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第84回詩人バトル

エントリ作品作者文字数
1うつせみ島田江 硯※データ無
2黄金の月矢凪祐591
3君の誕生日に不可思議な少年126
4うどん待子あかね238
5映画を作るストーリー霧一タカシ516
6オトコ空人183
7REHUJIN3737☆★594
8ルーシー・チェインソヲトノモトショウ360
9言葉を見たか大覚アキラ444
10麻雀Tsu-Yo269
11チョコレート紫生148
12君が教えてくれたこと桜はるらん428
13居眠りする地上の家々のkikki456
14キンポウゲヨケマキル348




 


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エントリ1  うつせみ    島田江 硯


夜の街に人だかり ひしめきあってわだかまり
たいして用事もないのに いいちこ飲んで出来上がり ああ

駆け引きばかり上手くなり 油断していたら吹き溜まり
強がってみせたって行き止まり やることなすこといいことないもんな

いつかの空の下で 僕は手を伸ばした
眩しくて遠くて 君の姿は壊れそうで

喧騒の巷を抜け出し やっとあなたに会えたのに
幻想ばかり立ち眩み やっとあなたに会えたのに

お日様僕をあてこすり いつものように照り返し
蝉の抜け殻に目をやり たゆたう僕の現人 ああ

いつかの空の下で 僕は手を伸ばした
眩しくて遠くて 君の姿は壊れそうで

便りのない日はひと眠り いい夢見てうとうとし
すき間風僕をひと撫でし 目が覚めたら風は止んでた 

目が覚めたら風は止んでた





エントリ2  黄金の月    矢凪祐


私がまだ此処に居るから
此処に生きてるから
この矛盾の螺旋階段の終わりが見えない
私は歩かなきゃならない
理由など無い
ただ歩いてる
もう何もかもどうにでもなればいいと
心を殺して
どれだけ憎んでも 蔑んでも
自分を捨てたいと望んでも
この両腕にきつく食い込んだ細い鎖が
足に絡まる蔦が
赦す筈もない

一体何を求めるのだろう
私は此処に堕とされた
ただそれだけ
理由など無い
出口は見えない
この無気味な暗闇の中で手探りするだけ
ぼろぼろになった私の翼で
あとどのくらい飛べるのだろう
羽ばたく度に零れ落ちる羽根が
足元に散らばり
錯綜するイメージが私を奪う
Satan=xx

思い出しては消えて行く
二度と同じものにはならない
一体誰に向けた何の為の言葉?
全ては虚しい作り事だと
所詮つまらない愚か者の戯言だと
嗤われるだけでしょう
こんなくだらない紙切れは
いつか私と共に灰になり
誰からも忘れられてしまうでしょう

私はたぶん生きたいんだと思う
どれだけ泣いても 苦しんでも
どれだけ叫んでも 祈っても
この闇に光は差さない
それでも私は此処に居るから
まだ此処に生きてるから
何かを探して彷徨ってる
この闇の何処かにある小さな出口
中を確認しては間違えたと後戻り
それが答えかもしれないし
そうじゃないかもしれない
永遠に答えの無いものを
求めているのかもしれない

