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第69回詩人バトル

エントリ作品作者文字数
1緑色の花カフカ133
2日常風景351
3Boston Calling虹村 凌245
4みる沙汰263
5ひまわり早透 影310
6夜になると、魚はいとう225
7いろいろなことを考えていく霧一タカシ151
8雨音トノモトショウ370
9瞼が丘九丁目kikki909
10 死出ノ村散策 ヨケマキル 425
11 ハウレイデヴィッドソン彗星 ぶるぶる☆どっぐちゃん 313
12 何だかよくわらない涙さ 空人 446




 


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エントリ1  緑色の花    カフカ


 エアプラントってゆうの。知ってる?

と言って
あなたが持ってきた砂漠の植物は
何でもすぐに枯らす僕の家に長くあった
あなたがあの日
僕の家を飛び出してからすぐに
その砂漠の植物とやらは蕾をつけ
花を咲かせた

緑色の
それはおよそ花らしくも無い花

 あなたに見せて、
 一緒に笑いたかった。

作者付記:砂漠の奇跡だそうです。
根っこもなく葉っぱだけみたいな植物で、葉っぱから空気中の水分を吸収して、水なしで長い間生きている植物です。
愛情を十分に与えなくなると枯れるのは、植物に限ったことではないということですね。






エントリ2  日常風景    双


空が晴れてるよ。
雲がなくて綺麗だな。
猫が居たよ。
しっぽをぷらぷらさせてて愛くるしいな。
子供達がいるよ。
何も考えてなくて純粋な目をしているな。

なんでもない日常の日々がとても素晴らしく思えるね。
苦しくなっちゃって行き詰まっちゃったら一度全て忘れて深呼吸するのもいいね。

何も考えてなくてただ前を見つめて生きれたらどれだけ素晴らしいのかな。
何でも後のことを考えて行動に出来ない僕はダメなのかな。
純粋になったら楽になれるのかな?

そういうわけでもないよね。
純粋に生きている分、それだけ後で受ける痛みだってあるんだもんね。

そんなことにも気付けないで、人を羨ましがってる。
必然なのにね、自分は自分。他の誰でもないのに。
何故だか他の人が羨ましいや。

そんなことを考えながら公園の小さなベンチから青くはれた空を見上げていた。





エントリ3  Boston Calling    虹村 凌


真夜中の詩人が歩き出す
まだ眠らないのは
月も星も眩しいから
銀色の煙が美味しいから

愛だとか傷痕だとか
嘲笑を抱えて孤独を彩る
真夜中の詩人が歩き出す

聞こえているか?この詩が
涙は乾いているか?その頬の
歩いているか?その足は

真夜中が呼んでいる
壱弐参死壱弐参死
真夜中を呼んでいる

指の先まで醒めている
目の奥まで澄んでいる
真夜中の詩人が歩き出す

昨日 君を指した満月が
今夜 この胸を突き抜けてゆく
心の臓まで届いている

聞こえているか?この声が
聞こえているか?この涙が
聞こえているか?この足音が

真夜中に 呼んでいる






エントリ4  みる
    沙汰



「ねえ、ついてきてくれる?」

 彼女は僕に尋ねました。


 星祭りの日。
 
 よるの光が水面をただよっていました。

 でも、優しいはずのその光も、目に痛いものでしかなかったのです。 



「ねえ、ついてきてくれる?」



 僕は、俯くことだけしかできませんでした。

 彼女は、ふっとため息をついて、やぐらへと走りさりました。



 このひ、彼女はそらに瞬く星になりました。

 望めば、僕もそのとなりで瞬くこともできたでしょう。

 でも、そうなれば互いのひかりで顔を見ることもかないません。



 今日も、精一杯の力で飛び上がります。

 彼女を、みあげることができるように。




作者付記:第19回挿詩バトルの詩と対になるものです。
http://www3.alpha-net.ne.jp/users/tamo/500/19/19sashishi.html#1

ぜひ、挿詩バトルの課題絵をみながらおよみください。






エントリ5  ひまわり    早透 影


ひまわり お前はどうして
ひまわり いつも遠く みつめているんだ

ひまわり 暑い陽射しを受けて
ひまわり あの子の 顔 見つめて笑えるんだ

寒い冬に お前のその顔が
あればどれくらい 人は癒されるだろう

母ちゃんに叱られて 隠れた田圃に寝転ぶと
赤い蓮華が俺を見て なぜか笑って見えた
あの懐かしい 本当に懐かしい
あの あの 時代に
あの あの 時代に みんな 連れて
連れて行って くれ

