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1000字小説バトル
チャンプ作品
『妹の血』ロヨラ
「お兄ちゃん、捨てて」
 朝、部屋のドアが散々に叩かれ、その騒音で覚醒し、開けて出てみれば妹がストアーの袋に入ったゴミを寄越してきて、今日は可燃物収集日だと思いだし、俺の部屋の窓からゴミ集積場所へゴミを投げ捨て収集車到着の時間にぎりぎり間に合わせるプランだと諒解し、ゴミの詰まった袋を受け取り、や、と窓から放り投げた拍子に何かが窓際のプランターに落ちた。血塗れのタンポンだった。なぜ袋から転げたかは分からないが、まさしくそれは白い細いソーセージ状の端に紐を付けた挿入型であり、しかも使ったばかりで剥きだしのそれには経血がべったりと付着していて、妹のどす黒い血の幾らかはプランターの腐葉土に染みこんだ。
 マンドラゴラなる伝説上の植物を思いだし、確かあれは経血と精子を混ぜあわせて地面に放置すると芽を出すのではなかったかと曖昧な知識がもたげ、そしてあれは根が人類の形をしており、地面から引きぬく時に悲鳴を発しそれを聞くと死に至るのではなかったか。理髪店でのうぶ毛剃りに似た恐怖を味わう。
 妹は幼少のみぎりに近隣の変態に誘拐されたことがあるほど可愛い顔をしており、ちやほやされて育てられたのであり、チヤというよりかは次亜で、消毒に使う次亜塩素酸ナトリウムのことで、ホヤとは貝のホヤで、要するに清潔な性器なのであり、そのマンコを誇り、結果として大学入学以来、氾濫する性情報に惑わされて妹は言い寄る若い男どもの陰根をむさぼり、高校のころはあんなに真面目だったのにセックスを覚えてからは頭を悪くする一方で、だからあのタンポンに、生理中だからと避妊具無しに接合したがった男の精子が残存していて既に妹の血と混ぜあわさっているかもしれない。
 朝食を摂った後のダイニングで煙草をふかし、想像力を勇躍させて窓際のプランターからマンドラゴラが生える様子を思い浮かべていると、妹が洗い物をする母親に云った。
「妊娠しちゃったからお金ちょうだい」
 なぜかその時俺は、俺が妊娠させた訳ではないよな、と自分に言い聞かせ、そんな記憶もないしそんな欲望もなかった筈だが俺の子かもしれない、俺の子だ、という罪悪感が居たたまれないほどにこみあげ、いや確かに俺ではないが、少なくとも母親は近親相姦の副産物であろうと勘繰っている、と思えてきて、息苦しい。
 しかし妊娠した女にはそもそも生理が来ないのであり、これは、妹なりの金の無心の隠喩に違いない。
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