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第92回詩人バトル

エントリ作品作者文字数
1本を買いに行くソキの歌。霧一タカシ666
2ねえ。葉月みか108
3夏の記憶ちくたく212
4燐寸の火植木206
5極美譚矢凪祐189
6School桜はるらん430
7トノモトショウ976
8眼球録画は脳内工房で銀河紫生457
9ブルー石川順一112
10喧嘩後の日常氷雨水樹437
11エレベーター係Tsu-Yo114
12サディスティックイグチユウイチ112




 


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エントリ1  本を買いに行くソキの歌。    霧一タカシ


本を作る。
時間を買う。
映画を作る。
本を買う時間を作る。
本を作る時間を買う。
映画を作る時間を作る。
本を買う時間を作る。
本を買えば役に立つ。
映画を作る。
映画は話すことを考えると上手に作れる。
映画は勉強すると上手に作れる。
本を買う時間を作る。
本を買えば生きる上でどんなことが役に立つかわかる。
僕は賢く生きたい。
本をたくさん買って勉強したい。
貯金をして本を買うお金を貯めたい。
本を買った時嬉しい。
いろいろなことが分かるという喜びがある。
その本を何回も読んで勉強したくなる。
話を買う。
本を読む。
映画を作る。
僕は新しい小説を書ける。
ソキは歌を買う。
ソキは映画を観に行くのが好きだ。
映画のストーリーを考える。
どんな人が出てくるか考える。
テカラは街を歩いてどんなものを壊そうか探していた。
テカラはいろいろな飲食店を壊してやろうと思った。
テカラは食べたものを吐いた。
いろいろな物を食べた。
いろいろな人の料理を食べた。
いろいろな人の話を書いていく。
話をしながら料理を食べるとおいしい。
僕は料理はおいしいものを食べるべきだと思う。
そうすれば仕事のやる気も出る。
仕事をがんばればいろいろなことができる。
何かができる。
いろいろな歴史のある街を歩く。
歴史のある街の建築物は見てて楽しい。
歴史はいろいろなことを教えてくれると思う。
僕はそういう街を歩く時必ず飲食店を探すことにしている。
旅行中に飲食店で食事をすると多くのことがわかる。
食事は多くのことを教えてくれるのだ。
おいしい食事を食べるとやる気が出る。
いろいろなことができる。
本を読むといろいろなことができる。







エントリ2  ねえ。    葉月みか


私の言ってること、わかる?

って

Are you with me?

って

言うんだって。



それだけだけど。

それだけで
泣きたくなる。

泣きたくなるけど
涙が出ない。

のは

コンタクトのせい

だよね?



ねえ。

そばにいて。
そばにいて。


ねえ

ねえ。



Are you with me?





エントリ3  夏の記憶    ちくたく


しゃべるように歌えばいいのよ

僕はあぐらで
へたなギターでちょっと歌う
横流しに座った彼女のひざ
僕の太ももにふれ
あけはなした窓のそとで蝉が啼く

ほら 歌えるでしょ

僕が歌うのはなんの歌だったか
彼女は誰だったろう

アパートの六畳に
いかれかけた扇風機が回っていたかもしれない
遠くで踏切りの音が鳴っていたかもしれない
窓にはカーテンがなかったはずだ

ほら 歌えるでしょ

彼女は得意げに微笑む

あの日とかわらぬ入道雲
ちょっとずつ
ちょっとずつ
茜色

遠くの夏





エントリ4  燐寸の火
    植木


賢しらな彼や彼女は、夜空に散らばる想いの中から戸惑いを選びだし、細く伸ばした呼気で互いを繋ぎとめた。天地が交錯する場所で絡み合った指は、仄暗いグラデイションとなる。白壁の蔦はすっかり葉が落ち、見知らぬ人の背中に描かれた線描画を思い出させる。ボックス席で無言のまま駅を三つ過ぎた頃、季節はさよならを言わずに降りていった。手を振る人は車窓に映る右手の影をじっと見続ける。あてど無い余白に軽々しく首まで浸からぬように。