私は此処に堕とされた
そして今此処に居る
理由など無い
理由などいらない
立ち止まって見上げた空に
黄金の月が輝いていた





エントリ3  君の誕生日に    不可思議な少年


君の誕生日に
二人で創った
星座をあげる

永遠の今から
僕と君が紡ぐ
物語にのせて

灯火が消えて
鼓動が止まり
涙が枯れても

誰かがいつか
微笑むような
秘密を隠そう

僕の誕生日は
二人で創った
詩を残そうか

陽気すぎると
涙の時節には
苦しみだから

神々が戯れて
意味などない
永遠を謳おう

作者付記:2006年09月09日 詩集「未踏の地」カテゴリー「諸行無常」より






エントリ4  うどん
    待子あかね


うどんはパンクだ と彼女は呟く
寒風吹き込む 立ち食いうどん屋
彼女は現場を ちらちら覗き込む
そのうどん屋は 現場のすぐ近くにあった

事件で事件で大変ですよ
一歩も外へ出るんじゃない
彼女は現場へ そそくさと近づく
そのうどん屋の店主は きっとみんな知っていた

恐ろしいことなんて ほんとうはなにもない
ガムテープガムテープ むちゃむちゃと食べる
口が え の形で 一時停止

かなしいことなんて ほんとうはなにもない
マジックテープマジックテープ むじゃむじゃと齧る
口が い の形で 止められていた





エントリ5  映画を作るストーリー    霧一タカシ


何かの本を読みたい。
いろいろな映像を作っていく。
本を映像化する。
映像化した音楽を作る。
映像が歌う。
その映画は面白く作る。
僕も楽しんで作る。
いろいろな本を買って作る。
本にはいろいろなことが書いてある。
僕が本を読んでどんな映画を作るか思いつく。
何かをやっていく。
いろいろな会議をする。
本を読んでいく時間を作る。
いろいろな会社で仕事をする。
いろいろな仕事をしたい。
それならまず何をしよう。
いろいろな本を読もう。
映画を作って勉強する。
映画は作ると勉強になる。
きれいな歌を作る。
何かが聞こえてくる。
いろいろなことができると思う。
懐中電灯を壊す。
光が消えていく。
電信柱が歌っている。
街の機械が仕事をしている。
何かを始めよう。
勉強を始めよう。
自信を持って小説を書く。
人形を壊して遊ぶ。
いろいろな映像を作って書いていく。
いろいろな本を作っていく。
その作業は映画を作る。
何かができていくことを知る。
作業する時間を勉強する。
何かを学んでいきたい。
僕は何かを書いて仕事をしていきたい。
いろいろな本を書いていく。
書いた本を出版する。
いろいろな映像を本を書いていく。
本にすると映像は役に立つ。
いろいろな映像を放送する。
夜に歌を歌う。
本を本屋のある場所で買う。






エントリ6  オトコ    空人


夫に抱かれたいと思わなくなった
そう感じたとき
ほんとうの家族になったんだな

なんとなく うれしいような かなしいような

そんな気持ちになったのは
もう何年前だろう
べつに いまも仲良しよ
夫を愛してるし 夫はわたしのもの
でもね
オトコの性欲は わたしのものではないのよ
そればっかりはね
じつは オトコだって わかってないんだから
単純そうに見えて オンナよりも複雑
ねぇ わかるかしら






エントリ7  REHUJIN    3737☆★


単に愛した人と結婚したら

その人が有望株だったらしく、出世して

そしたら、単なる奥さんだったのに

私の肩書きも偉くなっていった

奥さんが奥様に最後は夫人になっていく

でも、なんか……わたしじゃない

この理不尽はなんだろうか?

わたしの手柄じゃないのにさ



「あたり前だ」と

困惑顔をして夫が言うから

ためしに別居をしてみた

幸いしがらみも無いから

夫人をあっさりやめてみよう

パートでもしながら

少し食べれればそれでよし

けれどそのうち

夫人から「元夫人」とか騒がれた

癪にさわる

わたしじゃない気がしてパートをやめた



夫にひさびさにあう

恋焦がれて結婚し

まぁ嫌いじゃないし

もどってみた

理不尽だろう

勝手に出て行って

勝手に帰ってくるのは

それもそのはず

お若い婦人



やられたな

こんな展開もあったか



そこで今度は再婦人

好きな仕事をしまくった

お化粧させて服着せて

わたしの今の生きがいは

この「-REHUJIN-」の店

RE HUJIN

もう一度、女に戻る

単なる、ただ単なる女に



世の中本当に理不尽だ

そう思ったお客様!

