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1000字小説バトル
チャンプ作品
『ボウリング』越冬こあら
中学から高校にかけて、感じていた孤独には、転校や不健康、不幸といった名前が付いていた。孤独で退屈な日々の遊びは部屋で独り、眼鏡を外して右手人差し指で右目を掻くことから始まった。
掻き出すとなんでもなかった痒みが増して、どうしようもなくなり、中指、薬指も交えて必死で掻くことになる。そうしているうちに、中指が目蓋の合わせ目から奥に入り、目玉がドロッと掻き出されてしまう。ドロリと右手中指に絡みついた目玉は、奥の方と繋がっていた視神経の筋も外れてしまい、ポトンと机の上に落ちる。ベットリとした目玉を右手と左手で交互に転がし続けると、いつか果たしてスベスベのガラス玉に成る。
右手の中指を親指で止めて力を込め、狙いを定める。本式のビー玉には、あと幾つか必要なのだが、取り敢えず筆立てをターゲットに息を詰める。
パチンと弾くと、右目の景色が急速に回転する。耳と鼻の奥に違和感が走り、気持ちが悪くなる。やがて目玉はガチンと筆立てに当たる。それは、独特の痛みを伴うのだ。独特の痛みが退屈な時間を埋める。そしてまた、弾きたくなる。
何度も何度も右目を弾く、天井と壁と机がグリグリ回る。飽きずに目玉を転がして、孤独で退屈な日々をやり過ごした。
そんな日々から五年と少し、奇声と歓声、タバコの悪臭とカンチューハイ、入社してしまったことをもう一度、心底後悔した。
今日は「新人の歓迎の意味も兼ねた」ボーリング大会なのだそうだ。ただでさえ窮屈な思いがボーリングシューズの中にギュウギュウ詰めにされていた。
何か飲めと命令される。順番にボールを投げ、何か喰い、ピンを倒せと命令される。ボールはしかし、ガーターばかりだ。
罵声と嘲笑。目が痒くなった。掻いてみると痒みが増して、右手中指が目蓋の隙間から眼孔に入り込んだ。懐かしい感触。
薬指をゆっくりと、左の目蓋から眼孔にめり込ませ、口を開け、親指で上顎を持ち上げるようにコンベンショナルグリップを固める。意外と容易に首が外れた。
驚嘆と叫び。ゆっくりとしたフォームで、頭をレーンに転がす。ポツンポツンと血痕を残し、頭が不器用に転がっていく。回る照明、床材とワックスの仄かな香り、低い回転音がゆっくりと伝わる。頭は溝に捕まらず無事にピンのど真ん中に辿り着いたが、勢いが足りずに七番十番のスプリットになってしまった。
強気でスペアを狙いたい場面だが、身体はその場に静かに倒れた。
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