| # | 題名 | 作者 |
|---|---|---|
| 1 | グレイ | りんね |
| 2 | 明晰夢 | 眠香 |
| 3 | 母に捧ぐマリエ ★ | 葉月みか |
| 4 | 我一個人 | 玄 |
| 5 | Shione(潮音) | AYABE |
| 6 | パスタヴィーノ | 有機機械 |
| 7 | へえげる | Rio |
| 8 | また、あした。 | 彩加 |
| 9 | 罰 | rin |
| 10 | 乾きの壺 | TAKUYA |
| 11 | 心象堕胎 | 水原優哉 |
| 12 | bye-bye, bluebird | 岡さやか |
| 13 | non title | 岡野貴司 |
| 14 | 晴れているよ。 | 3104 |
| 15 | 過ぎゆくもの | ちあきひかる |
| 16 | グッバイ | N・アームストロング |
| 17 | 螢 | K.. |
| 18 | オーヴァー・ザ・レインボー | 大覚アキラ |
| 19 | グラス | 広河陽 |
| 20 | 鼓動の響く夢 | 海音 |
| 21 | 123456789 | 阿部瑞穂 |
「うら」の「うら」は「おもて」だと信じ込んでいたころ 世界は「いいもの」と「わるいもの」に二分され 人々は「てき」と「みかた」に区分されていたでしょう? 「正当性」よりも「わかりやすさ」 あたかも不純物なんて存在しないような世界に 鎖骨の辺りまで浸りきっていたでしょう? モノクロ写真が白と黒でできていないことに気付く そんなたわいもないことで崩壊してしまうような価値観と それに裏打ちされた「やさしい」世界に疑問も覚えずに・・・・・・ たった一つずつの「白」と「黒」の間に存在する 無限の「グレイ」に目が向いた時の 感動と畏れのないまぜになった不安 本当は自分が「白」でも「黒」でもないことを知った その瞬間の痛み あの痛みをもう一度感じたくてね
冷たい夜に降る雨 冷たい夜に降る雨を、優しいと感じた。 あの子の瞳が僕の頭から離れない。 「何が嫌なの?」と聞かれたら、 僕は間違いなく、「貴方の瞳が」と答えるでしょう。 もう一回、「何が嫌なの?」と聞かれたら、 僕は「僕自身が」と答えるでしょう。 何も見つからない毎日の中で、 僕が僕であるために、捨てるモノは、僕の中の僕でしかなくて。 結局僕が僕であることは、とても難しいことを貴方の瞳で再確認しました。 貴方の何も語らない瞳が、僕の自信を奪っていきます。 ずっと、秘密にしていたこと。 僕は、恋を知りません。 このままだれも愛さないことが、僕が僕であるために必要なことかもしれません。 一緒にいて欲しいのは、貴方ではなく、明日の夢です。 僕は冷たい夜に降る雨のなか「僕が僕で居られますように。」とそっと呟いた。
あなたにマリエを作りましょう 華奢で美しいあなたなら どんなドレスも着こなせるはず ならばこそ腕によりをかけ 最高のマリエを作りましょう カットはとびきり大胆に 刺繍はとびきり繊細に 大輪の花のようなあなたに 負けないマリエを ショーのラストを飾るマリエの登場 まるで少女のような笑顔で そして少しすました様子で 悠然と脚を運ぶあなたは どんなにか華やかで そこに似つかわしいことでしょう 残念なことに 私にはまだこの極上のシルクを裁つ腕はありません けれども いつか必ずあなたのために 世界で一番素敵なマリエを作ります その時まで どうか待っていて下さい 注:〈マリエ〉 オートクチュールメゾンのコレクションの一番 最後に登場するウェディングドレスのこと。
五月への最短距離走りゆく午前五時の君の横顔 遠近法の彼方に見つける軌道修正僕にせまる目 退屈なる日々は寂しさに似て 君想うゆえに我一個人
