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第56回詩人バトル

エントリ作品作者文字数
1なのめ駆け足コーギー496
2空の中のピーターパン鯨井弘子※データ無
3ギヌル沼が光るヨケマキル138
4双生児椿月481
5はだかのこども大覚アキラ407
6毒蛾の鱗粉箱根山険太郎105
7パラサイトじいさんながしろばんり237
8僕は君じゃないから空人512
9スイッチ座法佐藤yuupopic510
 
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エントリ1  なのめ   駆け足コーギー


日々の付け足しに

僕は流れに身を任せ

気付けば身体も

大きくなり何を出しゃばる?

日々の付け足しは

むりやり僕を突き動かし

気付けば今日も

僕は電車を待つ


つまらないもの

ためにならないもの

最終電車に全てを

託すのは安易だろうか…


見上げれば何気ない月が

僕を何気なく見下ろす

いつかはあの月より高く飛んでゆける…はず

見上げれば何気ない日々の

月より明るい電車の中

明日は昨日よりも高く飛んでみせるさ


機能重視の

社会にいよいよ押し込まれ

気がつくまでもなく

僕は電車の中にとけこむ

機能重視の

社会にいよいよ忘れかけてた

昔好きだった人が

僕の正面に座った


気まずいわけでもないのに

切ないわけでもないのに

たわいもない意気地のなさは

きっと今だけだろう…


見上げれば何気ない僕の

降りるべき駅に着く少し前

いつかはこのモヤモヤも高く飛んでいける…はず

見上げれば何気ない日々に

ほんの少しだけニヤリ

こういうの「なのめ」って言うんだよ

明日には教えてあげた


見上げれば何気ない僕と

少し意味ありげだった今日

いつかはそうさ、いつでも

日々に意味をくれてやる…はず

見上げればなのめな日々と

君に少しだけニヤリ

こういうの「なのめ」って言うんだよ

ピッタリすぎてまたニヤリ





エントリ2  空の中のピーターパン   鯨井弘子


 小さな二つの宝物
 ひとつはキラキラ光ってて
 ひとつはふわふわ笑ってる

 大切だから置いて行くよ
 大切だから持って行けない
 
 風をきって走るそれは
 きっと未来へはばたくだろう
 僕の大切なウェンディ
 大人になるのは君だけじゃないさ

 さあ ティンカーベルが迎えに来た
 もう行かなくちゃ
 でも 恐怖が消えない
 ”永遠の土地”へ行くことじゃない
 そんなのは 怖くない

 君たちはあまりにも小さいから
 僕を忘れてしまうだろう?
 行きたくない
 本当は行きたくないんだってば!

 君たちに忘れられたくない
 大切な二人なのに
 僕のこと覚えてないなんて

 僕はピーターパンだから
 もう 行かなくちゃ・・・





エントリ3  ギヌル沼が光る    ヨケマキル


わかった

光ったので
鳥でしたので
じめじめと
湿気のある方へ
裸足の足
痛いけれど
向かいました
知っている
その方向に行けば
あるのです
寒くて
孤独と
針が
頭の奥に
辛いですが
ひとりでいると
くわしくは
わからないのですが
薄闇の奥
体より
痛いので
まわりながら
仕方がないので
遠回りですが
集めに行きます
沼に






エントリ4  双生児
   椿月


愛することに 疲れたのかい?

眠らず夜闇に目をこらす君に
話しかける声は 僕のものじゃない
どれだけ声をからしても 呼びかけても呼び続けても
僕の声はいつも君には届かないけど

愛することは大変かい?
息をすることは 言葉を交わすことは?
生まれたことのない僕の前で 君はいつもため息をこぼす
僕にはその重さが分からない

君は
僕の姿が見えたなら うらやましいと呟くのかもしれないね
僕は生まれてこなかった
君は生まれてきた

愛することは大変かい?
生きることは 楽しくないのかい?

君が生きた時間の分だけ 僕はいろんなところを旅したよ
僕は君に伝えたくてしかたがないんだ
この世界は広い
生きることがつらいだなんて絶対にうそだ
死にたいだなんて言わないで
僕の苦しみを助けて

そう伝えたくてしかたないのに 君には届かないんだ
眠るのが恐い
恐い夢にうなされるのはもうたくさん
そう顔をしかめながら 目をつむる君には

君の目の前にちらばる死のかけらに
僕はまるで僕が否定されてしまったみたいで苦しいよ

君はいつか信じてくれるかい?
無作為にこの世に生まれてきた君の現実は
本当はとてもきれいなんだ

いつか 信じてくれるかい?