あなたはぜひ当ブランドを

召しませ、召しませ

なお、MEN’sで

「-KON・WORK-」も

やっております

あなたもぜひ当ブランドを

召しませ、召しませ

困惑したり、理不尽さを感じたりしたら

私の作った服をきて

世の中にいってやってください

「この困惑のスーツいいよな」

「この理不尽の服すきなのよ」

そうして皆で

困惑と理不尽を謳歌しようじゃないですか

作者付記:ブランド名に使用されていないことを願います。
ここからブランド名を取ったら、知的財産権侵害です。
アパレル関係の方は一言告げてください(笑)。






エントリ8  ルーシー・チェインソヲ    トノモトショウ


18の時にホームセンターで出会った男
臆病なくせにスプラッタな趣味があって
これ僕のとっておき古いビデオなのだが
ざらざらの映像にはっきり映し出される
切断された人間の足が床を埋め尽くして
すげえすげえルーシー観てみろよすげえ
血の色で画面が覆い尽くされて何もかも
ブラウン管に男の醜い顔が反射して光る
ついでにマンコにバイブレーター挿して
俺もいつか人を殺すんだすげえだろとか
まだ狂ってもいないイントネーションで
ムカついて私がアンタの手足切り刻んで
脳味噌やら内臓やら全て無茶苦茶にして
ただの肉の塊にして瓶に詰めてやろうか
思ったけれど言わなかった私は偉いけど
言わなかったけれど実行した私は酷いな
なんてこれっぽっちも思わなかった私は
ホームセンターで立ち尽くしながらただ
神様どうか私に何か目的をくださいって
祈りながら男の手を握っているのでした





エントリ9  言葉を見たか    大覚アキラ


君は

言葉を見たか

路地裏の突き当たりの
饐えた臭いのする真っ暗闇の中から
ゆっくりと立ち上がる言葉を見たか

君は

言葉を見たか

見知らぬ星座の片隅に
燦然と輝く小さな星から
刺すように放たれる言葉を見たか

君は

言葉を見たか

突き刺さすような悲しみと
抉るような怒りに絶えながら
あの人が噛み締めた唇に滲む言葉を見たか

君は

言葉を見たか

繋がれた手と手の間の
ほんの僅かな隙間に
ゆっくりと灯るように光る言葉を見たか

君は

言葉を見たか

薄曇りの重い空の下
呆然と突っ立っている摩天楼に
流星雨のように降り注ぐ言葉を見たか

君は

言葉を見たか

朝焼けの光の中を
黒々とした点の群れとなって
東に向かって飛んでゆく言葉を見たか

君は

言葉を見たか

駅前の雑踏の中で
家路を急ぐ人々の疲れきった靴底に踏まれ
薄汚れてしまった言葉を見たか

君は

言葉を見たか

穏やかな寝息を立てる幼子の
ふくよかな唇の間から零れ落ちては砕け散る
ガラス玉のような言葉を見たか

君は

言葉を見たか

雨上がりの冷たく湿り気を帯びた
震える空気の中に
七色の虹を描く言葉を見たか

君に

言葉は見えているか





エントリ10  麻雀    Tsu-Yo


なぜそこに居るのか分からなかった
気が合う仲間たちから離れて
早く一人になりたかった
そう思えば思うほど
一人になることが怖かった
通いなれた八王子の雀荘に
喪服姿の若者が四人

「最低だな」と
みんな心の中では思っていただろう
本当に最低だったのだ
それは葬式の帰りに
麻雀をしていることがではなく
友人が自ら命を絶つまで
俺たちの誰ひとり
その痛みに気が付かなかったことが、だ

脂や手垢のこびり付いた雀卓の上で
麻雀牌が何度も何度も倒され
その度に俺たちの立場は変わっていった
運が良い、とか
運が悪い、とか
そんなものでは片づけられない何かが
そこには確かに在るような気がした







