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『人生は素晴らしい 世界は美しい』ヨケマキル
人生は素晴らしく
世界は美しい


これは小学校5・6年の時の担任の先生が
担任になったその日から卒業の日まで
口癖のように繰り返し言ってきた言葉だ

正確には
人生には素晴らしい出来事や出会いがたくさんあり
世界は美しい物に満ちあふれている

さらに正確には
言葉の合間に「ね」が入るのだが
そんな事はどうでもいい

とにかく彼はこの言葉を2年間僕たちに言い続けた



同じクラスに沙崎くんという
いじめられっ子がいた
クラスのいじめっ子連中に金を巻き上げられたり
思いつくありとあらゆる典型的ないじめを
沙崎くんは2年間受け続けていた



人生は素晴らしく
世界は美しい



ある日沙崎くんの両親が
借金苦で自殺した
沙崎くんはいじめっ子に渡す金を両親の財布から盗んでいたが
まさかそのせいで破産したというわけでもないだろうが

とにかく沙崎くんは
家族を失った



人生は素晴らしく
世界は美しい



中学生になり
いじめから解放されると思っていたら
運悪く
そいつらと沙崎くんは同じ中学のしかも同じクラスや隣のクラスになった


1学期の期末テストの直前
沙崎くんは住んでいた親戚の家の近くの団地の外階段から
飛び降りて死んだ



人生は素晴らしく
世界は美しい



彼のお葬式の時

小学校から彼と同じクラスだった女の子が僕に
「渡す前に死んじゃったよ」
と言って彼宛のラブレターを見せてくれた



人生は素晴らしく
世界は美しい




数年後
彼が飛び降りた場所に
来てみた
とても天気のいい初秋の夕暮れで
遠くに富士山のシルエットが
くっきりと見えた


美しかった


彼が死んだ時
ここからは何が見えたのか

この季節だったら
彼は死ななかったかな



人生は素晴らしく
世界は美しい


そもそも風景なんかを見たり
季節を感じたり
同級生の女の子を気にしたりする
余裕もなかったのか



人生は素晴らしく
世界は美しい
この言葉が真実なのか
クソなのか
今はまだ知らない



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