エントリ5  極美譚    矢凪祐


悲劇で幕を閉じた舞台のあとで
「美しい」と君は言った

その潤んだ瞳も
微笑する口許も
白く細い腕も
僕が全部 呑み込んであげよう

〈瞬間〉は〈永遠〉となる…

描き上げた画布にナイフを立てて
切り裂いたら 全て壊せたら
楽になるのかもしれない
渦巻く感情を 言葉たちを
握り潰してしまおうか

恐怖に潜む美を見せてあげよう

さあ怖がらないで
僕の傍においで

このピストルで
君の心臓を撃ち抜いて
僕もすぐにいけるから





エントリ6  School    桜はるらん


朝の暗いうちから僕は学校に行く
校門はまだ開いてないから乗り越えて入る
生徒さんたちが学校へ来る前に
すべての教室を綺麗にしておく、
それが僕の仕事だから

各教室のゴミを拾い集め焼却炉で燃やしていると
校庭にバスケットボールが転がっていて
僕は明け始めた空に向かってシュートする

いつものようにモップで床を拭き
椅子や机を揃えていると
中から一冊の教科書が落ちて
僕は胸がドキドキした

誰もいないのを確かめてから
教科書をシャツの中にスッと隠した
呼吸が早くなるのがわかる

門を乗り越えて夢中で走った
誰かが後ろから追いかけて来るような気がした
町外れの川原で教科書を開いた
僕には何も読めない
この国の言葉で書かれているのに

いつも両親から
貧しくても盗みだけは、しちゃいけないよ、
そう聞かされていたのに 今ごろ教室では
教科書が失くなったと大騒ぎしているだろう
明日にでも僕はクビになり捕まるかもしれない

それでも欲しかったんだ
たとえ何が書かれているのか
いまはわからなくても
この国の言葉で書かれている本が






エントリ7      トノモトショウ


女・17歳・高校生
中学の三年間で計五人の男子に告白されそれ
まで全く容姿に自信はなかったがもしかした
ら自分はモテるんじゃないかと思い始め化粧
でより綺麗になりたいとかブランドもののバ
ッグを持つことで何かしらの付加価値を得た
いといった欲求が生まれた彼女は親の勧めで
女子高に通う羽目になってせっかく綺麗にな
っても見てくれる男子がいないんじゃ話にな
らないわと思い続けながら電車に乗っている
と同い年くらいのイケてる男子にナンパされ
て付き合うことになったがセックスをした直
後から全く連絡が取れなくなってしまい私も
しかしたら遊ばれたのかも知れないと悔しく
なって泣いた

女・23歳・サービス業
有名ではないがそれなりに頭の良い大学を出
た後たいした苦労もせずに貿易関係の企業に
就職が決まったが社長の脱税が発覚して一気
に倒産まで追い込まれ初任給も貰わぬまま失
業してしまった彼女は気持ちをすぐに切り替
えて再就職を目指したがツイてない時はとこ
とんツイてないもので父親が多額の借金を残
して蒸発してそのせいで母親が倒れて入院し
てしまいどうしようもなくなってデリヘルで
働くことになり小汚い醜男達のペニスを咥え
ながら一体私は何がしたいんだろうと悲しく
なってきて泣いた

男・45歳・営業
人の良さと要領の悪さが出世の邪魔をしてい
ると気付いたのは最近のことで未だ係長の机
に座りながら自分より年下の部長にネチネチ
と嫌味を言われるのは耐えられないことだが
妻や子供を食わせていかなきゃならないし甘
えたことは言ってられないのだが今日もつま
らないミスを犯して残業をする彼は実は妻が
浮気をしていることも知っていたしその相手
があの年下の部長であることも知っていたが
知らないフリをすることで自分の精神を保っ
ていたと言えるのだが妻があの男の子供を妊
娠し産みたいから別れてと言い出した時には
さすがに腹が立って泣いた

