エントリ1
苦節 石川順一
図書館のトイレの扉を閉める音がうるさい
おいうるさいじゃないかと私が入って行くと
逆に騒がれた
当然だ。女子トイレだったからだ
私は深く反省し以後図書館ではウォークマンのイヤホンをして
女子トイレの扉の音を極力聞かないようにした
そう言った努力の甲斐も有り
私は市から表彰を受ける事になった
苦節20年の成果を私は素直に受けた
エントリ2
鰯雲 はなもとあお
とおく
とおい糸を
手繰り寄せるように
わたしたちは
言葉を紡ぎ
泳いでいく
泳いでいく
月へ
帰り
そうしてまた
あらたなる
誕生をむかえる
待宵
天は、高くて
エントリ3
遠足 Tsu-Yo
空っぽのお弁当箱のなかでは
今まさに
恐ろしい怪物が
成長している最中である
という事実を
知らないまま
男の子も
女の子も
小さな両肩に
リュックサックを食い込ませ
重たい足取りで
夕暮れの家路をたどります
エントリ4
幻じゃなかった 待子あかね
小さな鉢植えを倒してしまいました
慌てて土を拾い集めて
また 元に戻して
慌てて 慌てて 慌てて
すべてすててしまったから
すべてけしてしまったから
なんにものこっていません
なんにもおぼえていません
おさけによっていないのに
ふらふらになって介抱されている
いっしょにみた あの景色を
夏が過ぎても
雷が過ぎ 台風が繰り返しやってきても
それは 幻じゃなかった
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