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poem49
ぶるぶる☆どっぐちゃん
風と木のうた

誰かが電信柱の陰からまろび出てこう言いました

「助けてください

飢えているのです。とても空腹です
でもおなかいっぱいに何かが詰まってて何も食べられないのです

もう走れないのです。汗と共に全て流れ出ていくようです
でも走るのをやめる虚しさを思うとそれも出来ないのです

花が咲いています。とても美しい花です
それを散らすのはとても快感だけれど
でもその花びらがひとひら地面に墜ち、土に返り、また春が来て
そしてまた花が咲くことを思うと気が狂いそうになるのです

ああ。ああ。ああ。
あなたを憎んでいます。心から。深く
それはきっと
あなたを愛しているからです。心から。深く

私は道化です。とても愚かな。とても非生産的な
こうやって赤い鼻で道化て、皮肉めいて笑って、ありふれた絶望をうたうのが私の役目です
それはとても楽で気持ち良いです。でも

でも
でも
でも本当はただ自由になりたいだけなのです。
首に掛かった白い、「自由」なんて鎖を引きちぎって

どこまでも歩いて行きたいのです
例えこの道をどこまで歩こうとも、数々の街を通り過ぎ、世界の裏を通り過ぎ
そして結局ここに帰り着くしか無いことが解っていても

だけれども。
私は弱く。とても弱く
だから私はガタガタ震えながら自分の手首にあてたカミソリから目を離すことが出来ないのです」

そうやって怯えている誰かは
僕のようでありあたしのようでありあなたのようであり君のようであり

だから
僕はあなたであり
君はあたしであり
今は滅びたマンモスでありトキであり
シュレディンガーの猫であり
ジルベール・コクトーでありいとしのリリーであり
ヒトラーでありガンジーであり

そうやって葬列はどこまでも続き
革命を繰り返し
戦争を繰り返し
滅亡を繰り返し
再生を繰り返し

苦悩を突き抜け
歓喜に至り

それでも世界は美しいままだった








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