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第12回詩人バトル Entry54

白い君


雪はキライだ。
静かに降り注いで静かに消えてゆく結晶たち
何事もなかったように白々しい朝に数え切れないため息。
それでもなごる雪は醜い
人とちょっとにてるね。

雪はイヤだ。
手にとってよく見てみようと思ったらさらさらと消えていく
積もった雪を泥んこの靴で踏みしめた。
なんかきたなくて
人とちょっとにてる。

君がキライだ。
あんなに愛し合ったのに こんなに近くにいたのに
一人で遠くへ行ってしまった君が嫌いだ。 
ここにいるのは息をするだけの陶磁器人形。
閉じたきりの白い瞼 溶けて消える淡雪に例えたり出来ない。

僕は知ってる。
君は一つも抗わないということ
その細く白い項に手を掛けようとしている影を
僕は知っている
直ぐに消えてしまうその命のモロさは
雪とちょっとにてること。

強く手を握ったらぽたぽたと冷たいしずくがたれてきた

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