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第121回詩人バトル

エントリ作品作者文字数
1[pass:mrKg9osnj]凛々椿482
2フライパンTsu-Yo145
3目的地千早丸67
4Li-ra Li-ra金河南74
5海は凪ぎ世は事も無し石川順一244
6秒針ごんぱち639




 


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詩人バトル読書会
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エントリ1  [pass:mrKg9osnj]    凛々椿


私の母は奇跡を起こした
汚染された体でふたりも子供を残しどちらも大人になった
母は最大の炭坑の町で生まれ育ち
彼女の父は炭坑夫で体中を癌に冒された
彼女のきょうだいもみんな癌に冒された
きょうだいの中で子供を産めたのは母だけだった
母に会うたびにきょうだいが口をそろえた
子供がほしい
子供はいとおしいと
きょうだいは死んだ
みんな死んだ
きょうだいのひとりが大学の実験台にされ
原因が炭坑の汚染と認められた
でもみんな死んだ
死んでいった
どうしてと泣きじゃくりながら


ねぇお母さん
私 子供の産めない体だった
あなたの遺伝かどうかはわからないけれど
あなたのきょうだいと同じよ
出来損ないと言われたの
とても悔しかった
今でも毎日のように思う 
子供がほしい 
子供を抱きたいと 
でも本当は 子供なんかいらないの
それはなぜかは話さない
でも あなたなら分かってくれるね
あなたはたくさんの肉親の死を見たのだから


母が死ぬ日まで 私はこのことを黙っていようと思う
でもひとつだけ
私は奇跡の人の子供でよかった
ただただそう思うの 風がつよく吹いて
髪をみだして
ほおにふれて美しいと思えるそれだけでも 
こんなにも幸せなのだから








エントリ2  フライパン    Tsu-Yo



きみはキッチンに立ち
フライパンで喋りはじめる
押したり引いたり
きみが規則正しく振るたびに
フライパンが言葉を紡ぎだす
それは、
「美味しいですよ」とか
「残さず食べてね」とか
そんな、
誰かに向けられた言葉ではなく
きみがきみ自身に
語りかけるための言葉
たとえば
詩人が紙のうえに書いて消した
最初の一行のような








エントリ3  目的地    千早丸


空も忘れて前を見て、泥にまみれて何度も転ぶ。
プライドも見栄も投げ捨てて、それでも必死に進みつづけるは、
醜悪か、滑稽か。――誰が決める?





エントリ4  Li-ra Li-ra    金河南


 君は唄った
 リラリラと笑った

 夕暮れの皿が沈む

 そういう色に限って
 許すの やめてほしい

 リ ラ

 星が鳴った
 君と一緒に

 恋がゆら揺れて 指を手を





エントリ5  海は凪ぎ世は事も無し    石川順一


海が凪ぐとは一体どう言う現象なのか
脇吉石子は良き意志をもて老人をアヤメようと
それはひたすらにアヤメロと言う心の声に従い
むしろ老人の覇権を願っての事だった
それ以上どうしろと言うのか
脇吉はグラスを傾けながらひとりごちた
マグナム列車は相変わらず銃撃を続け
キリスト教への改宗を迫って居る
神の国は近い悔い改めよと
卵爆弾を投下し続ける
マイメロディーをアヤメロと
途中で変わった点を除いては
相変わらず海は凪いで居る
石子は後ろから老人をアヤメて仕舞った
変更がほんの少しだけ遅すぎたのだ
ドッグがルーと言う夕べ






エントリ6  秒針    ごんぱち


 歌うことしか出来ないからって、声を枯らして歌った歌手がいる
 こんな時だからって、一等下らないネタばかり連発したラジオパーソナリティがいる
 苦しんでいる人を思って、鶴に願いを込めた資産家がいる
 楽しむのは申し訳ないからって、晩酌を一本に減らしたサラリーマンがいる
 辛くないのに辛いフリをするのは馬鹿馬鹿しいって、連載を続ける小説家がいる
 みんな、みんな
 どうすれば一番良いのか分からない

 風邪を引くと
 喘息の発作が出る
 黄色いねっとりとした痰は
 胸というよりも
 もっと下、胃に近い部分にへばりつき
 びるびると音を立てる
 呼吸をする度
 いつも、いつも、いつも音を立てる
 寝ようとすると音がして眠れなくなる
 幾ら呼吸をしても
 身体はどんどん重く
 時間はどんどんゆっくりになり
 こうなると
 目覚まし時計の秒針に掴まり
 朝へ引き上げられるのを待つしかない
 ひたすら
 秒針が六〇回り、それが六〇回繰り返され、さらにそれが二十四回繰り返され、そしてそれも十回ほど繰り返すと
 熱は下がり鼻水は止まり風邪は去るが
 胸の中の音は消えない
 咳き込み
 喉に絡み
 吸い込んだ息が不快に痰を揺らす
 永遠に続く不快に苛立ちながら
 ある時ふと気付く
 肺から音が消えている事に

 どうやったって批判
 何をしたって後悔
 偽善
 他人事
 自己満足
 諦念
 自棄
 疲労
 一気に溶かす魔法はない
 今は
 なんかをしなかったり
 しようとおもったけどできなかったり
 したフリをしたり
 したり

 その間に
 ゆっくりだけど
 確実に
 動く