ブルーグレーの海とちょっと曇った空と 遠くの立ち枯れた細い樹と 冷めた缶コーヒーの温度のように そこで時間だけは流れて 太陽の角度と潮の波だけが動いていた アタシは小さくしゃがんでまるくなった ママのお腹の中で聞いていて 忘れかれていた安心を 今此所で子宮の外で思い出していた 終わらない潮音と 隣で笑う貴方があまりにも優しかったから しゃがんだアタシは地球に近く 立ち上がった貴方は空に近く 2人で砂に描いた落描きが 波に消されようと今日の時間一瞬は変わらずに 貴方と過ごした時間一瞬は変わらずに この海は変わらず この空は変わらず 「永遠」の意味を少し知ったアタシは 立ち上がりそこから歩き出した
彼女が帰ってくる前にパスタをつくろう。 僕はいつもの本の16ページを開く。 「ナスとツナのトマトソースパスタのつくりかた」 ナスとツナも好きだけれども、僕はこのページの7行目がとても好きだ。 「油が冷たいうちににんにくを入れて、焦がさないようにていねいに炒め・・・」 にんにくを焦がさないようにていねいに炒める。ていねいに、ていねいに。 外では相変わらず残忍な悪意や、理不尽な悲しみに溢れているけれども、僕は少し だけ優しい気持ちになれる。この世界も悪くないと思うことが出来る。 焦がさないよいうにていねいに、ていねいに、ていねいに。 彼女が帰ってくる。そしていつも僕はこう言う。 「おかえり。もう少しだけ待ってね」
弁証法的唯物論が 世界を回すこの世の中で 「誰モガ『正』ト認ム理念ハ何処?」 生成成長流転消滅 ヘーゲルの見た『神』はこの世が落とす影だった 唯物論者の説く正義は 生成成長流転消滅 移ろい惑いて消えていく 唯物論者の説く愛は 生成成長流転消滅 変わらぬ愛は在り得ない 無神教的科学論が 世界を回すこの世の中で 「誰モガ『正』ト認ム理念ハ何処?」 開発発展向上粉砕 無意識はアニミズムへの帰還を切望する 科学論者の説く明日は 開発発展向上粉砕 昨日を喰らいて肥え太る 科学論者の説く明日は 開発発展向上粉砕 明後日に喰われ骨と化す 生成成長流転消滅 開発発展向上粉砕 生成成長流転消滅 開発発展向上粉砕 生成成長流転消滅 開発発展向上粉砕 生成成長流転消滅 開発発展向上粉砕
誰のことも好きではないと、思えるような夜には。 何も生まないことに、 (例えばただ、点を取るだけの、カードをそろえるだけの、ゲーム) 時間をつかう。 そんなときわたしは一人で。 誰のことも当てにしてはいけないのだと、 この苦しさは自分で解決しないといけないのだと、わかってしまう。 延々とネットをつないでいる。 誰かに聞いて欲しいなんて、勝手。そんなふうに解消しようとしてはいけない。 友達を失うから。それに、ごまかした痛みはよみがえる。 これは、わたしのものだから。 自分だけで向き合って、元気にならないといけない。 明日からまた、一日が。 あの人にもあの人にもあの人にも同じ一日が。 ありがとう、また明日。
声を歪ませて 暗闇に叫ぶ この密室が震えるほど 届かないことが現実味を増す 快感も一時で 持続などしはしない 悲しい眼がまた増える 楽しげな街も 儚さが見えるだけ 白々しく映るのも時間の問題 愛されているという夢を まるで現実のように見せる 知恵・言葉 増々白々しくなる世界 私に足りない物は何? 冷たい雨が降る 冷たい雨が降る
僕の周りには人がいる 決してその人達は遠くに行かないでくれて 悲しい顔もあまり見せない その分僕は色んな顔を見せる 悲しい顔も 怒った顔も 誰も苦しい顔を見せないから 僕は見せないモノなんだと思ってた そんな人々の中で 僕は辛い心をあらわにすることとなる その時も みんなは特に違った顔を見せなかった そういうモノだと思った それから僕は 人に甘えたくて仕方なくなって 理性だかで止めるもの難しくて でも、僕のことはそういうモノだと思えなかった 今もそうやって苦しんでいるのだけど 楽にしようと思えばいつでも楽になれる この環境をどうにかしたいけど 出来ないから自分を納得させるしかないし そんな余力があるなら他に予約も入ってる だから、 どうやって生きて行こうか…
