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チャンプ作品
『世界完璧図書館探訪記』アナトー・シキソ
世界完璧図書館は、チベットの山の上の地下にある。
つまり、山の中(表面じゃなくて、本当の意味での中)にある。
チベットの山だから、それはヒマラヤのことだ。
ヒマラヤは、要するに世界完璧図書館のビルみたいなものだ。
知らない人間が聞くと「まーさか!」と思うだろうけど、まあ、そうなんだ。
世の中「まーさか!」っていうことは意外と多い。
みんな、知らないことを知らないだけなんだ。
世界完璧図書館には山の麓にも入り口がある。
チベット人の番人が二人、ラッパみたいな銃を担いで立ってる秘密の入り口だ。
そこには、コーラの自販機と喫煙コーナーもあって、ちょっとちゃんとしている。
けど、番人二人はコーラは無視して不味いバター茶ばかり飲んでいた。
煙草もその辺で好きに吸っていた。
コーラを飲んで、喫煙コーナーで煙草を吸うのは、俺らよそ者だけだ。
けど実は、この入り口はゴールド会員専用。
ゴールド会員というのは、利用年数が十年以上の会員のことだ。
一般会員は山の上まで登って、山頂の一般会員用入り口から入る。
ひどい差別だが、決まりだから仕方ない。
俺は一般会員だから、低酸素症で頭をガンガンさせながら山頂を目指した。
ケチって地元人のガイドを付けなかったから、危うく遭難しかけたりもした。
ていうか、実際行き倒れになってるところを地元のジジババ夫婦に助けられた。
ジジババ夫婦の埃っぽい家の中で目を覚ました俺は、
「ありがとう」と「バター茶は要りません」と「世界完璧図書館に行きたいんです」
の3フレーズを念仏にみたいに唱えて、ジジババ夫婦を困らせた。
気の毒なことをしたけど、チベット語はその三つしか喋れないから仕方がなかった。
ジジイはマニ車をくるくる回しながら、いろいろ話しかけてきた。
ジジイの言ってることは殆ど分からなかった。
けど、なんとなく、
「世界完璧図書館なんて知らない、ここにそんなものはないよ」
と、そういうことを言っているらしいことは分かった。
俺は、
「そんなはずはない。俺はちゃんと日本を出る前にネットで登録してきたんだ」
と、日本語で反論したけど、ジジイには全然通じてなかった。
ババアは、俺になんとかバター茶を飲ませようと何度もカップを差し出した。
その度に俺は手で制して、
「バター茶は要りません」
と、それはチベット語でちゃんと断った。
で、そんな感じでジジババと過ごしているうちに、俺の観光ビザは切れてしまった。
今はまた渡航費を貯めている。
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