灰色の空を お前のその真黄色い
ひまわり その生命の 強さを与えてくれ

あの頃の俺と同じ 子供たちに
同じくらいの 強さの正しさを教えてやれ

ひまわり ひまわり ひまわり
ひまわり ひまわり ひまわり
ひまわり ひまわり
ひまわり ひまわり 
ひまわり
ひまわり
ひまわり





エントリ6  夜になると、魚は    いとう


夜になると
魚は目を閉じて
消えていく泡の行く末を思う
消えていく
自らの姿に思いを馳せ
静かに
目を閉じている

夜になると
魚は目を閉じて
自らの見ることのなかった風景を見る
魚は野の花を知らない
魚は四つ足を知らない
木漏れ日も
雪の冷たさも
風に煽られる木のしなやかさも知らない

夜になると、魚は
えら呼吸の刹那に溢れる深海の夢を一粒
そっと放り出し
立ち昇るその姿を見つめる
尾びれも背びれも
動かすことなく
消えていくその姿に
思いを馳せて
目を閉じたまま
闇の中でもう
朝を迎えることなく





エントリ7  いろいろなことを考えていく    霧一タカシ


歌を歌う。
勝っていく。
相手を倒す。
戦う。
勝つ。
歌を歌う。
戦う。
相手を倒す。
いろいろなことをする。
戦っていく。
歩いていく。
戦っていく。
いろいろなことをする。
いろいろな歌を歌う。
楽しく歩く。
いろいろなことをする。
いろいろな赤を作る。
外を歩く。
歌を歌う。
新しい曲を作る。
スタジオで曲を作る。
戦いに勝っていく。


作者付記:これからも詩を書きたいです。
いろいろな詩を書きたいです。
戦いに勝っていきます。
いろいろなことをします。
いろいろなことを考えて書きました。
いろいろなことを考えて詩を書いていきたいです。







エントリ8  雨音    トノモトショウ


幸か不幸か
私(イレモノ)は
私(ニセモノ)で
すでに恥じらっていたのです

排水溝を巡って
夢食虫の甘い汁を啜って
情夜と誤解と固形物の反復に
そろそろ飽きていたのです

  あわよくば
  貴方の額を濡らしたいのよ
  さもなくば
  明日の朝を拒みたいのよ

ガラス細工の隔壁に
絶え間なく打ち付ける三拍子か
テーブルに並んだ瓶詰めの素粒子か
薙ぎ倒して頂きたく
体ごと重ねて頂きたく

  思わずア
  零れてしまうア

快か不快か
私(ニセモノ)は
私(イレモノ)で
とうに振り切っていたのです

仄暗い帰路でした
頼れるものを失いました
それでも溜息が落ちました
けれど泣かないと決めたのです

耳障りな雨音でした
置き忘れた大切な傘でした
もちろん前髪に触れました
けれど泣かないと決めたのです

垂れ下がった空に際立つ 私は
ニセモノでも イレモノでもない 私で
もう泣くこともできないと教えてくれたのです






エントリ9  瞼が丘九丁目    kikki


これは、まぶたでしょうか。

私は気づくとやわらかな上に立っていました。
なにかにしがみつかなければ、
すぐにでも地面に叩きつけられることでしょう。
まぶたが開いてしまえば、
私は宙に放り出されることでしょう。
それはとても恐いことです。

ここはまぶたのようです。
だけれどまぶたからの景色はとても眺めが良いので、
私はしばらくの間そこにしがみついていました。
立っているのは疲れるので、
まつげにちょこんと腰かけて、
右手でまつげをつかんで、
だけれどまぶたは一向に開く気配がなかったので、
私はそのうちにまぶたの上にいることを、忘れていました。

気づくと、日は既にかたむいていました。
私はまぶたの上に乗っていたことを思い出して、
そしてどうしてまぶたが開かないのだろうということに、
気づいていました。
本当にここはまぶたの上なのか。
確かめるために私は冒険をすることにしました。
日が暮れるまでに戻ってこなければ、道に迷ってしまいます。
私はまぶたのそばに垂れていた髪を伝い、
下へおりていこうとしました。
その時です。

私が離れた、やわらかなところから何かが盛り上がり、
ぞろりと何かが飛び出し、宙に放り出されて、
ぐちゃりと地面に叩きつけられました。
つかんでいた髪の毛が、私が下りようともしていないのに、
自動的に私を下ろそうとします。
ずるり、と。
私の体がバランスを崩すのがわかりました。
それでやっと気づいたのです。