僕の赤ちゃんが居るんだよ ほの昏い僕の内部に 確かに在ったんだってば 他視線に云わせればそれは馬鹿らしい事らしいけど 僕はそれを守り続ける 潰れないように だからもう僕と僕を引き剥がさないで 頭の中で胎盤がぽろぽろと剥がれ落ちるんだ それでもう産まれるんだ きっと きっと。 『産まれないんだよ』 目の前には血の他に何も無かった 何も蠢いてくれなかった 結局何一つとして残されやしないんだ 子宮を持たない僕の幻想 気の毒な幻想 忌まわしい僕自身の欠片を捻り潰すのが本当に楽しみだったのに
ケージに残された青い羽根 カーテンを揺らす夜風 探しものはいつだって いちばん近くにあった もう一度 鳥篭を手に 砂浜を歩いた 波の上の届かない月 月の中の鳥
月の見えない、波の白さよ。 //反詩// 温度、散文を散らす、sampling、sun、sand。 黒は口を半ば開く。 その口に。 風が。 堂々たる太さの白のような正確な円筒形をなして。 奔流のように満々となだれこんだ。 ジャン・ジュネ
私の天気はいつでも晴れ。 たとえ強風でも。 たとえ大雨でも。 たとえ槍が降っても。 たとえ恐怖の大王が降ろうと。 いつでも晴れだと自分で信じている。 たとえ行く道に全盛期の小錦が立ちはだかろうと。 壁とも山とも思わない。 奴の弱点は膝だ。 当時の大相撲ダイジェストでやっていたような気がする。 せっかく弱点がわかっているのに。 私の天気が雨では。 だからいつでも晴れだと信じている。 夢がある。 誰にだってあるでしょ。 雨が降って、まいったなあと思った瞬間に、 夢も寂しそうな顔をする。 夢は実現させるもの。 早く行ってあげようよ。 雨が降らないうちに。 晴れていればきっと行ける。
青空に浮かぶ 雲の形が定まらないように・・・ 風が 私の髪を揺らすように・・・ 時は止まることなく流れていく
飛んでいくよ帚星 南の空を一直線に 太陽に向かって飛んでいくよ こんにちは さようなら 貴方に再び会う時には僕はもういない きっと僕の墓の上を 貴方は飛んでいってしまうんだろう さようなら君よ 君は行ってしまうけど 僕はここに留まるしかない 暗黒の宇宙空間 そこには何もないけれど 僕の目に見えないだけ 君の軌道を変えようとする無限の可能性 君の通った後にできる有限のエントロピー きっと君は孤独なんかじゃない 太陽がずっと見てるし 地球からは望遠鏡が君を見てる さようなら君よ グッバイ これは君から色々なことを知ろうとする人たちよりも 氷の固まりである君が 身を磨り減らして飛んでいく そんな君の姿に共感を受けた”僕“という名の友達から 君に捧げる遺言
薄緑色の儚い情熱、その一瞬の性の為に行なってきた生、 その醜い甲をそして虫である自我を暗闇に隠し、その情熱を光として解き放つ。 限られた時の為にその時倍もの時を費やし、 生への欲望を捨ててまでその性にすがる。 日常からの離脱、それが意味する次世代への聖なる苦痛。 そしてまた、くり返される。くり返しこそが安息の時で、 いつしかそのくり返しの意味を知る時までくり返される。 光。一つ々がその全てをかけて発するこの空間における最も時に親密なもの。 彼等が造り出す光の渦はその一つ々が特異であるがゆえ美しい。 彼等は限られた波形の表現の中で常にそれよりを求めてる。 結果の求めたものでなかったとしても、 彼が彼等に中で彼等と違う、なにか彼自身を物事の対比でなく、 彼として成り立たせる物を。 ゆっくりと私の指先に例えがたい疲労を癒す為、 降り立った彼は、自分の姿を己の光が照らし出すのを恐れて、 自分の堅く筋張ったその羽で自らの情熱を覆い隠さずにはいられなかった。 私はその螢が光を持たなくとも螢以上でも以下でもない事と伝えたかった。 螢はそれを聞くのを恐れてか、堕落な理論と感じてか、 突き動かされる身体に書き込まれた信号の羅列によってなのか、 私の手を離れ、暗闇の中で自己の情熱を己の生と引き換えに輝いていった。 私はその指先に感じた何よりも軽い生と、 彼のとまった何よりも重い時を見つめていた。
