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一通の手紙

作品情報

題名一通の手紙
文字数573
タグ
投稿日2021/6/9
感想
作者Bigcat
訳者
翻案
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一通の手紙
Bigcat

 東京にある中・高一貫教育の学校の父母会で、ある日、高校に在籍するある生徒の
作文が、先生によって読み上げられました。
 それによると、この生徒の母親はたいへん教育熱心で、小学生の時から、子供と机
を並べて一緒に勉強し、
 「おかげで僕は、この学校に合格できたのです」とのことでした。

 中学に入学しても母子は引き続きともに学び、
 「このため僕は、上位の成績をずっと維持できました」と言います。
 しかし、高校に進学して、学習内容がけた違いに難しくなり、母親がギブアップ、
この子は一人で勉強するようになります。そしてその後の最初の中間試験は、順位が百番
以上も下がる惨憺たる結果に終わりました。
 その生徒は、
 「その日、母は一晩中泣いていました。翌朝、起床すると、僕の枕元に一通の置手紙
が残されていました。」
 そこに書かれていたのは、
 <お母さんは間違っていたようです。お母さんがいないと、勉強もできないような子に
育てるつもりは毛頭ありませんでした。これからは、一人で何でもできる子になってくだ
さい。しばらく実家にかえります>

 「それからは僕はものすごく忙しくなりました。お父さんと協力して、掃除、洗濯、
買い物から食事の支度をし、もちろん勉強もしなくてはなりません。母とはもう半年も
会っていません」

 この作文を聞きながら、ハンカチで眼を拭う父母もいたようです。
一通の手紙    Bigcat