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父さん、いくら稼いでるの?

作品情報

題名父さん、いくら稼いでるの?
文字数749
タグ
投稿日2021/2/16
感想
作者Bigcat
訳者
翻案
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父さん、いくら稼いでるの?
Bigcat

いくら稼いでるの?
 ある男が仕事から帰ってきた。疲れて、イライラしていた。
 家に着いた時、七歳になる息子が戸口で彼を待っているのに気付いた。息子は彼を見ると、
「聞きたいことがあるんやけど、聞いてもいい?」と尋ねた。
「ええよ、何や?」
 すると息子は、
「おとうの給料は一時間いくら?」と聞いてきた。父は、
「なんでそんな事を聞くんや? お前の知ったことじゃないやろ」
「僕、知りたいんや。どれぐらい稼ぐの?」
「知りたいなら、言ったるわ。時給千円や」と投げ捨てるように言った。そう言いながら、
このバカ息子は俺の稼ぎがそんなに少ないのか、だからおかんは出て行っちまったんやと不平を言うにきまってると思った。しかし案に相違して、息子は、
「じゃあ、父さん、僕に半分の五百円貸してくれる?」と言ったので、本当に腹がたった。
「なんや、玩具でも買いたいのか?そうなら回りくどい言い方せんで、最初から玩具が欲しい言うたらええんや。ほんま腹立つわ。部屋に戻れ!」
 息子は静かに自分の部屋へ戻って行った。

 数分後、父は落ち着きを取り戻し、息子との会話について考え始めた。
(何か本当に買いたいものがあるのかもしれない。滅多に金をせびるような息子ではない)

 父は息子の部屋へ行って声をかけた。
「もう、寝たのか?」
「ううん、起きてるよ」
「お前につらく当たりすぎた。はい、五百円」
「ありがとう、父さん」
 息子は机の引き出しを開けて、百円玉を五つ取り出した。それを見て父がまた怒り出した。
 「いくらか持ってるなら、なぜ金が欲しいと言うんや」
 息子は父の剣幕におずおずしながら答えた。
「この五百円と父さんの貸してくれた五百円、合計千円で父さんの一時間が買える。
どうか明日は一時間早く家に帰ってきておくれ。父さんとゆっくり食事がしたいんや」
父さん、いくら稼いでるの?    Bigcat