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詩人バトル
チャンプ作品
『今は別に欲しくないのだけれど』ヨケマキル
昨年の今頃
海の近くのいなか町に 家を借りて引越しました

ほとんど歩道の無い国道沿いを
走る車すれすれに歩き
海に行ったりしました

夏祭りの抽選会に参加した
1時間近くならんで
やっと抽選券を手に入れたのに

僕に自転車は当らなかった
僕に自転車は当らなかった

仕方ないので帰り道
藍色浴衣のお姉さんに
声をかけて何とかしようと思ったのですが
抽選会同様 思い通りに事が運ばず
リンゴ飴おごるだけの結果になった

とにかく僕に自転車は当らなかった

12時近く家に着いて
車のカギで玄関を開けようとしている自分に嫌気がさし
死んでしまおうかとも思ったのだけれど

八月 田舎町 夏祭り
抽選会 お姉さん リンゴ飴
など考えてやめた


ある日
その小さないなか町を震撼させた通り魔のニュース
襲われた女性の一人は ショックで記憶喪失に

数日後
その女性が入院している病院に
恋人と名乗る男が現れ
女性の心の傷を癒すため
献身的な協力をしたそうです

退院する頃には 女性の心もずいぶん安定したという事です


実はその男こそ通り魔だったのですが


僕の方は 結局3ヶ月で家を引き払う事になってしまいました

仕事が見つからず
なにより いなかは性に合わない

隣の家の奥さんですが
僕がいた3ヶ月間
ずっと左足に包帯をしていました


病院の屋上には
無数の包帯が干してあって
白昼にはそれが光り出し
あらゆる笑い声が生まれる



僕に自転車は当らなかった

今は別に欲しくないのだけれど


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