稲妻に撃たれて燃え上がる大木の下 くわえタバコでバイブル弄びながら きみの背中から腰までの 緩やかに弧を描くラインを思い浮かべて 夢見るクスリ飲み込めば 月の裏までたったの5分 最終電車で眠りの底に落ちて 目が覚めたら真冬の海岸 カミソリのように凍てつく朝 真っ白な息を吐きながら 迎えにいくよスウィート・ハート たとえばふたり 真夜中の路上に降り注ぐ 百万本の蛍光灯みたいに ものの見事に砕け散って 3年先の週刊誌の見出しにも ふたりの名前が刻まれるとしても オーヴァー・ザ・レインボー ハミングしながら笑い飛ばしてみせよう そしていつの日か あの海岸できみと待ち合わせて 日差しに目を細めながら 砂の上にだらしなく寝そべって きみが来るのを待つよ
土から生まれた私には 形らしい形はない。 火は私に形を与える。 私は形を作って安らぐ。 水がそそがれて 私は水に形を伝える。 でも、水は私をすり抜けると 再び形を失う。 本当は、そんな水がうらやましい。 形がなかった頃の夢を見て 私は再び土に還る。
花の匂い 花の香り 呼ばれ続ける僕の名 欲しかった物があった それは過去 過ぎ去りし時 僕が僕である為に必要だった世界 透明な陶器のような素肌に 纏わりついた淡い光 泣きたくなりそうな貴方の笑顔の前に 僕はそっと瞼を閉じた 刻み込まれた心の鍵 閉ざされた深層部の果てに 目覚め始める幻想が 自我と共に暗き十字を交差して やがて僕の元へと戻ってくる 闇の誘い 闇の慈しみ 求め続ける貴方の温もり
ほら、夜が明ける 空気が動いていくのが見える 飴色の空にはっきりと 君はこんなにも息づいていた 呼吸の仕方を教えてよ 一度死んじゃった僕には それがどうしてもわからないんだ お願い 生き返らせて 夜が明ける 僕は世が明けた後の世界も見たいから 呼吸の仕方を教えてよ この、ひゅうひゅうの風を吸いこみたいんだ
第1回詩人バトル
投稿受付───8月21日〜9月20日迄
発表───ご到着次第順次発表
投票───9月21日〜10月21日迄
結果発表───10月31日→28日に変更
参加される皆様に。
お手数ですが詩人登録と作品投稿は別メールでお願いしますね。
第1回詩人バトルチャンピオンは葉月みかさんの『母に捧ぐマリエ』に決定しました。
葉月みかさん、おめでとう! あなたが記念すべき第1回詩人バトルのチャンピオンです。
| 作品 | 票 |
|---|---|
| 母に捧ぐマリエ(葉月みか) | 3 |
| 冷たい夜に降る雨(眠香) | 2 |
| 晴れているよ。(3104) | 2 |
| 過ぎゆくもの(矢野秀治) | 2 |
| 123456789(阿部瑞穂) | 2 |
| グレイ(りんね) | 1 |
| 乾きの壺(TAKUYA) | 1 |
| 心象堕胎(水原優哉) | 1 |
| bye-bye, bluebird(岡さやか) | 1 |
| グラス(広河陽) | 1 |
●母に捧ぐマリエ(葉月みか)
●冷たい夜に降る雨(眠香)
●晴れているよ。(3104)
●過ぎゆくもの(矢野秀治)
●123456789(阿部瑞穂)
●グレイ(りんね)
●乾きの壺(TAKUYA)
●心象堕胎(水原優哉)
●bye-bye, bluebird(岡さやか)
●グラス(広河陽)
[番外編]マニエリストQの詩
一 赤鰯 赤鰯の烟 微かに漂う薄青色 鬼打豆を撒くほての上、 あえかなる身に微笑(ほほえみ)を泛ぶ。 忽闇に蓬莢の族(やから)来て、 三つ目の怒り知らぬとて 唇にする小唄 輪廻の旋律(メロディー)。 小槌とり 愛敬(あいぎょう)の嘘偽り、 立つ春。 今生の命、 族の追われし後日 小豆(こまめ)のひとつ。 |
|
三 輝く影 渇いたうなじを剃りおとす 薄紅色の細い剃刀 深い輪郭に眠る。 暗闇の演出者 双の眸の猫目石 今生の証と光明を。 海神(わたつみ)の匂い漂わせ エレキと逆巻きの時を刻む 褥の壷。 永遠の陽傘を目蓋の皮膚に 涯の海の紺碧の音 幼姿を呑みこむほどに捉え 薄紅色の小さき貝殻を漁る。 古に、数多の肉を貪った荒波 陽傘の中の輝く影までは 紺藍の深い色には染められぬ。 |
