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1000字小説バトル
チャンプ作品
『回収』越冬こあら
ゲロゲロゲー。
不快な内蔵からの悲鳴が混濁した脳味噌にこだまする。煙草臭い濃霧の向こうが少しずつ明るくなり、朝を感じる。尻の下にアスファルト、背中にブロック塀の感触。どうやら戸外で一夜を明かしたようだ。昨夜は……また、やったらしい。
左遷される副部長の送別激励会。部長の笑顔、副部長の赤ら顔、日本酒のグラス、副部長の泣き声、部長の怒声……。
二軒目の店の名を思い出そうと首を捻って、胸に貼られたシールに気づいた。自治体名が明記された五百円分の粗大ゴミ回収シールだった。
「何もここまでしなくても」
呆れると同時に、大胆な行動に妻を駆り立てた怒りの原因を想うと胸が痛んだ。
『問題飲酒』『アルコール依存』
嫌な言葉が頭に浮かぶ。しかし、夫を粗大ゴミ扱いして、近所に恥をかくのはむしろ妻だし、学校で友人に囃し立てられるのは娘じゃないか。
サンケイ、毎日、日本経済、新聞配達青年のバイクが通り過ぎる。犬が来た。コーギーとかいう足の短い太った犬だ。お洒落な出で立ちとは裏腹に貪欲にゴミの匂いを嗅いで放尿、寝ぼけ眼の飼い主に引き摺られて去って行った。
山田さんの御主人が出勤して行く。前傾姿勢をとり、こちらに一瞥もくれずに突き進んで行った。続いて根岸さん夫婦。こちらは気付かない振りをして、小さなゴミ袋を私のそばに置いて行った。その後、何人かの見知った人間や犬が通った。
「一体、彼らの目にゴミ集積所の私はどう映ったのだろう」
トロンとした頭が考えた。皆無関心を装っていたが、よく見かけるフリーター君は、余程びびったのか出すタイミングを計り損ねたゴミ袋を携えたまま駅に向かった。
午前九時過ぎ、ゴミ収集車がやって来た。作業員が飛び降り、手際よくゴミ袋を収集車のホッパーに放り上げる。
「おじさん、可笑しな冗談で邪魔しないでよ。こっちも忙しいんだから」
と顰蹙を買うかと思いきや、無言のまま私に赤いシールを貼って、収集車に戻った。
収集車が走り去るのを見送り、シールを確認した。
「ご注意」
「曜日違いで回収出来ません。お持ち帰りになって、下記の正しい曜日に出し直して下さい」
と書かれており、下記リストの内『木曜、生ゴミ回収日』に丸がされていた。
正午過ぎ、土下座を覚悟して、枯渇と空腹を抱え、ゆっくりと立ち上がり自宅に向かった。
「せめて」
革靴を引き摺りつつ考えた。
「金曜、リサイクル品回収日に丸してほしかった」
と。
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