エントリ1 私の場合 飴子
「他に好きな人ができた」
言われた瞬間に訪れたのは絶望と怒り
普通の健気な女の子なら
笑って相手を手放して
笑って次の恋を応援するんでしょう
でも私は違う
あなたの不幸が私の幸せ
あなたの幸せが私の不幸
「あなたが幸せなら」なんて
私はそんなにカワイイ女じゃないの
エントリ2
コンプレックス 氷雨水樹
おんなのこだけど
ズボン はきたいな
そんなことおもってた
おんなのこ
きがついたら
おとなになってた
まいにちズボン
はいてても
おんなのこだから
スカート はきたいな
あしがだいこんで
にあわない
ようふくやさんで
しちゃくした
……。
やっぱりにあわなくて
ズボンをかった
作者付記:しかたないので ダイエットをかんがえました。でもしっぱい…。
エントリ3 街頭で 香月朔夜
風に吹かれて
ヒラヒラ舞いゆくソレは
蛾か蝶か
それとも千切れた紙屑か
風にあおられ
クルクルと地べたを回るソレは
枯れ葉か木の葉か
それとも丸めた紙屑か
風に乗せられ
風に押されて
虫をまね
葉をまねて
汚れた世界のゴミはゆく
エントリ4 ジャンプ 大覚アキラ
足もとの
一枚下は地獄
だから
そんなに楽しそうにジャンプするのはやめてくれよ
教会のてっぺんにくっついている十字架が
真昼のアスファルトにくっきりと影を落とす
路上に灼きつけられた十字架の形の上に寝そべって
磔にされたキリストを気取ってみる
おれの背中がアスファルトの熱を吸い取って
ゆっくりと背中が汗ばんでゆくのを感じる
影踏みの子どもたちが走り回って
楽しそうにジャンプする
だから
そんなに楽しそうにジャンプするのはやめろってば
少年ジャンプ
少女ジャンプ
青年ジャンプ
中年ジャンプ
壮年ジャンプ
老年ジャンプ
だれもがみんな
楽しそうにジャンプして
アスファルトに磔にされたおれの上を
飛び越えてゆく
あ
パンツが見えた
あ
白
白
黒
ピンク
白
花柄
紺
白
ピンク
黒
花柄
黄色
紫
白
緑
黒
アンパンマン
白
オレンジ
スーパーマン
花柄
イギー・ポップ
白
サルバドール・ダリ
岡本太郎
キリスト
神様
神様
神様
どうか
この罪深い子羊をお赦しください
エントリ5
男と女と生と性 トノモトショウ
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□男は逆説の世界で眠り□ ■女は欲望の誓いに浸り■
□リベラリズムを物語る□ ■ストイシズムを裏返す■
□実際は鉄柵に凭れる犬□ ■本当は倒錯に跪く巻貝■
□下半身では堪え切れず□→■無慈悲な表情は内側へ■
□非常識な錆色の恥から□←■優しく疑似餌を与えて■
□ささやかな自愛と共に□ ■ひそやかに憂うばかり■
□垂れ流す日々へ敬礼か□ ■突き落とす腕は嫋やか■
□磔さえ素敵に味わう男□ ■奇怪なポーズで踊る女■
□□□□□□□□□□□□ ■■■■■■■■■■■■
↓↑ ↓↑
■■■■■■■■■■■■ □□□□□□□□□□□□
■生は四次元に有り触れ■ □性は不機嫌な瞳を願い□
■神経の末端で叫ぶ解放■ □湿度の高い部屋で疼く□
■欠片から最期を煽って■ □全体から痛みを譲って□
■また繰り返す美学の嘘■→□この連続は開閉の冥利□
■相似形の永遠は秒刻み■←□低速でも絶頂は訪れる□
■気を抜く隙間もないし■ □やるせなく弄ぶ夢遊や□
■転がる余裕も勿論ない■ □さりげなく放置する裸□
■それでも簡単に熟す生■ □いつも一瞬で見破る性□
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エントリ6 私たちの河は海に届かない いとう
私たちはとても弱いので
ときどき何かを殺めたりもする
ぬばまたの真夜中に潜む
声を持たない涙のように
私たちはとても怖くて
目を瞑って過ちを繰り返す
陽光のまぶしさが作る
白い闇を前にして
絶壁の一歩手前で
扉を開けてしまう
体が震えるときは
心も震えている
私たちはとても愚かなのでそれを
他の場所からもたらされたもののように扱う
私たちから生まれた
その震えをそのように
扱ってしまう
ことに気づかず
いつまでもそれは生まれ続ける
私たちは知らないうちに
歌を口ずさむことがある
それは誰かへの祝福であり
同時に誰かへの呪いとなる
歌に
罪はなく
私たちは口ずさみながら
石を投げてみたりする
どこかで血が流れて
それを悔やんでも
殺めたものは殺められたまま
いつまでも戻ってこないのに
私たちは赦されないまま
何かが終わるのを
いつまでも待ち続けている
エントリ7
あなたが欲しい さつきばらかや
ただ求めている
それだけの感情しかいらない
あなたが欲しい
それだけの言葉しかいらない
無音のまま雨が降る
ときどき思い出したように
水の音が響く
あなたの吐息が熱い
どれだけ求めても
満たされることはない
欲する思いは果てがない
訪れた静寂の中
水の音が響く
エントリ8 鬼ごっこ kikki
路上で血を流してる女の子に
血が流れてるよ、早く止めなきゃと言うと
みんなに見せたいからいいんです、と
妙に引きつった笑顔でそう
言われて
ラブホテルの場所を尋ねた女は
ええっとお
ボウリング場の横にあるきれいなホテルってえ
滑り台があるホテルってえ
知りませんんん?
