QBOOKS






poem17
狭宮良 祇簾
http://willowslord.tripod.co.jp/ Deepsea * 2001。
黒蟻の塚

味のしない爪を噛んで
季節の交代を見ていた
街路樹が緩り死んでいくのを
止めることなど出来なかった

背中の向こうに 広い校庭が見えていた日々
笑っていたなら 世界は廻ると思っていた
空が高くても地が広くても
怖いものはただ 自分だけだったのに

青黒いアスファルトを裂いて
蟻の行列が進んでゆく
葉書二枚分の秋が私を拒む
私はどうすればいいの
此処からは何も見えない



乾いた唇の端を噛んで
自身の成長を見ていた
それを昔と云い切るほどには
年をかさねた訳でもないのに

校門の向こうを 砂埃の街が掠める午後
笑うことだけで 日々老いてゆければ良い
空は低く地は狭く
限られたなかに 自分だけでいたいの

蟻達の知っている場所にさえ
足を踏み入れられない
硝子二杯分の秋が私を詰る
皆は遠くへ行ったの
私はどうすればいい 何も見えない



太陽がとても優しいから
寒くなる前に帰りたいの

空気がとても綺麗だから
冬の影に怯えているのね

ねえ 蟻達には暖かな家があるのよ
彼等は薪を集め 垣根を閉ざし
全てのこたえを春に任せて


死んでいく街路樹に 春を待つ気にはなれない
私はきっと もっと女になっているから
何処にも行けない身体と 消えつつあるものと

秋が来る頃にはまた ひとりになって仕舞うの
本当は何も 怖いことなんてない筈でしょう
皆は何処に行ったの 此処には私しか見えない








QBOOKSトップ  >  バトル会場案内  >  詩人バトル  >  第10回詩人バトル  > poem17
※ページの表示などに不都合などございましたら お知らせください