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poem5
山田せばすちゃん
はためくもの

ネパールの
いや、みんながよく知ってるサガルマタとは反対のほう
トリスリ・コーラーをこえて
ナムチェバザールのまだ向こうっかわ
ずっと中国って言うかチベットに近いほう
なんだけど
海抜3000メートルくらいだったかな
ランタン谷って言う場所があって
とりあえずそこで1週間くらい
テント張って暮らしてたことが
あって

本当に何もないところで
僕の一日は
テントからずるずると起き出しては
垢だらけだけどとても人懐っこい子供たちと遊んでるか
ゴンパへ行って壁いっぱいのタンカと向き合っているか
テントの中でうろ覚えのマントラ唱えながら
瞑想の真似事しているか
とりあえず日が暮れてしまえば
焚き火で焼いた小さなジャガイモに
たっぷりの唐辛子とにんにくをつけて
強い蒸留酒飲んで寝てしまう

チベット仏教の村でさ
村の入り口の小川では
中に経典を入れたマニ車がいくつも
水車にくっついてくるくると回っている
一回回れば一回お経を読んだのとおんなじだけの功徳が
あるんだってさ

石積みの塔の上には
五色の旗が
ランタン・リルンから吹き付けている風に
はためいている

抜けるような
ほんとうに
寝転がって空を見ていると
そのまま空に向かって落ちていきそうな
青い空の下で
五色の旗はちぎれそうにはためいているのさ

風の音しか聞こえない

片言のネパール語しか話せない僕の中で
こみ上げてくるたくさんの言葉
たくさんの意味
でもそれも強い風の中では
砂よりも軽く飛ばされていってしまう

静かな静かな日々

そこにあった詩は
言葉や思いなんかじゃなかった
回りつづけるマニ車
ただ風にはためく
五色の旗
そして



すべての生はここからはじまり
ここへかえる

はためくものの元へと








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