男・72歳・無職
長年連れ添った妻の病状が悪化し医師にもう
長くないことを知らされて初めて妻の存在の
大きさを実感するとは情けない話だと思って
これまでずっと迷惑ばかり掛けてしまったこ
とを謝ったがあなたがそんなことを言うなん
て明日は雪でも降るんじゃないかしらと微笑
む彼女を心から愛しく思ったその日に妻は逝
ってしまったが翌日本当に雪が降ってきてあ
いつは俺のことなら何でもわかってやがると
苦笑しながらも彼はただ泣いた





エントリ8  眼球録画は脳内工房で銀河    紫生


私の眼球は私のものであって
私だけのものではない

それは ぽっかりと空いたドーナツの
穴であり 闇であり 虚であった
あるいは 蒼穹に穿たれた銀河のうずまきであり
清浄にして無量大数
テラからナノへと飛翔する記録

そう すべては記録に過ぎない

死にゆく戦士と死について
語り合えたら良いと思う

愛を知らずに育った人と
愛のかたちを語り合うのもありだと思う

その時私達は唖のように饒舌な沈黙を
夕陽の色で享有しあうだろう

彼らの眼球に映じる
ぼうぼうとふきさらされた灰色の孤独 虚ろ 戦き
それらのすべては人々の根源に由来し
人々と地続きの憂鬱であり痛みであり絶望である

と同時に

何人たりとも受け容れない たった一人きり
逃げ場のない無常劇であることに違いはない

血膿の吹き出る海馬だの
軋みを上げる魂だのに

――そんなものに名前をつけることが
果たして美しいありかたなのか

それでも彼らの命は彼らのものであって
彼らだけのものではないのだ

たとえそれこそがもっとも愛すべき誤謬にして
死にさえ値する驕りであるにしても

私の眼球は私のものであって
けして私だけのものではない





エントリ9  ブルー    石川順一


無くなって行く事で死んで行く
過去をつかまれ、今をつかまれ、将来をもつかまんとするこのしなやかな力
サザビーズ商会の様な
十二本の矢の様な
もう浮かばない
何も浮かばない
浮かばない事ばかりが浮かび行き
とても浮かばれないなとまくし立てた





エントリ10  喧嘩後の日常    氷雨水樹


*

ゆれるレースカーテンを染める茜色の空の下で
私は、泣いていた
あなたと喧嘩をして、悔しくて

隣家から秋刀魚を焼くにおいがする
そのにおいに釣られて飼い犬がほえる
ほえる声に刺激されて、また涙が溢れる

泣けるときはいくらでも泣けてしまって
レースカーテンの向こうに一番星が見えても
やっぱり悲しくなってくる


**

心が折れやすかっただけで
優しさなんて、今は要らなくて
心身ともに冷え切ってる

そんな風に色んなものを拒み続けて
だけど、高望みばかりしすぎて
自分が破綻しそうなのに無理ばかりしてた


***

気付かせてくれた人は
のほほんと自分の世界に
どっぷりと浸かったまま出てこない

ごめんね、ごめんなさい
本当に、申し訳ありません
私が不甲斐ないから、いつもあなたを困らせてるね

謝っても謝りきれず
幼すぎる自分を恨みきれず
それでも確かに、私達は一心同体なのだ


****

いつの間にか夜の帳に包まれて
義母が「ごはんですよー」なんて言って
(食事の支度は義母が主導権を持っている)
私達は返事をしながら食堂に向かう


涙を氷の下に隠して





エントリ11  エレベーター係    Tsu-Yo


エレベーターの中で
「開」というボタンを押すと
涙が止まらなくあふれ出た
何かを受け入れるということは
何かを拒絶することと同じくらい難しい
一人またひとりと乗り込む人を
か細い指で支えながら
あなたの番まで
ブザーが鳴らないようにと
祈っている





エントリ12  サディスティック    イグチユウイチ


お前は 犬だ

所詮 あいつの飼い犬だ

誰もがすべて 誰かの愛すべき犬だ

犬が犬を産んで 殖えすぎて

自分が犬かどうかもわからなくなって

犬のくせに 犬じゃないとか言い出して

そもそも犬って何か なんて そんな事を

俺に聞くなよ 犬のくせに