まぶたから湧き出てくる、うじむしたち。
ずるりと抜け落ちてゆく髪の毛。
地面に転がる潰れた目玉。
これは、生きていないもの。
これは私でした。

なにかのために生きることすらせずに、
ただのたれ死んで、
みんなにほったらかしにされた私の、
僕の、
ぬけがらでした。

僕はどうしようもなく気がおかしくなりそうで、
僕は宙に放り出されて、
恐ろしさに顔を覆いながら、生きなおしたいと叫びながら、
それでもまつげに腰かけて見ていたあの眺めが、
悲しいぐらいきれいだったので、
僕は、
それだけでもうじゅうぶんなのかもしれないと、
顔を覆うのをやめました。
叫ぶのをやめました。
目を開きました。

夕焼けは、とてもきれいでした。

僕は太陽にお別れを言いました。
僕はこの世界にありがとうを言いました。









エントリ10  死出ノ村散策    ヨケマキル


ここ
この世でなく
あの世でない

この村のねじれ
世界のねじれであり
なんというべきか
無気力な
そう
とても無気力な




ノド渇いて

飲んだら
金魚鉢の水でしたので
口中生臭くシビれ
心地よし

ここは
はじめての木賃宿
ややカビ臭く
死臭にいたる

散策のため
夜 外へ出て
歩いていると
空気まで生臭いのは
この土地が漁村であるからでして
当たり前なのです
それにしてもなんともうすらさみしいところ
街灯もちらちら切れそうで
しばらくすると
窮民などが物乞いをしてくるのですが
何しろその人達が裸なもので
嫌でした

しかしボクは顔では笑っていたもので
すれ違った御婦人などは
自分が笑われたと勘違いし
こちらをにらみつけてきたので
何しろよそ者であるから
後で仕返しなどに来られては困るなあ

そんなこんなで宿に戻ると
寒気がしてきたので
さっきの窮民になにか恐ろしい病気でもうつされたのかと思い
すぐに布団に入ったんですけど
掛け布団の柄がずいぶん鮮やかな色でしたので
なんだか病気がひろがってくるような気がして
何も掛けずに寝ました





エントリ11  ハウレイデヴィッドソン彗星    ぶるぶる☆どっぐちゃん


ハウレイデヴィッドソン彗星が落ちて全て燃え落ちても
そんなことくらいじゃ
何も
信じられないよ


燃える炎の中 マネキン人形を持って歩く
歩き回り折り曲げる
引き千切る 伸ばす 叩き割る 砕く 燃やす 灰にする
音楽を聞かせる 食べ物を与える 燃えさかえるエルジャパンの表紙写真
炎のかけらになりながら ふわふわと飛び続け
引き千切る 縫う 溶かす 六億のマネキンを ヴォーギングマネキンを
縫い合わせる
バベルの塔のような そのフォルム 六億の手が 空を 掴む
                 六億の足が 空を 登る

もうすぐだもうすぐもうすぐだ

瞳にハウレイデヴィッドソン彗星の欠片をねじ込む
人形が動き出すもうすぐだもうすぐもうすぐだ
もうすぐだ

頑張れ





エントリ12  何だかよくわらない涙さ    空人


幼い頃 磯辺で転んで泣いていた僕に
ばあちゃんは しゃがんで
その涙を しっかり覚えておき
と言った

小学校の 合唱コンクールで優勝したとき
うれしくて泣いていた僕に
またばあちゃんは
その涙を しっかり覚えておき
と言った
ゆがんだ目で ばあちゃんの濃いしわを見つめていると
大人になるとな
痛くて流す涙や
悔しくて流す涙や
うれしくて流す涙のほかにも
いろんな涙があるんだよ
と話してくれた
どんな涙があるの?
僕がそうきくと
何だかよくわからない涙さ
くしゃっと笑った

大人になった僕は もう
どこかが痛くても 泣くことはなくなった
ちょっとくらい悔しくても 泣いたりはしなかった
うれしくても 人目をはばかって涙をこらえた
そのかわりに
だれかの歌を聴いて ひとり泣いた
岬にたたずむ人の 背中をみて泣いた
悲しいわけでも うれしいわけでもない
それでも涙があふれるのは
あのとき ばあちゃんが言った
よくわからない涙のことなのかな
「何だかよくわからない涙さ」
ばあちゃんの口ぶりを真似て つぶやいてみたけれど
潮風が 何か答えてくれるわけでもなく