エントリ5  はだかのこども    大覚アキラ


袋の中
詰まっているのが
何なのか
誰も知らない

先週
新装開店したばかりのコンビニから
スキップしながら
はだかのこどもが
転がり出てくる
あとからあとから
何人も
はだかのこどもが
転がり出てくる
そんなシーンが
袋の中に詰まっていることは
誰も知らない

はだかのこどもたちは
ギラギラした目つきで
袋の中身を
狙っている

袋の中に
詰まっているのが
先週
新装開店したばかりのコンビニから
スキップしながら
はだかのこどもが
転がり出てくる
あとからあとから
何人も
はだかのこどもが
転がり出てくる
そんなシーンであることは
知りもしないで

はだかのこどもたちは
ギラギラした目つきで
袋の中身を
狙っている

はだかのこどもの
中に詰まっているのは
先週
新装開店したばかりのこどもが
転がり出てくる
はだかのスキップで
あとからあとから
コンビニしたばかりの
こどものシーンが
ギラギラしながら
袋のこどもたちを
狙っている
中身の目つきが
何人も
コンビニから狙っている
そんな袋であることは
誰も知らない





エントリ6  毒蛾の鱗粉   箱根山険太郎


残業の夜

職場のトイレ

洗面台の鏡の前に立つ

左の頬には毒蛾の鱗粉


顔面に受けた毒蛾のアタック
今ごろ効いてきて

赤く腫れ
痒みを伴い
熱を持っている

この疲労感は

俺が一日中
カネを転がしてたからじゃなくて
こいつのせいだったのか





エントリ7  パラサイトじいさん   ながしろばんり


孫が境に行ってくるというので
武蔵境のことかとおもっとったら
天地の境やった
なんじゃ、そんなことやったら
賽銭の一枚でも
持ってくるんやった

孫がジョージに行ってくるというので
吉祥寺のことかとおもっとったら
バイト先の上司との情事やった
なんじゃ、そんなことやったら
ちゃんと紋付袴
着付けてくるんやった

孫がじゅくに行ってくるというので
新宿か原宿のことかとおもっとったら
予備校で行列式を勉強しとった
なんじゃ、そんなことやったら
うちで寝とった方が
なんぼかマシやったのに

ああ、つまらん。





エントリ8  僕は君じゃないから   空人


僕は 君じゃないから
君のすべてが わかるわけじゃない
僕は 君じゃないから
いま君が どんな気持ちでいるのか
わからないときもある

君が 窓の外の雨を見ているとき
いったい 何を想っているんだろう
君は 眠りにつく前に
その暗闇で 何を探ろうとしているんだろう
それは 君自身が どんな気持ちでいるのかを
話してくれなければ
わからない
話してくれても
もしかしたら わからないかもしれない

君は 僕じゃないから
僕のすべてが わかるわけじゃない
君は 僕じゃないから
いま僕が 何を考えているのか
きっとわからないだろう
もし 君がそれを知りたいとして
僕が その気持ちを言葉にしても
やっぱり
僕のぜんぶを わかったりはしないだろう

僕は思う
あの青空も きっと君と同じ色には 見えていないんだろう
外国の歌手が歌うあのフレーズも きっと君とは違って聞こえているんだろう
君が言うやさしさも 君が感じる切なさも
僕とは違う
そう きっと何もかもが違ってい

それでも 僕は君をわかろうとする
それでも 君は僕をわかろうとしてくれる
それがたとえ 君の心の真ん中に届かなくても
君の手探りが 僕のぜんぜん違うものを 捕まえていたとしても

それはきっと 無駄じゃない
無駄になんか ならない






エントリ9  スイッチ座法    佐藤yuupopic


自らとは異なる人間に生まれた場合の、異なる日々の過ごし方、異なる都市に住まう、の、可能性について考えながら沈む、かつては営団地下鉄と呼ばれた
東京メトロ銀座線。の座席、

生きている日々の中で地下鉄の名称が変わるくらいだから
他人の日々を暮らす可能性もなきにしもあらず皆無とは云い難し、
それ甘んじて受け入れる用意
吾にあり。


なんて
頭ン中適当に考え転がしながら地下を潜る線路を渡りながら
不意に
眼が
アッてしまった
視線
喰い合ってしまった

目の前の
吊革の輪っかに右手首突っ込んでダラリ立ちの三連徹夜明け的顔色
鏡めいて光る車窓に映す、
のスーツ青年
と、
入れ替わる
嘘みたいな、
本当の話、

尾道市では
バカでッかい
石段で
うら若き男女が入れ替わったことが、
あったと云う。
かつて
わたしが
しょぼッくれた海辺のスクールライフ送った
高校に
語り継がれる、
嘘みたいな本当の話。


絶望する程ハナから望みもないが前向きに検討すればそう悪くもない自らの日々
平たく云えば案外愛おしかッた日々
さようなら、

山田修司、二十七歳F電気工業株式会社東京本社モバイル事業部開発一課課長補佐離婚歴有り
彼女無し残業深夜勤過多趣味釣りとボディボード、の日々

はじめまして、
ようこそ。