と、
精液まみれの顔を満面の笑みに変える
地下街の入り口の階段に腰かけた老人は
おまえらなんてクソだ!
国営放送なんかに銭出しやがって!
電電公社も道路公団も国税を搾り取りやがって!
と、はした金のために勘違い発狂
奥さんに逃げられた中年男は
唇をつりあげ、
戦争万歳!戦争万歳!といたずら電話をする
こわい世界だね
ううん、ぜんぶ架空のお話だよ
鬼さんこちら
手のなるほうへ
エントリ9
白と嘘の 黒と嘘の 虹村 凌
限定解除!!止まれない回遊魚達
ペンを投げるのは死ぬ時だ
限定解除!!止まれないPankSter
ノートを燃すのは死ぬ時だ
生きる事は 日々を告白する事だとも
生きる事は 苦しむ事だとも思わない
ただ 穴の空いたスニーカーで歩き廻り
シガァを燻らせては 何かを見つける
今はアグレッシブなのに 明日はネガティブかも知れない
その理由がわかるかい?
何処まで歩いてみても明日が見えない とか
黄色い肌に紅い痕をつけて泣いた とか
あぁ 言葉が輝き出すんだ
朝を迎える孤独や
誰かに哂われ コケにされて 火あぶられる痛みを
記憶のドアまで 走らせる それでも
言葉は滲んで 広がって いってしまう
言葉は溢れて 弾けて いってしまう
もしも マチに色が無いのなら
見捨てられた裏通りを覘く
もしも 作者のココロが知りたいのなら
文と文の間ー行間ーを読む
もしも このウタに色が無いのなら
白と黒のスキ間を読んでくれ
もしも このウタに嘘があると思うなら
そのウソとウソの行間を読んでくれ
輝き続けるコトバを引っさげて
止まれない俺は バムの隣で刻み続けている
エントリ10
探しもの 空人
きみはほんとに のんきだよな
さっきまで あんなに泣いてたのに
もう寝息をたてて眠ってる
ぼくがこうやって見つめているのに
愛なんてものは どこにも見当たらないよ
エントリ11
マテリアル ぶるぶる☆どっぐちゃん
まっくろだまっくろだまっくろだまっくろだまっくろだまっ
まってくれまっくろだまっくろだまってくれまっくろだまっ
オレは足りないんだまっくろなんだ埋まらないんだどうしようもない
どうしようもないどうしようもどうりよふもどりふちみろり
あちえでかけこぶしてなはびいき
いfこえい@あpkfg
にredram
み666
ちふぁpgktらえあp
るfこるれおgg
さじおおs
ば
く
く
けふこえて
あたしの目の前には砂漠(そう裁いたから? そう裁かれたから?)
どかどかどかどかどかだと100tトラックが次々と落下している
いつかここには城が立つだろう
その王を
あたしは愛するだろう
エントリ12
ミルクコーヒー 結城森士
傾斜/午後の光
射す灰色の空は
立ち並ぶビルの
すぐ上に落ちて
夕焼けが始まる
前の憂鬱を伴った眩しい公園で
少女はぶら下がっていた/傾斜
「久しぶりに土の匂いをかいで
あの日の透明感に帰りたい」
と願う
眩しい憂鬱の灰色は
ビルの其処まで落ちて
空は何故か柔らかい
ミルクコーヒーのように
温かく、少し苦い
エントリ13
Music is イグチユウイチ
ベットの端と端に座って背を向け合う、
そんな10月の朝もある。
裸のままで、頭にバカでかいヘッドホン。
曲名がわかるほどの音漏れは、
当てつけのようなハードコア。
あいつの周囲には、
ミニカーくらいの人工衛星が3つ
ブンブンと飛び回っていて、
なんでこんな事になってしまったのか、
理解はできても 納得できない。
いつもの事だけど。
耳障りな音漏れを BGM に、
午前7時のワンルームは 窓から差し込む光で満ち始めて、
不意に 日曜日の朝の教会の入り口を思う。
神様、どうやったら俺は
あそこにいるヘソ曲がりの女の子を
許す事ができるでしょうか。
ワガママで 理不尽で 寝相も寝起きも悪くて
もううんざりなんです。
本当に。
でも。でもね。
もしも、このノイズのようなハードコアが
素敵なピアノのバラードに変わって、
吊り上がったあの瞳が じわりと涙でゆれたら、
少しは許す気になれるかも知れないな。
そんな事を考えていたら
大きなくしゃみがして、
人工衛星がひとつ飛んできた。
鼻をすすってる奴に毛布を投げたら、
ヘッドホンが外れて
部屋に響くは、爆音の洪水。
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