四 幼き鳥 鳥よ、幼き鳥よ すでに巣なき屋根に何故飛び戻る あの嵐の空に 鳥よ、何を見たのだ。 父もなし、母もなし、家もなし それでも、鳥よ 何故にその屋根を歩むのか 鳴くのか。 撒きし豆に、鳥よ 飛び去りて飛び返る 餌(え)ではないのか、家ではないのか それでは、鳥よ 一体、何が残っているのだ その黒い塗炭の屋根に |
五 間歇性悶着症 遠く近く フリュートの音が、緑の風にのり 木陰の透間を通り抜ける。 髪はさらりと横にわけ 洗晒の開襟シャツ、黒いズボンの折返し。 窓の外は 広くて静かな運動場。 人気のない廊下には 弾む声がいつかあったはず。 きっと 運動場の入口に、幼くてはちきれそうな 君の姿があるはずだ。 僕は思う このことは、ずっと続くんだ 永久なんだって。 ちびた鉛筆が。 ころりと転がった。 |
六 夢 冷たい褥の中 双の眸を閉じる瞬時(とき)、 忽然と目醒める宙に浮く遠方の陽炎 光輝の輪郭を縁どる。 紫暗の壷からむっくり その姿露れるを、 睡魔の邪鬼が充満する脳裡 官能の頁を愛撫する。 姿、 煙管(パイプ)の甘き香りの匂うが 透きた肉体。 海原を馳す主神の巨体、 褥の狭しと小魚が群る 共に眠るはただ一尾の魚。 |
七 美術家たち 緑の肉体に稚気を秘め そっと廻転する透きた頬、 遠く隔てし故郷の春を忘れ 飾られる精なき物体。 古に人の航路巡り見た 神秘の技が夢、 剥ぎとり摩替えられ 今では馴染みの玩具セルロイド。 綾なすは 根も葉も知らぬげな美術家たち、 エレキの波に調べよい。 遠目が紅き唇の笑み 薄物の微光の気球に舞う姿、 いつか見し人形の光箱。 |
八 歴史 紫が夜を勤務(つとめ)と染むるころ 盈虚の暦を知り尽くす 「退嬰」の星が現れて 無価値になれと唆す。 欧亜の空と時の間に 否応なしにひきこんで 戸惑いと憧憬の媚体、 傾く痼を弄ぶ。 麻薬もエレキも益なしと 糊塗の粘土で縁どりし 手鏡をひとつ用意して、 逆巻く時の宇宙の暗闇に 末世を刻む役割を 惜しげもせずに全うす。 |
九 整える羽毛 万能の術師、運行の透間を見せ、 倦怠の夕が隈なく コールタールの皮膚を反射して、 五指を茜に染める。 術師が食する犠牲(いけにえ)の生血 宙(そら)より紅絹の糸となりて滴り落ち、 全ての芥子粒たちの螺旋(ネジ)を巻き、 術師の意志の大劇場の中 無言の輪舞を唆す。 一方、軽やかなる鳥人、 今や機会(チャンス)と白き羽毛を整える。 待つは薔薇(そうび)の裏よ、安息の夜。 |
十 鉢巻 土人女が見極める あらゆる色彩のサンプルが如く、 怪しく花々が咲き乱れる 土手の上、 バビロンの塔が繰返す。 巨大に聳える建物の上方に 幾つかの断雲が白く流れる 影の道、 長い鉢巻を拾う。 巨大な建物の窓から 女が手を伸ばし、 紫色の長い鉢巻を掴取る。 停車場で、 妻は逸れた。 そして、妻は相変わらず 停車場で待っている。 |
十一 鳥の絵 沈黙の黒布を身体中に、透間なく顔まで覆い、 勾玉の歪んだ光を処々に飾りつけ、 繰返す無限の暗闇の反射の中で 執拗に絡み合う唐草(アラベスク)、迷宮の巨大な森影。 静寂と惣暗の舞台装置を最善と 舞踏家は踊る、爪先立ち、俯いて 足占いの歩、一歩、二歩 細い指先から放つ精気、無の愛楽(あいぎょう)の身振り。 渦巻く小さき閼伽を掌に たっぷりと満ちる夕影鳥が生血、 普遍の沼の顔に登場する。 優しい旋律を、鳥の血を 囁くように、語るよに 曇硝子の内外(うちそと)に、影の気配で謳うのか。 |
十二 眠ろう 眠ろう、永遠の眠りにつこう 明日は神が定めし休息日 眠ろう、母が囁く子守唄 柔らかな白いシーツの我が舟 風の叩く戸の音も、 硝子に映る木の影も、 全て忘れてひたすらに。 白い雪降る静かな夜に 母が語った夢物語、 白い布団の連絡船 いつか運ぶよ根室の里。 眠ろう、永遠の宇宙の夢 明日は霊知の神の休息日 白いシーツを撫で廻し タイムマシンの針あわせ 眠ろう、永遠の霊知の里へ 旅立ちだ。 |
どうも有難うございました。
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