エントリ11  チョコレート    紫生


はい、どうぞ

これ、義理じゃないよ

人情だよ

人情ものってちょっと苦手
だけど年に一度くらい
いいかな、と思って

ほら、うちって再婚じゃん
おやじは義理のおやじだけど
義理っていうより
人情の親って気がするね

気持ち悪い?
大丈夫、おこづかい
せびったりしないから

あーあー
泣くなよ、おやじ

って、笑ってンのかよ!
チョコ返せ





エントリ12  君が教えてくれたこと    桜はるらん


飛べないヒヨコを無理に飛ばした
それはたぶん飛べない僕の代わりに
学校の帰り道に三十円で売られていた君

君は空を飛べるかい?
僕がビルの屋上から飛び降りる代わりに
君が飛んでごらんよ、
君の命は僕の手のひらの中にあるんだよ、
そんな残酷な小学三年生の気持ち

君が震えて泣いているのに
僕は本棚の一番高い場所に立たせて
背中を向けて知らんぷりしたんだ

飛べるかい?
飛べないよね、
君は僕と同じ一生飛べない鳥だもの

でも次の瞬間、君は飛んだんだ!
翼もないのに飛んだんだ
ありったけの命を振り絞って

床に叩きつけられ泣いている君を
僕は手のひらでゴメン、ゴメンよって、暖めた
それはたぶん誰も僕にしてくれなかったこと

だけど次の日の朝
君は冷たくなって死んでいた
僕が殺したの?
僕が殺したんだ

君を小さな靴の空き箱に入れて
黄色いタンポポやシロツメグサを
いっぱいいっぱい敷き詰めて
泣きながら夕暮れの多摩川に流した

君の泣き声が今でも
僕の胸に聞こえてる
震える声で泣いている
ピイピイ、ピヨピヨ泣いている

なぜ、私を飛ばせたの?と、







エントリ13  居眠りする地上の家々の    kikki


足のなくなる夢を見た

明くる日
そっと旅立つことにした
ボストンバッグには花びらを敷きつめた
赤い 椿の花だ

空は白んで
風はたおやかに
光は痛々しく心に染み
地上には格子状の影が連なり
触れ合わぬように密に近づく家々は
声を忘れた人の群れのようです
私の群れのよう

9時56分発こだま537号新大阪行き
がらんとした車内は
たくさんの町を知っていた

 赤い屋根
 あぜ道
 黄緑のビルディング 
 絡み合う電線
 地上は
 いろんな音がするよ
 車や
 ヘリコプターや
 さえずりや鳴き声や
 笑い声や
 気のふれた声も

ががごがごががががが と
不器用な話し方で

 戻ろう

午後を少し回る時
留め具が外れて
花びらがばらばらと空に飛び出した
そんな夢を見た

野良猫のちょっとした仕草だとか
雲の名前とか
あの人は今何をしているのか
とか
知らないことがたくさんある
知りたいことがたくさんある
知りたくないことも
今日も三字橋のたもとには包帯靴の老人が座り
国道は車輪でせわしなく削られ
街路樹には鳥が集い
そして私はこれから元に戻って
弱々しく呼吸を続けていくのだろうけど

でも
少しだけ変われるだろう







エントリ14  キンポウゲ    ヨケマキル


誰かのクラリネット
そして横をすり抜けると
コンビニエンス2階 
まほろばに至る

絶滅動物図鑑の脇
堕落したリンドバーグ
生まれたてのそのOLの死体は
森のにおいの

夜鳴鳥が幽霊を捕らえる日
血だらけ
統合されし世界中の赤色
消えた
這えば立て立てば歩め
仏の切り裂いた腹に人形や電話機を入れる

めまい 耳鳴り 爪の異常 動悸
小さな小さな体の変化に人はおびえる

浮きあがるきりきりきり
人体図に似たそれ


幻影のバス青いバス
野焼きと腐った果実の複合された
憎しみや恨みにも似た
それがたちこめる沼地のプラットホームである
外灯がめちゃくちゃに明滅していて
とにかく冷え冷えとしていて
だからそのセルリアンのバスは
せわしなくエンジンをふかしながら急発進し
アパートのOLを轢き殺す

夕暮れ
キンポウゲが咲いている
眠い
狂おしく