頼みます」
蒲田は携帯電話を出す。
「いやいやいやいや、そうだ、こうしよう。みんな目を閉じてー、はい、じゃあやった人手を挙げて! 見てないから安心して、本当にみんなきちんと目を閉じてるから、分かるのは先生だけだぞー。はい、挙手ー」
「手を挙げたのが、我々以外の全員とは。フフ、また一つ謎を解決してしまったな」
「絶賛拉致られ中に何ほざいちゃってるんですか!」
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